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高齢者に対するストーマケアの実際

公開日:2020年10月30日 09時00分
更新日:2020年10月30日 09時00分

森 淳一(もり じゅんいち)
名鉄病院 皮膚・排泄ケア認定看護師、専従褥瘡管理者

市川 美代子(いちかわ みよこ)
名鉄病院 皮膚・排泄ケア認定看護師


はじめに

 ストーマという言葉を聞いたことがあるだろうか。ストーマとは、消化管や尿路を人為的に体外に誘導して造設された開放口である1)。この言葉だけを聞いても、馴染みのない方にはわかりにくいかもしれない。そこで、図1 2)のマークを見たことはないだろうか。これはオストメイトマークである。オストメイトとは、ストーマを造設している人を意味している。全国に20万人前後、年間4万人増えていると推計されているストーマ保有者に対し、NEXCO東日本ですべてのサービスエリア・パーキングエリアにオストメイト対応トイレの設置がされるなど3)、実に多くの場所でストーマ保有者に対する支援が広がっていることがわかる。

 本稿では、泌尿器疾患に関するストーマの概要や、臨床で筆者が行っているケアの実際と高齢者の関わりに対する工夫について紹介する。

図1:ストーマを造設している人を意味するオストメイトマークを表す図。
図1 オストメイトマーク(公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団ホームページ2)より引用)

尿路ストーマとは

 ストーマとは先にも述べたように、疾病に対する治療の結果、排泄経路が障害される排泄・排尿障害である。尿路ストーマが造設される疾患は、膀胱がんや膀胱周囲の腫瘍の浸潤などで膀胱や尿道の切除が必要な場合や、それらの臓器が機能しない場合である。

 ストーマ造設の種類については図2を参考にされたい。正常な膀胱や尿道には括約筋(筋肉)機構があり、自分の意思で尿を溜め、漏らさず、出すことが可能である。しかし、ストーマ造設後は尿が我慢できず、腹部に造設されたストーマから無意識に尿が排泄される。そのまま衣類を着て生活をすると、尿の漏れによる衣類の汚染や排泄物による周囲の皮膚トラブル、ストーマ粘膜の損傷など、さまざまな問題が出現する。そのため、ストーマ装具を使用し膀胱の機能を代用することで、排泄物のコントロールをする必要がある。ストーマ装具の管理が確立することで、運動や旅行、仕事や学校への復帰も可能となる。そのため、ストーマケアに従事する者は、尿路ストーマの保有者が新たな排泄習慣を確立し、生活を維持できるように支援する必要がある。なお、ケアを提供するうえで、ストーマ管理のみならずストーマ造設に至った疾病に対する総合的な支援を忘れてはいけない。

図2:泌尿器の全体図と尿路変更の回腸導管、尿管皮膚瘻、尿管皮膚瘻の3種類を示す図。
図2 泌尿器の全体図と尿路変更の種類(コロプラスト株式会社より提供)

新たな排泄様式としてのストーマ装具管理

 ストーマ装具の管理には、主に排泄物の処理とストーマ装具の交換が必要となる。ストーマ装具は、日本で購入が可能なメーカーが9社あり、それぞれのメーカーがさまざまな装具を販売し、また新たな工夫をした製品の開発をしている。さまざまな製品があるが、使用方法については大きな差はないため、ここでは一般的な使用方法を押さえたい。

1.尿の処理方法

  1. トイレを認識し、トイレまで移動する
  2. 便座を認識し、衣類を準備する
  3. ストーマ装具の排出口を服が汚れないように開放する
  4. 尿を排泄する
  5. 排出口をトイレットペーパーで拭き取る
  6. 排出口を閉じる
  7. 衣類をまとめる
  8. 尿を流し、後始末をする

 図3のように、装具に尿が1/3程度貯留したら、トイレで排泄する必要がある。尿がこぼれないように注意し、排出口を開放する。排泄後は、排出口をトイレットペーパーで拭き取り、閉じる。

図3:畜尿袋と排泄のイメージを表す図。
図3 畜尿袋と排泄のイメージ図(コロプラスト株式会社より提供)

2.ストーマ装具の交換

 装具交換の頻度は製品によってさまざまであるが、カタログ上では、1~4日や3~7日ごとの交換のものが多い。衛生上、7日を最長とする。個人差もあるため看護師などに相談をして、交換間隔を決定するとよい。装具交換の手順は以下の通りである。

  1. 装具交換に必要な物品を準備する
  2. 装具を剥がす(図4)
  3. 周囲皮膚を愛護的に洗浄する(図4)
  4. しっかりと水分を拭き取る
  5. 準備した装具を貼付し、密着させ温める(図4)
  6. 後始末をする
図4:装具を剥がす、周囲皮膚を愛護的に洗浄する、準備した装具を貼付し密着させ温めるというストーマ装具の交換手順を示す図。
図4 ストーマ装具の交換手順(コロプラスト株式会社より提供)

加齢がストーマケアに与える影響と課題

 日本オストミー協会の第8回オストメイト生活実態基本調査報告書では、尿路ストーマ保有者の平均年齢は72.6歳で、そのうち、28%が他者によって装具交換が行われていることが明らかになっている4)

 加齢による変化はさまざまであるが、ストーマケアに関したものを図5にまとめた。

図5:加齢による変化を身体面、精神面、社会面に分類し表す図。
図5 加齢による変化

 視力や認知機能の低下、身体や手指の可動域の制限などの変化により、自己による装具交換の手技の獲得やできていたケアの継続を困難とさせる。また、皮膚や腹部の形状の変化から、装具管理を安定させるためにケア方法そのものが複雑となりやすいことも、自己によるストーマ管理を困難とさせる。さらに、サポートが必要となった場合にも、キーパーソンの不在が課題となる。そして、今後、少子高齢化や核家族化が進むにつれ、その動きは加速することが想定される。そのため、病院のみではなく地域で、それぞれの立場から支援することが重要である。

 そして、ストーマケアは排泄ケアであり、人の尊厳に関わることを忘れてはいけない。生涯、その人が尊厳を保つことができるよう、年齢にかかわらずストーマケアを少しでも自立して行えるよう支援していくことが重要である。

高齢者のストーマ保有者に対するセルフケア指導

 先ほど述べたように、加齢とともに身体面、精神面、社会面にさまざまな変化が起こる。これらが新たなストーマケアの習得や、これまで行ってきたセルフケアの継続を困難にさせる。だからこそ諦めるのではなく、できる部分を考え、少しでもセルフケアに参加できるよりよい方法をともに模索していくことが重要になってくる。

 セルフケア指導では、まずストーマ保有者の生活背景とニーズを把握し、ともにゴールを設定する必要がある。具体的には、図5の背景も考慮しながら、尿の処理や装具交換手順の、どの部分が行え、どの部分に支援が必要となるか考察することが重要である。そのゴールに向けて、筆者は図65)のポイントを意識し、指導を進めている。セルフケア指導を繰り返し行うことで、90歳代の高齢者でも、認知症を抱えていても、ストーマケアを自立できたケースを多く経験している。

図6:高齢者のストーマ保有者に対するセルフケア指導のポイントを表す図。
図6 セルフケア指導のポイント(カレン・プライア.うまくやるための強化の原理, 19985)を参考に作成)

高齢者のストーマ装具選択

 ストーマ装具は、①尿が漏れない、②皮膚トラブルを起こさないことを念頭に置き、製品を選択する。そのうえで、メーカーにより排泄口の使用方法や装具の大きさ、肌触りが異なるため、使用感やコストパフォーマンス(経済性)を考慮する。コストパフォーマンスを考慮する場合は、月単位で交換回数を計算し、かかる費用を概算するとよい。

 ストーマ装具の選択は、ストーマ装具選択ガイドブック6)やABCD-Stoma®ケア7)を参考に、腹壁の状態や周囲の皮膚の状態、ストーマの高さに合わせて製品を決定する。

 しかし、加齢とともに腹壁の状態は変化するため、製品の変更を余儀なくされる場合がある。そのため、あらかじめ身体的、社会的な変化を予測した装具選択が重要となる。具体的にはストーマ周囲が平坦で、ストーマの高さがあっても汎用性の高いストーマベルトが着用できるベルトタブの付いたものや、柔らかい凸面装具を選択するとよい。

 製品の決定においては、セルフケアをめざす場合とすべて介助者に委ねる場合で、それぞれ考慮するポイントがある。

1.セルフケアをめざす場合

 尿の処理のセルフケアをめざす場合、実際にストーマ装具を手に取ってもらい、どのタイプであれば手技が可能であるかを確認する必要がある。ストーマ装具は、シンプルかつ安価となりやすい単品系装具で、既成孔(プレカット)の製品を選択するとよい。必要に応じて、訪問看護師や家族と自宅でのケアの見守りが行えるよう環境を整える。

2.すべて介助者に委ねる場合

 いつ、誰が、どこでストーマケアが可能かを確認し、環境に合わせた製品を提案する。介助者が行う場合は、貼付時の視認が可能であることや、介護サービスの介入や装具交換の頻度を減少させる目的で、耐水性の高いものが多い2品系装具も考慮する。ただし、2品系装具は、重度の認知症を抱えている場合、装具の違和感から装具剥がしの原因となりやすいため、単品系装具を考慮する場合もある。また、施設や訪問看護師が介入する場合は、連携し継続使用が可能な製品や手技であるか確認することも重要である。

 なお、2011年に厚生労働省の通知で、ストーマ装具交換は原則として医行為ではなく、介護職員などによる実施も認められている。ただし、医師または看護師との密接な連携や、ストーマおよび周囲の状態が安定していることが条件となっている。介護職員などに対するストーマケアの研修会も定期的に開催されているため、参考にされたい。

ストーマケアに関するトラブル

 ストーマ周囲の皮膚は、粘着と剥離を繰り返し、徐々に脆弱な皮膚となりやすい。それに排泄物の刺激が加わることにより周囲の皮膚トラブルを起こす場合がある。また、腹壁の変化によりストーマ装具が合わなくなり、装具から尿の漏れが頻回になるなど、管理困難となる場合がある。それらは、ストーマ保有者のみならず、支える家族も常にストーマ管理に追われ、身体的・精神的苦痛が生じる。そのような事態を未然に防ぐため、ストーマ造設の手術を受けた医療機関や近隣のストーマ外来に早期に相談できるとよい。相談の窓口をあらかじめ確認しておくことも重要である。

まとめ

 本稿では、高齢者に対するストーマケアの実際について述べた。当院のストーマ外来にはストーマを抱えていても、手術前と同じように旅行やグランドゴルフなど趣味を持ち、楽しく日々生活されている方も多い。ストーマを抱える高齢者が生涯にわたって尊厳を保ち、その人らしい生活を継続するため、本人の能力を最大限に活かすセルフケア指導や、変化を予測したストーマ装具の選択が重要になる。また、必要に応じて社会的資源を活用し、病院だけでなく地域で支援を継続していくことが重要であると考える。本稿が地域社会の、ストーマに対する理解の一助になれば幸いである。

文献

  1. 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会編.ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 第4版.金原出版,2020, 34.
  2. 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団ホームページ.バリアフリー推進事業.(2020年7月4日アクセス)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. ドラぷら(NEXCO東日本)ホームページ.サービスエリアのオストメイト対応トイレ.(2020年7月4日アクセス)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 公益社団法人日本オストミー協会:第8回オストメイト生活実態基本調査報告書.人工肛門・膀胱造設者の生活と福祉.2019,3-4.
  5. カレン・プライア, 河嶋孝・杉山尚子訳:シェイピングの10の法則.うまくやるための強化の原理.二瓶社,1998,42-43.
  6. 穴澤貞夫,大村裕子編.ストーマ装具選択ガイドブック.金原出版,2012.
  7. 一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会 学術教育委員会(オストミー担当)編.ABCD-Stoma®ケア.一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会,2014.
  8. 熊谷栄子編:特集 今,在宅に求められるストーマケア.WOC Nursing 2016;4.

筆者

写真:筆者_森淳一先生
森 淳一(もり じゅんいち)
名鉄病院 皮膚・排泄ケア認定看護師、専従褥瘡管理者
略歴
2008年:名鉄病院外科病棟入職、2014年:京都橘大学看護教育研修センター認定看護師教育課程修了、2015年:名鉄病院外科病棟、皮膚・排泄ケア認定看護師取得、2018年:専従褥瘡管理者
市川 美代子(いちかわ みよこ)
名鉄病院 皮膚・排泄ケア認定看護師
略歴
2000年:協和会病院外科・内科混合病棟入職、2004年:名古屋共立病院外科・整形外科・消化器内科、2010年:皮膚・排泄ケア認定看護師取得、2012年:名鉄病院外科・婦人科病棟、2015年:同外来

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&HealthNo.95

Aging&Health(エイジングアンドヘルス)No.95(新しいウィンドウが開きます)

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