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フレイル期の社会参加と健康長寿

公開日:2020年3月31日 09時00分
更新日:2020年4月 1日 09時00分

村山 洋史(むらやま ひろし)
東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究チーム 専門副部長


はじめに

 フレイルとは、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」(厚生労働科学研究費補助金長寿科学総合研究事業:総括研究報告書)1)とされており、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味する。Fried et al.の定義2)をみると、フレイルには身体的機能低下だけでなく、気力の低下などの精神的な機能の低下も含まれていることが理解できる。

 社会参加との観点でみてみると、「介護予防・フレイル予防のために社会参加が重要」という点は多くの論文で指示され、施策にも反映されている。しかし、「フレイルになってからの社会参加をどう考えればよいか」についての議論は極めて少ない。

 本稿では、フレイル期になると、社会参加活動がどのように変化し、健康アウトカムとはどう関連するかをみていく。そして、フレイル期の社会参加をどう考えればよいかについて述べたい。なお、本稿での社会参加は、「他者との相互関係を伴う活動に参加すること」3)と広義に定義する。

フレイル期には社会関係・社会参加はどう変化するか?

 人間のライフコースにおけるソーシャルネットワーク量の推移について、277本の論文をまとめたメタアナリシスによると、以下のような結果が出ている4)

  • ソーシャルネットワーク全体としては、青年期(20代)半ばくらいまでは増大するが、それ以降は縮小する(図1A)。
  • 親、兄弟、子ども、配偶者といった家族とのネットワークは、思春期から成人期まで変化なくほぼ一定(図1C)。
  • 特に親密な人とのネットワーク、および友人とのネットワークは、思春期(10代)以降、縮小の一途を辿る(図1Bと図1D)。
図1:人間のライフコースにおけるソーシャルネットワーク量の推移をあらわす図
図1:ライフコースにおけるソーシャルネットワーク量の推移

 この結果より、高齢であるほどフレイルになりやすい点から、フレイル期の社会関係は健常の時期よりも縮小するものと予想できる。

 実際、Hoogendijk et al.によると、フレイル、プレフレイル(Fried et al.が提唱する表現型モデル2)で定義)であるほど、健常状態と比較してソーシャルネットワークのサイズは小さく、手段的サポート、情緒的サポート受領が少なく、孤独感が高いと報告されている5)。また、Woo et al.は、親戚や近隣とのネットワーク量や地域活動・宗教活動への参加度は、フレイルの度合い(Rockwood et al.が提唱する障害蓄積モデル6)で定義)が深刻なほど少ないことを報告している7)

 このように、生活機能が低下し、心身の脆弱性が現れるフレイル期には、社会関係や社会参加においてもその影響を受けることが分かる。

フレイル期の社会参加と健康の関係

 フレイル期に特化して検証している研究は非常に少ないものの、例えばQuality of lifeに影響する要因を探った質的研究では、フレイルでない高齢者にとっては健康状態が最も強力な関連要因であった8)。一方、フレイルな高齢者(表現型モデルで定義)にとってのそれは社会的なつながりであったと報告している8)

 健常期において社会的つながりが多いほど健康状態が良いことを支持する研究が多いことを踏まえると、フレイル期にその関連がなくなる、あるいは逆の関連になるとは考えにくく、やはりフレイル期における社会参加も重要と考えられる。

フレイル期にこそ、社会参加が必要

 様々な機能が低下し、社会関係が縮小するフレイル期だが、だからこそこの時期に社会参加が必要である。

 閉じこもりに関する研究では、移動能力が低い高齢者における閉じこもり状態(いわゆる「タイプ1閉じこもり」)の関連要因として地域活動への不参加や友人と会う頻度が少ないことが挙げられている9)。つまり、地域活動への参加や人と会うという行為が、機能が低下したフレイル期の外出頻度の維持に寄与していることを意味している。

 Kono et al.は、フレイルな高齢者(民生委員の家庭訪問で独自基準にてフレイルと判断された高齢者)では、外出頻度が多い者の方が将来の生活機能、転倒予防や健康管理に対する自己効力感が維持されやすいと報告している10)

 2本の論文を合わせて考えると、フレイル期には、地域活動や人とつながることによって、外出が促され、結果として生活機能の維持や健康づくりに対する前向きな姿勢につながるというわけである。

フレイル期の社会参加を促進する環境要因

 フレイル期の社会参加を促すのは、個人の要因だけではない。Duppen et al.は、フレイルな高齢者(障害蓄積モデルで定義)に対する質的調査の結果をもとに、フレイル期の社会参加の障壁として物理的環境・社会的環境の変化を挙げている11)。ここでの物理的環境とは「公共交通機関や道路状況、近隣の商店など」であり、これらは高齢者の外出や移動のしやすさに影響を与える。物理的環境が悪い方向に変化すると、フレイルな高齢者の行動範囲は制限され、社会参加が抑制されてしまう。

 社会的環境とは「住民同士のつながりや人々が会ったりする場所など」を指す。社会的環境が恵まれていると、フレイルになることで損なわれた社会参加の機会を別の形の社会参加によって埋め合わせてくれたり、フレイルであっても何らかの社会的役割を与えたり楽しみを提供したりして地域に溶け込ませてくれるという。すなわち、社会的包摂である。

 こういった居住する地域の環境を整備することも、フレイル期の社会参加を考える上で欠かせない視点である。

フレイル期における社会参加で留意すべきこと

 ここでは、地域活動参加に焦点をあてて述べていきたい。ひとことに「地域活動参加」といってもその中身は様々である。これまでの研究では、特に趣味や教養、スポーツの会やボランティアといった活動目的が明確で参加者同士の上下関係が少ない活動に参加している方が健康を促進するといわれている12)

 加えて、自発的な参加(やりたいと思って参加すること)が重要である。特に、ボランティア活動や町内会・自治会活動などは、趣味やスポーツなどの活動とは異なり、必ずしも本人の関心に合った活動がいつでも行われるとは限らず、そのためどの程度楽しさややりがいを感じられるかは、活動内容や本人がそれをどのように感じているかに依存する。

 頻度としては、フレイルでない者も含めた対象での調査において、趣味や学習のグループ、およびボランティア活動に月1回以上参加することで、将来の生活機能維持につながっていることが示されている13)。また、頻度や時間は多ければ多い方が良いわけでなく、ほどほどの時間の場合に効果が最大になるとの研究は多い。例えば、Morrow-Howell et al.は、ボランティア活動に注目し、活動時間が年100時間(週あたりに換算すると2~3時間)程度でwell-beingが最大になり、それよりも長い時間であってもwell-beingは増加しないことを報告している14)

 フレイルになると、健常期と同じように熱心に地域活動を行うことが難しくなる。身体の無理がきかない状況を考えると、月1回以上参加することを目標に、頑張り過ぎることなく気楽に続けていくことがコツといえそうである。

バーチャルなつながりでもOKか?

 現代のつながりを語る上で、SNS(Social Networking Service)の存在は無視できない。ツイッターやフェイスブックなど、若者だけでなく高齢者も多く利用している。ここまでは、いわば現実世界のつながりを議論してきたが、SNSによるバーチャルなつながりはどういった影響を持つかも議論したい。

 例えば、フェイスブックに関する研究では、フェイスブックでの友達数が多い人ほど死亡リスクが低いという研究がある15)。しかし、フェイスブック上で友達を作っておけば、現実世界で友達などいなくても長生きできるという単純な話ではなく、実際には、現実世界で友達との関係が深く、かつ、フェイスブック上の友達も適度に多い人が最も死亡率が低いという結果であった。

 ある研究では、フェイスブックでの友達がどれだけ多くても、親しい間柄の友人や現実にアドバイスや同情をしてくれる人(すなわち、情緒的サポートをくれる人)の数はほとんど変わらないことを報告している16)。つまり、いくらフェイスブックでの友達が多くても実際に機能する相手は一部に限られてしまう。

 以上より、フェイスブックをはじめとするSNSを通じた人間関係は、現実のつながりを補完する、あるいはすでにある実際のつながりを強化する働きはあっても、取って代わることは難しそうである。とはいえ、SNSは使いようによっては社会的つながりを構築するための強力なツールになり得る。特に、フレイル期の社会的つながりの維持・構築には、こうした気軽な社会との接点が有効と考えられる。

おわりに

 フレイル期だからといって社会参加を控える必要はない。むしろ、フレイル状態の悪化を防ぎ、より良い状態に向かわせるためには、健常期以上に必要ともいえる。心身の脆弱性を考慮した無理のない方法で社会参加を推進していくことが重要である。

文献

  1. 鈴木隆雄 後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金行政政策研究分野厚生労働科学特別研究 平成27年度 総括・分担研究報告書(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al.: Frailty in older adults: Evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56(3): M146-156.
  3. Levasseur M, Richard L, Gauvin L, et al.: Inventory and analysis of definitions of social participation found in the aging literature: Proposed taxonomy of social activities. Soc Sci Med 2010; 71(12): 2141-2149.
  4. Wizus C, Hänel M, Wagner J, et al.: Social network changes and life events across the life span: A meta-analysis. Psychol Bull 2013; 139(1): 53-80.
  5. Hoogendijk EO, Suanet B, Dent E, et al.: Adverse effects of frailty on social functioning in older adults: Results from the Longitudinal Aging Study Amsterdam. Maturitas 2016; 83; 45-50.
  6. Rockwood K, Stadnyk K, MacKnight C, et al.: A brief clinical instrument to classify frailty in elderly people. Lancet 1999; 353(9148): 205-206.
  7. Woo J, Goggins W, Sham A, et al.: Social determinants of frailty. Gerontology. 2005; 51(6); 402-408.
  8. Puts MT, Shekary N, Widdersshoven G, et al.: What does quality of life mean to older frail and non-frail community-dwelling adults in the Netherlands? Qual Life Res. 2007; 16(2); 263-277.
  9. 村山洋史, 渋井優, 河島貴子, 他: 都市部高齢者の閉じこもりと生活空間要因との関連. 日本公衆衛生雑誌 2011; 58(10): 851-866.
  10. Kono A, Kai I, Sakato C, et al.: Frequency of going outdoors: A predictor of functional and psychosocial change among ambulatory frail elders living at home. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2004; 59(3),275-280.
  11. Duppen D, Lambotte D, Dury S, et al.: Social participation in the daily lives of frail older adults: Types of participation and influencing factors. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci 2019; in press.
  12. Aida J, Kondo K, Hirai H, et al.: Assessing the association between all-cause mortality and multiple aspects of individual social capital among the older Japanese. BMC Public Health 2011; 11: 499.
  13. Nonaka K, Suzuki H, Murayama H, et al.: For how many days and what types of group activities should older Japanese adults be involved in to maintain health? A 4-year longitudinal study. PLoS ONE 2017; 12(9): e0183829.
  14. Morrow-Howell N, Hinterlong J, Rozario PA et al.: Effects of volunteering on the well-being of older adults. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci 2003; 58(3), S137-145.
  15. Hobbs WR, Burke M, Christakis NA, et al.: Online social integration is associated with reduced mortality risk. Proc Natl Acad Sci USA 2016; 113(46): 12980-12984.
  16. Dunbar RIM: Do online social media cut through the constraints that limit the size of offline social networks? R Soc Open Sci 2016; 3(1): 150292.

筆者

写真:筆者の村山洋史先生
村山 洋史(むらやま ひろし)
東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究チーム 専門副部長
略歴
2009年 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程修了、2009-2010年 東京大学高齢社会総合研究機構・特任助教、2010-2015年 東京都健康長寿医療センター研究所・研究員、2012-2014年 ミシガン大学公衆衛生大学院・客員研究員、2015年-2020年 東京大学高齢社会総合研究機構・特任講師、2020年-現在 東京都健康長寿医療センター研究所・専門副部長
専門分野
公衆衛生学・老年学

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