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高齢者の筋力トレーニングの効果

公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2019年8月13日 15時46分

高齢者の筋力トレーニングの効果とは

 高齢者の筋力トレーニングは以下のような効果が得られます。

1. 筋力増強

 適切な筋力トレーニングを行うことで筋力増強の効果が得られます。身体を支える抗重力筋※の筋力増強により姿勢保持能力の向上、転倒予防、移動能力の向上を図ることができ、生活の質が向上します。

※抗重力筋:
抗重力筋とは、地球の重力に対して身体の姿勢を支えるために働く筋肉のことです。背中、腹部、お尻、太もも、ふくらはぎが前後に伸び縮みしながら重力に対しバランスを保っています。

2. 骨格筋量の増加

 筋力トレーニングにより、筋肉が太くなり、筋肉量が増大します。筋肉量が増えることで身体を動かすためのエネルギー量の増加、基礎代謝の向上、血流の改善が期待できます。筋力増強とともに移動能力の向上、転倒予防、生活の質の向上を図ることもできます。

3. 体脂肪の減少

ダンベル体操をする高齢者夫婦のイラスト。高齢者の筋力トレーニングは、筋力増強、骨格筋量の増加、体脂肪の減少、生活習慣病の予防・改善、サルコペニア・フレイル・ロコモティブシンドロームの予防・改善、生活機能の向上、嚥下機能の維持・改善、腰痛・膝痛の改善の効果が得られます。

 ゆっくりと動作しながら行う筋力トレーニング(スロートレーニング)の実施や、筋力トレーニングを先に実施してから有酸素運動を行うこと、速筋繊維を鍛えることのできるダンベルやマシーンを用いた筋力トレーニングを行うことによって体脂肪を燃焼しやすい身体の状態をつくることができます1)

4. 生活習慣病の予防・改善

 筋力トレーニングはインスリン抵抗性、糖代謝を改善し、糖代謝異常の予防が期待できること、脂質代謝の改善が期待できること、適切な負荷での筋力トレーニングを行うことで血圧や血管への良い影響が期待できること、食事と持久性トレーニングとの組み合わせでメタボリックシンドロームの改善が期待できることが示唆されています2)

5. サルコペニア・フレイル・ロコモティブシンドロームの予防・改善

 加齢に伴い筋肉が衰えるサルコペニア、加齢による虚弱によって介護が必要となるフレイル、運動器の疾患により日常生活に支障をきたすロコモティブシンドロームは、筋力トレーニングを行い、筋力の向上、筋肉量の増加を促すことが予防、改善に有効です。

6. 生活機能の向上

 筋力トレーニングによって、生活に必要な基本的な姿勢の保持、移動能力が向上することで生活機能の向上が望めます。

7. 嚥下機能の維持・改善 

 食べ物や飲み物を飲み込むための筋力が低下すると食事量が低下し、栄養状態も悪くなります。また、誤嚥による肺炎などのリスクも高まります。筋力トレーニングにより、飲み込み(嚥下)に関わる筋力を鍛えることで嚥下機能を維持・改善できます。

8. 腰痛・膝痛の改善

 筋力トレーニングによって筋力が向上し、筋肉量が増えることによって関節への負担が減り、腰痛や膝痛の軽減につながります。

高齢者でも筋力はつくのか?

 高齢者でも適切な負荷の筋力トレーニングを継続することで、筋力増強の効果が得られるといわれています。一般的に筋力トレーニングの高い効果を得るためには、高強度の負荷を筋肉に与えて筋力トレーニングを行うことが有効であるとされていますが、高齢者の場合は、筋組織が若年者に比べると傷つきやすく、病気や怪我、関節の痛みなどにつながるリスクがあります。そのため、高齢者の筋力トレーニングでは、個人に合った負荷強度でトレーニングを行うことが大切です。

 また、自分の体重を負荷とする「自重トレーニング」と言われる比較的負荷の小さいレジスタンス運動でも、スロートレーニングで大きな効果が期待できるとされています3)4)

 特に高齢者は加齢によって抗重力筋の筋力低下、筋肉量の減少がみられるため、体幹筋・膝伸筋群・臀筋群などの継続的なレジスタンス運動を行い、筋肉を強く大きくすることが有効とされます。個別の筋肉の筋力トレーニングに加えて、日常的にウォーキングを行うことや、活動的な生活を送り、鍛えた筋肉を使い続けることも重要です4)

筋力トレーニングと生活習慣病予防の関連

 生活習慣病であるメタボリックシンドロームの予防・改善にはウォーキングや水泳、ジョギングなどの有酸素運動を行うと、エネルギーが消費されやすく内臓脂肪を減少させるため効果的であることが知られています。

 さらに、有酸素運動とあわせて筋力トレーニングを行うことで、筋肉量を増やして基礎代謝を増やすことができ、エネルギー消費量の効率を良くします。筋肉量を増やして基礎代謝を増やすと、減量した後も体重がリバウンドしにくくなる効果もあります。基礎代謝を高めるにはスクワットやヒップエクステンション、腹筋、腕立て伏せなどがおすすめです5)

 有酸素運動とレジスタンス運動との組み合わせが血糖値、血圧値、中性脂肪値を低下させることが言われています。筋力トレーニングを行うことで筋力増強や筋肉量が増加すると、インスリン抵抗性が改善し、インスリンが効きやすくなって血糖値の低下につながります。

 また、筋肉量が増加することで基礎代謝量が増え、血糖のコントロールが行いやすくなる効果もあります6)

健康増進のためには有酸素運動と筋力トレーニングを行うと効果的7)

 久野らは高齢者のマスターズ大会マスターズに出場するために日常的に激しい持久的トレーニングを積んでいる高齢ランナーと日常的に運動習慣を持たない同年代の高齢者の比較を行ったところ、高齢ランナー群は平均で月間234㎞ものトレーニングを実施しているが、加齢にともなう速筋線維の萎縮率は運動習慣を持たない同年代の高齢者と同様な値でありました。このことからは歩行やジョキングなどの持久的な運動のみでは、加齢にともなう速筋線維の萎縮に対する抑制にあまり貢献しないことを示唆しています。

 そのため、健康増進のための運動としては、歩行やジョキングなどの有酸素運動のみをおこなうのではなく、筋力トレーニングも併せて行うことが効果的であることが考えられます。

参考文献

  1. 肥満と減量(理論編) 知っておきたい肥満と減量の基礎知識【理論3】減量に筋力トレーニングが必要な理由 健康科学課 今川 泰憲(スポーツ科学員) 横浜市スポーツ医学センター (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 久野譜也等 生活習慣病予防のための運動の意義とそれを実行可能にする環境対策の重要性 バイオメカニズム学会誌,Vol. 35, No. 2 2011(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. QOLの維持・向上に大切な筋肉は? 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. スロートレーニング 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. メタボリックシンドロームを防ぐ身体活動と運動 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  6. 「有酸素運動」と「レジスタンス運動」を組合せると効果は最大に 一般社団法人日本生活習慣病予防協会(外部サイト)(新しいウインドウが開きます) 
  7. 久野譜也,村上晴香,馬場紫乃,金 俊東,上岡方士 高齢者の筋特性と筋力トレーニング 体力科学 第52号 Suppl,17-29,2003(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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