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高齢者総合機能評価(CGA)とは─新ガイドライン作成の経緯や趣旨、全体像、ツールの有用性─

公開日:2026年1月16日 10時00分
更新日:2026年1月16日 13時53分

小川 純人(おがわ すみと)

東京大学大学院医学系研究科老年病学教授


はじめに

 高齢者医療やケアに際しては、疾病の全体像を把握して適切に治療を行うとともに、QOLの維持・改善に向けて医療・福祉サービス等との多職種協働による緊密な連携が不可欠である場合が少なくない。主治医意見書などの要介護認定に必要な書類の作成時にも、高齢者の身体・認知機能等の客観的評価に加えて、生活機能や福祉サービスに関する記載を行うなど、包括的かつ全人的な視点やアプローチが必要とされる。このように、疾患や障害を有する高齢者に対して、医学的、身体的、精神・心理的、社会的な評価や指標に基づいて、生活機能障害を総合的に評価する手法は高齢者総合機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)と呼ばれる(表)。

 本稿では、最近刊行された『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』1)を中心に、CGAの概要について紹介する。

表 CGAの構成要素ならびに代表的な評価ツール

  1. スクリーニング
    基本チェックリスト、CGA7など
  2. 日常生活活動度(Activities of Daily Living:ADL
    基本的ADL:Barthel Index
    手段的ADL:Lawton's IADL、老研式活動能力指標
  3. 認知機能
    Mini-Mental State Examination(MMSE)、改訂長谷川式知能評価スケール(HDS-R)、DASC-21、ABC認知症スケールなど
  4. 気分・意欲・QOL
    Geriatric Depression Scale(GDS)、意欲の指標(Vitality Index
    QOL:Euro QOL(EQ-5D)、SF-36、SF-8 など
  5. 社会的要素・背景
    要介護認定、家族関係、自宅環境、財産など
    Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)
  6. フレイル
    簡易フレイルインデックス、基本チェックリスト、後期高齢者の質問票、日本版Cardiovascular Health Study(J-CHS)基準など
  7. 栄養
    Malnutrition Universal Screening Tool(MUST)、Mini Nutritional Assessment(MNA)など

新ガイドライン作成の背景・趣旨

 高齢者医療やケアに際しては、身体機能、生活機能、認知機能、介護状況等を多面的に評価したうえで、現時点での生活上の問題・課題や将来的な問題に発展するリスクを抽出し、医療や福祉サービス等と緊密に連携することが重要である。その際、医学的、身体的、精神・心理的、社会的な評価や指標に基づいて生活機能障害を総合的に評価する、CGAの実施が前提となる。

 CGAの歴史は古く、1935年に英国のウォーレン医師が高齢者施設を担当した際に、高齢患者の医学的評価に加えて、ADL、情緒傾向、コミュニケーション能力等の評価を実施し、障害の程度に応じた入居ユニットの選定や施設入所の判断、適切な介護、リハビリテーション・医療につなげたことから始まっている。わが国でもCGAの有用性が見込まれ、特定疾患を有する40歳以上65歳未満の患者、または65歳以上の新規入院患者に対し、基本的な日常生活能力、認知機能、意欲等について総合的な評価を行ったうえでその結果をふまえて入退院支援を実施した場合、平成24(2012)年より総合評価加算(100点)として算定が認められ、令和2(2020)年からは入退院支援加算の中に組み込まれる形で50点が算定される流れに改められている。

 また、わが国におけるCGAガイドラインについては、2003年に『高齢者総合的機能評価ガイドライン』が発刊され、その後「Minds診療ガイドライン作成マニュアル」に準拠した形でガイドライン作成作業が行われ、『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』の発刊に至った1)

新ガイドラインの構成およびCGAの有用性

 『CGAに基づく診療・ケアガイドライン2024』では、「総論」、「Ⅰ.CGAの各要素とそのツールの効果」、「Ⅱ.CGAを用いた老年疾患・老年症候群の管理」、「Ⅲ.医療介護現場、関係職種によるCGAの利用」の各章から構成されている。

 CGAは高齢者の医療と生活機能を多面的に評価するものであり、現場で実践するためのスクリーニングツールが掲載されている。このうち、基本チェックリストは評価対象者が自記式で回答を記入する調査票であり、フレイル判定への応用性も示唆される。全25個の質問項目については、手段的ADL、社会的ADL、運動・転倒、栄養、口腔機能、閉じこもり、認知症、うつに関する内容となっており、各項目の合計点が一定基準以上の場合には、介護予防プログラム等を推奨する。また、CGAの簡易なスクリーニング検査であるCGA7については、外来患者の場合や入院患者または施設入所者の場合等、患者状況に応じて評価する。いずれかの項目で"問題あり"と判断されたら、次のステップとして、Vitality Index、MMSEまたはHDS-R、Lawton's IADLBarthel Index、GDS-15等の活用による、より詳細なCGAを実施する。

 CGAによるスクリーニングの有用性については、75歳以上の外来患者において生存期間延長、入院時の在院日数短縮に寄与した2)。また、CGAが救急外来受診後のアウトカムを改善する可能性も示唆されている。在宅やプライマリケアにおけるCGAの有効性に関しても肯定的な結果が支持され、CGAに基づく在宅医療の提供によって医療介護費用が抑えられた報告もある3)。65歳以上の脳梗塞入院患者を対象としたわれわれの研究では、CGA実施と入院中死亡率、長期入院率の低下、退院時ポリファーマシー率、処方薬剤種類数の低下との間に関連性が認められた4)5)。これまでのさまざまな知見等からも、高齢者に対してCGAによるスクリーニングの実施が推奨されている。

CGAの各要素

 『CGAに基づく診療・ケアガイドライン2024』では、基本的ADL、手段的ADL、認知機能、うつ、意欲、QOL、社会的要素、フレイル/栄養の各領域について、クリニカルクエスチョン※1策定、システマティックレビューによる文献検索、エビデンスレベルの評価、推奨文作成、審議と投票による推奨度の決定等が進められた。

※1 クリニカルクエスチョン(Clinical Question;CQ)は、臨床の中で生じる問い。

 基本的ADLについては、広く用いられている評価法としてBarthel Indexが用いられる場合が少なくない。手段的ADLの評価に関しては、Lawtonの尺度(電話をする能力、買い物、食事の準備、家事、洗濯、移動の形式、服薬管理、金銭管理の8項目)が用いられたり、老研式活動能力指標等が活用される。これまでの知見等により、高齢者に対するADL評価はエビデンスの強さ※2Cとして推奨されている。

※2 エビデンスの強さは、強(A)、 中(B)、弱(C)、非常に弱(D)の4段階。

 認知機能に関するCGAツールに関しては、患者本人を対象とした質問式の検査で見当識、3単語記銘、注意と計算、逆唱、遅延再生、呼称、復唱、口頭命令の理解、読字、書字、描画の計11課題からなるMMSE(Mini-Mental State Examination)が広く用いられる。このほか、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa's Dementia Scale-Revised:HDS-R)、DASC-21、ABC認知症スケール等も活用される。高齢者にCGAを行う場合に、認知機能評価ツールによる評価を行うことはエビデンスの強さCとして推奨されている。

 うつに関するCGAツールとしては、老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale 15:GDS-15)が主に用いられており、15問(15点満点)の質問に「はい」「いいえ」で回答してもらい、5点以上がうつ傾向、10点以上がうつ状態とされ、うつの診断に際しては医師によって総合的に判断される。身体疾患がある高齢者において、うつ評価の実施はエビデンスの強さCとして推奨され、GDS-15が尺度として推奨されている。

 意欲に関するCGAツールに関しては、5問の質問に短時間で回答できる意欲の指標(Vitality Index)が知られており、介護者による観察評価に基づくため、認知症等を有する場合でも実施可能である。意欲低下(アパシー)の可能性がある高齢者に対して意欲の評価を実施することはエビデンスの強さCとして提案されている。

 QOLの評価尺度に関しては、主観によって健康状態を価値づける「選好に基づく尺度」と多次元的に健康を測定する「プロファイル型尺度」に大別され、代表的な指標として前者ではEuro QOL(EQ-5D)、後者ではSF-36がそれぞれ知られている。高齢者診療におけるQOL評価について、効果検証した研究は未だ少ないものの有用である可能性がある。

 社会的要素の評価の質問票に関しては、高齢者のための社会的ネットワークと社会的支援の程度を測定するための尺度としてLubben Social Network Scale(LSNS)が知られており、その後、同短縮版スクリーニング尺度Lubben Social Network Scale-6(LSNS-6)が開発され、日本版LSNS-6が作成されている。高齢者に対する社会的要素の評価に基づく介入の実施はエビデンスの強さCとして提案されている。

 フレイルの評価に際しては、簡易フレイルインデックス、前述の基本チェックリスト、後期高齢者の質問票、日本版Cardiovascular Health Study(J-CHS)基準等が活用されている。中でも後期高齢者の質問票では、15問の二者択一方式の質問からなり、4点以上が「フレイル」と示唆され6)、4点以上を「フレイル」とした場合に、そうでない人に比べて新規要介護認定に対するハザード比が有意に高い可能性が示されている。

 栄養の評価ではMalnutrition Universal Screening Tool(MUST)やMini Nutritional Assessment(MNA)等が活用されている。高齢者に対するフレイル評価や栄養評価の実施はエビデンスの強さCとして提案されている。

おわりに

 本稿では、高齢者総合機能評価(CGA)の概要について、新ガイドライン作成の経緯や趣旨、全体像、ツールの有用性を含めて紹介した。今後、精度の高いCGA評価ツールの開発やCGAの有用性等に関する研究が発展し、CGAの活用を通じた包括的・全人的な高齢者診療・ケアの推進が期待される。

文献

  1. 長寿医療研究開発費「高齢者総合機能評価(CGA)ガイドラインの作成研究」研究班, 日本老年医学会, 国立長寿医療研究センター編. 高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024.(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)南山堂, 2024(2025年12月23日閲覧)
  2. Ekdahl AW, Alwin J, Eckerblad J, et al.:Long-Term Evaluation of the Ambulatory Geriatric Assessment:A Frailty Intervention Trial(AGe-FIT):Clinical Outcomes and Total Costs After 36 Months. J Am Med Dir Assoc. 2016;17(3):263-268.
  3. Singh S, Gray A, Shepperd S, et al.:Is comprehensive geriatric assessment hospital at home a cost-effective alternative to hospital admission for older people? Age Ageing. 2022;51(1):afab220.
  4. Hosoi T, Yamana H, Tamiya H, Ogawa S, et al.:Association between comprehensive geriatric assessment and short-term outcomes among older adult patients with stroke:a nationwide retrospective cohort study using propensity score and instrumental variable methods. eClinicalMedicine. 2020;23:100411.
  5. Hosoi T, Yamana H, Tamiya H, Ogawa S, et al.:Association between comprehensive geriatric assessment and polypharmacy at discharge in patients with ischaemic stroke:a nationwide, retrospective, cohort study. eClinicalMedicine. 2022;50:101528.
  6. Yakabe M, Shibasaki K, Hosoi T, Ogawa s, et al.:Validation of the questionnaire for medical checkup of old-old(QMCOO)score cutoff to diagnose frailty. BMC Geriatr. 2023;23(1):157.

筆者

おがわすみと氏の写真。
小川 純人(おがわ すみと)
東京大学大学院医学系研究科老年病学教授
略歴
1993年:東京大学医学部医学科卒業、1994年:JR東京総合病院内科、1996年:日本学術振興会特別研究員、2001年:カリフォルニア大学サンディエゴ校細胞分子医学教室留学、2005年:東京大学老年病科助手、文部科学省医学教育課専門官(併任)、2008年:東京大学老年病科講師(医局長・病棟医長・外来医長)、2013年:東京大学大学院医学系研究科老年病学准教授、2024年より現職、2025年:東京大学医学部附属病院認知症センター長
専門分野
老年医学

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