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CGAの展開:フレイル外来と高齢入院患者のフレイル評価

公開日:2026年1月16日 10時00分
更新日:2026年1月16日 10時00分

荒木 厚(あらき あつし)

東京都健康長寿医療センターフレイル予防センター長


はじめに

 高齢者総合機能評価(CGA)は身体機能、認知機能、心理機能、栄養、薬剤、社会状況、併存症など領域を評価し、多職種で治療方針決定、リハビリテーション、心理サポート、栄養治療、薬剤の見直し(medication review)、社会サービスなどの提供などを行うものである。しかしながら、CGAは多くの時間と人手を要することが多く、急性期病院においては効率的なCGAを行うシステムを構築することが必要である。

 東京都健康長寿医療センターでは、2017年にフレイルを含めたCGAを行い、その対策を講じる内科の外来として、フレイル外来が東洋で初めて開設された。糖尿病、高血圧などの生活習慣病で定期通院している患者、外科系患者、入院患者のCGAを行っている。また、最近では地域から直接紹介された患者もフレイル評価やCGAの結果に基づき治療方針を決定している。現在、年間合計約900人の患者の診療を行っている。

 2023年には高齢入院患者の入院前から入院直後の慢性疾患、老年症候群、ADLなどの電子カルテの情報を利用し、障害蓄積モデルによるFrailty Indexであるelectronic Multimorbidity Frailty Index(eMFI)を評価するシステムを構築した。このeMFIを構成する評価領域は上記のCGAの領域であり、その該当数(割合)に応じて、治療方針の決定、退院支援、退院後の社会サービスなどのケアプランの作成に利用できる。

 本稿で、フレイル外来と入院患者におけるeMFIを中心に、CGAの果たす役割と今後の展望について述べてみたい。

フレイル外来における診療の流れと評価項目

 フレイル外来の診療は糖尿病・代謝・内分泌内科、循環器内科、研究所の医師5~6人と臨床心理士2人が担当している。糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を有し、疲れやすくなった、身体活動量が低下した、歩く速度が遅くなったなどのフレイルの症状がある患者に受診を勧め、可能な限り年1回の受診を行っている。

 診療の流れは医師が問診と診察を行った後に、臨床心理士が握力や歩行速度などの身体機能、体組成(InBody®)、フレイル(J-CHS、基本チェックリスト、後期高齢者の質問票など)、転倒リスクスコア、認知機能(MMSE、MoCA-J)の検査を行い、うつスケール(GDS15)、身体活動量(IPAQ)、栄養(MNA-SF)、薬剤、社会ネットワーク(Lubben Social Network Scale短縮版:LSNS-6)などを評価する(図)。握力、歩行速度、片足立ち時間の年齢別の成績、体力年齢、および認知機能の障害の領域の図を示すことで、どの能力が保たれ、または低下しているか説明している。体力年齢は研究所の行ってきた5つの疫学調査の握力、歩行速度、片足立ち時間のデータから算出している。体力年齢はサルコペニアを反映し、体力年齢と暦年齢の差はBMI高値、HbA1c高値、うつ、低アルブミン血症、シスタチンC高値、BNP高値があると大きくなることを報告している1)

図、フレイル外来の流れを表す図。
図 フレイル外来の流れ

フレイル外来の治療とフレイル対策としての運動、栄養、社会参加

 フレイル外来ではフレイル評価に基づいた治療を行うとともに、地域における運動、食事、社会参加・サポートの対策を立てる(図)。

 フレイル外来ではフレイルの原因を明らかにし、対策を立てる。糖尿病、肥満、心不全、心房細動、心血管疾患、慢性腎臓病、認知症、うつ病、パーキンソン病、骨粗鬆症、変形性関節症、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患、肝硬変、貧血などの疾患はフレイルの原因となるので、適切な治療方針を決定する。これらの疾患は、(1)フレイルを考慮して治療の目標や方針を決める疾患(糖尿病、高血圧など)、(2)疾患の重症度が増すにつれてフレイルのリスクが大きくなる疾患(心不全や慢性腎臓病など)、(3)背景にサルコペニアや低栄養があるもの(COPD、肝硬変など)、(4)転倒予防が重要な疾患(起立性低血圧、骨粗鬆症など)、(5)フレイルに付随しておこりやすく、ともに進行しやすいもの(認知機能障害、うつなど)がある。例えば、糖尿病では、認知機能、ADL、フレイル・サルコペニアの評価によって、糖尿病などの治療目標や治療方針の見直しを行うとともに、低血糖などの薬剤有害作用、ポリファーマシーなどに対する対策を講ずる。

 CGAの要素である身体機能低下、認知機能障害、うつ、低栄養、ポリファーマシー、社会サポート低下などもフレイルをきたしうる。易転倒性、嚥下障害、摂食障害、慢性疼痛、睡眠障害、便秘、排尿障害、視力障害、聴力障害、ポリファーマシーなどの老年症候群はフレイルの人に多いので、こうした老年症候群のケアを行う必要がある。とくに、マルチモビディティ(多疾患併存)の患者はその背景にフレイル、うつ、ポリファーマシーなどがあり、心血管障害、転倒・骨折、死亡のリスクとなる。したがって、マルチモビディティの患者こそ、CGAを行うべき対象であり、多職種でCGAに基づいた複合的なアプローチを行う必要がある。

 フレイル対策としての運動や社会参加は、地域の社会サービスにつなげることで、継続できるようにする。フレイル予防のためのレジスタンス運動を行うために、介護保険の要介護認定を申請し、デイケアなどを勧める。フレイル外来の詳細な検査結果に基づく意見書で適切な要介護度の認定が得られた例も少なくない。要介護と認定されない場合でも「通いの場」や総合事業のサービスCを利用し、運動を勧める。板橋区は「通いの場」として「10の筋トレ」ができる場所が110以上あり、利用を勧めている。

 低栄養、フレイル・サルコペニアなどがある場合には栄養指導を行い、適正なエネルギー量の摂取、十分なたんぱく質とビタミンの摂取、多様な食品摂取を行うように指導する。改善しない場合は経口栄養補助食品の利用を勧める。

フレイル外来における臨床研究

 フレイル外来では約900人の心血管代謝疾患を有する外来患者を登録し、約400人の患者を追跡して縦断研究を行っている。横断研究では、(1)フレイル外来患者の約8割がMCIレベルの認知機能障害があり、フレイルと認知機能障害は同時に対策を立てる問題であると思われる2)。(2)フレイル外来患者の認知・生活機能質問票であるDASC-8のカテゴリーの段階が進むにつれて、CGAの評価項目でもあるフレイル、サルコペニア、認知症、低栄養、服薬アドヒアランス不良の割合が増えることも明らかにしている3)。(3)肥満に関しては、ダイナペニア肥満とMCIとの関連4)、腹部CTによる内臓脂肪量高値とサルコペニアの組み合わせからなるサルコペニア肥満と頸動脈IMT高値との関連5)を報告している。(4)その他、起立時の血圧上昇とフレイルとの関連6)、脈圧高値と握力低下、脈圧低値と認知症の関連7)、腹部CTで評価した脊柱起立筋の筋量低下とフレイルとの関連8)、脾静脈の血流低下とサルコペニアとの関連9)、うつ症状とフレイルの双方向の関連10)なども報告している。

 フレイル外来の縦断研究により、(1)脳局所の白質統合性異常11)、(2)座位から立位への動作の床反力のスピード低下12)、(3)炎症、酸化ストレス、栄養のマーカーのGDF15高値13)やRDW高値14)など、(4)DASC-8カテゴリーⅡ以上がフレイル発症の危険因子となる15)ことを明らかにしている。この結果は、脳局所の白質線維の早期の変化、立位動作における身体機能、炎症や酸化ストレスに関係する因子、および生活機能がフレイル発症に関与していることを示唆している。その他、高血圧患者の観察期間における脈圧減少と3年後の握力低下との関連7)、糖尿病患者におけるHbA1c7.5%以上、臨床虚弱尺度(CFS)4以上、および言語流暢性障害が要介護発症の危険因子である16)ことも明らかにしている 。

フレイル外来の今後の展開

 フレイル外来におけるプレフレイルまたはフレイルの患者は多くの疾患や老年症候群を持ち、運動、栄養、社会参加の説明をしても、実行に至るのは半数に達しない。こうした患者は要支援レベルが多く、介護保険では十分なサービスを提供できない。そこで、2024年からフレイル外来患者を対象に院内の通いの場をつくり、簡単な運動、ゲーム、絵本の読み聞かせ、囲碁を用いたゲームを週1回行っている。また、医師と一緒に地域包括支援センターや社会福祉協議会などと連携し、通いの場などの様々な社会サービスにつなげるコーディネーターをつくることで、医師の社会的処方が推進できると考えている。東京都ではこのコーディネーターを担う多職種を養成するフレイル連携研修会を計画している。フレイル外来は医師とコーディネーター、その他の多職種とが協力してCGAを行い、フレイルの対策を行う外来として、さらなる発展を図っていきたいと考えている。

入院患者におけるfrailty指標による予後予測とCGA

 複数の慢性疾患を同時に併発することは「マルチモビディティ」と呼ばれており、死亡やADL低下、長期入院のリスクとなる。高齢患者では、慢性疾患の数だけでなく、転倒、低栄養、疼痛などの老年症候群の数、ADL制限もその予後に悪影響を与える可能性がある。一方、海外では慢性疾患、老年症候群、ADL制限の合計数による欠損累積モデルによるFrailty Indexが開発されており、これも高齢者の死亡リスクを予測する。

 そこで、前述のように日常診療の中で入院時にルーチンに電子カルテに記録されている慢性疾患17項目(心疾患、糖尿病、腎疾患、認知症、変形性関節症、悪性腫瘍など)、老年症候群16項目(転倒歴、低栄養、不眠、疼痛、うつ状態、視力障害など)、ADL制限2項目(BADL低下、IADL低下)などの35項目のデータからなるeMFI(electronic Multimorbidity Frailty Index)-35を開発し、高齢入院患者の予後との関連を調べた17)。対象は当センターへ入院した60歳以上の患者1,491名で、手術目的の短期入院や重複入院を除外した。eMFI-35は、Frailty Indexとしては35項目中、該当する項目の割合を求め、マルチモビディティとしては正常または軽度(0-2項目)、中等度(3-4項目)、高度(5-9項目)、極めて高度(10項目以上)と4群の重症度に分類した。主要アウトカムは入院中死亡、ADLの改善(Barthel Index20点以上の改善)、入院期間(15日以上を長期入院と定義)、自宅退院の可否とした。平均年齢は82歳、女性53.9%でeMFI-35重症度は軽度22.3%、中等度30.0%、高度39.1%、極めて高度9.6%であった。eMFI-35重症度の極めて高度群(10項目以上)は、入院中死亡リスクが3.1倍、長期入院のリスクは2.1倍に上昇、ADL改善の見込みが49%低減、自宅退院の見込みが39%低減した。高度群(5-9項目)も、長期入院のリスクも1.5倍となり、自宅退院が19%減少した。

 電子カルテ情報から自動に算出されるeMFI-35は、「マルチモビディティの指標」かつ「Frailty Index」でもあり、入院患者の予後を推定できることが明らかになった。入院時におけるeMFI-35の評価は、予後を推定できるだけでなく、治療やケアの方針の決定、退院支援、構成する項目の評価に基づいたCGAや社会サービスの導入に利用できることが期待される。

文献

  1. Toyoshima K, Seino S, Araki A, et al.:Difference between "Physical Fitness Age" Based on Physical Function and Chronological Age Is Associated with Obesity, Hyperglycemia, Depressive Symptoms, and Low Serum Albumin. J Nutr Health Aging. 2022;26(5):501-509.

  2. Tamura Y, Ishikawa J, Araki A, et al.:Prevalence of frailty, cognitive impairment, and sarcopenia in outpatients with cardiometabolic disease in a frailty clinic. BMC Geriatr. 2018;18(1):264.

  3. Toyoshima K, Araki A, Tamura Y, et al.:Use of Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System 8-items(DASC-8)for the screening of frailty and components of comprehensive geriatric assessment. Geriatr Gerontol Int. 2020;20(12):1157-1163.

  4. Oba K, Tamura Y, Araki A, et al.:Dynapenic abdominal obesity is associated with mild cognitive impairment in patients with cardiometabolic disease:a cross-sectional study. BMC Geriatr. 2022;22(1):255.

  5. Sato M, Tamura Y, Araki A, et al.:Coexistence of high visceral fat area and sarcopenia is associated with atherosclerotic markers in old-old patients with diabetes:A cross-sectional study. J Diabetes Investig. 2024;15(10):1510-1518.

  6. Toba A, Ishikawa J, Araki A, et al.:Orthostatic blood pressure rise is associated with frailty in elderly patients. Geriatr Gerontol Int. 2019;19:525-529.

  7. Ishikawa J, Toba A, Araki A, et al.:Association of pulse pressure and mean blood pressure to frailty, sarcopenia, and cognitive dysfunction in elderly outpatients with history of hypertension. Hypertens Res. 2024;47(8):2029-2040.

  8. Sato M, Tamura Y, Araki A, et al.:The cross-sectional area of erector spinae muscle and the liver-to-spleen ratio are associated with frailty in older patients with diabetes:A cross-sectional study. BMC Geriatr. 2023;23(1):765.

  9. Ishikawa J, Futami S, Araki A, et al.:Splenic and portal venous flow associated with frailty and sarcopenia in older outpatients with cardiovascular disease. BMC Geriatr. 2025;25(1):319.

  10. Yorikawa F, Ishikawa J, Araki A, et al.:Determinants of depressive symptoms in older outpatients with cardiometabolic diseases in a Japanese frailty clinic:importance of bidirectional association between depression and frailty. Plos One. 2023;18(2):e0281465.

  11. Tamura Y, Shimoji K, Araki A, et al.:Association between white matter alterations on diffusion tensor imaging and incidence of frailty in older adults with cardiometabolic diseases. Front Aging Neurosci. 2022;14:912972.

  12. Murao Y, Ishikawa J, Araki A, et al.:Association between physical performance during sit-to-stand motion and frailty in older adults with cardiometabolic diseases:a cross-sectional, longitudinal study. BMC Geriatr. 2023;23(1):337.

  13. Oba K, Ishikawa J, Araki A, et al.:Serum Growth Differentiation Factor 15 Levels Predict the Incidence of Frailty Among Patients with Cardiometabolic Diseases. Gerontology 2024;70(5):517-525.

  14. Oba K, Tamura Y, Araki A, et al.:High red blood cell distribution width associated with incident frailty in patients with cardiometabolic diseases:A longitudinal study. Sci Rep. 2025;15(1):30907.

  15. Katsumata Y, Toyoshima K, Araki A, et al.:Categorization using the Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System 8-items(DASC-8)based on cognitive function and activities of daily living predicts frailty, disability, and mortality in older adults. Geriatr Gerontol Int. 2024;24 Suppl 1:150-155.

  16. Toyoshima K, Tamura Y, Araki A, et al.:Risk Factor of Disability as New Certification of Long-Term Care Needs in Older Japanese Adults with Diabetes Mellitus:A Longitudinal Study. Geriatr Gerontol Int. 2024;24(10):1030-1038.

  17. Toyoshima K, Araki A, Tamura Y, et al.:Prognostic value of the electronic Multimorbidity Frailty Index for mortality, change in basic activities of daily living, length of hospital stay and discharge home in older hospitalized patients. Geriatr Gerontol Int. 2025;25(9):1185-1193.

筆者

あらきあつし氏の写真。
荒木 厚(あらき あつし)
東京都健康長寿医療センターフレイル予防センター長
略歴
1983年:京都大学医学部卒業、京都大学医学部附属病院老年科研修医、1984年:静岡労災病院(現、浜松労災病院)内科研修医、1989年:京都大学医学博士取得(医博第1128号)、東京都老人医療センター内分泌科医員、1995年:University College London Medical School, The Rayne Institute留学、1996年:Case Western Reserve University, Institute of Pathology留学、1997年:東京都老人医療センター内分泌科医員、2006年:同内分泌科部長、2009年:東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科部長、2012年:同内科総括部長、2019年:東京都健康長寿医療センター副院長(~2023年)、2020年より東京都健康長寿医療センターフレイル予防センター長、2022年より東京都健康長寿医療センター健康長寿医療研修センター長(兼務)
専門分野
老年医学、糖尿病、臨床栄養
過去の掲載記事

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