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感染予防のための睡眠

公開日:2020年10月 9日 09時00分
更新日:2020年10月12日 09時13分

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 新型コロナウイルス感染防止対策における活動の制限や生活様式の急激な変化により、ストレスを感じる方が多くなっています。Withコロナ時代を迎えるなか、ストレスを和らげ健康な生活を保つために、睡眠のコントロールが大切であることが多く報告されています。新型コロナウイルス感染症における睡眠の影響と良質な睡眠について、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部 精神生理機能研究室 室長 吉池 卓也 先生にお話をお伺いしました。

新型コロナウイルス感染症における睡眠への影響

財団:新型コロナウイルス感染症禍において、感染拡大防止のために非常事態宣言のもと「ステイホームポリシー」により自宅で過ごすことが求められました。また、非常事態宣言解除後は感染拡大防止のための「新しい生活様式」として3密回避、マスク着用、手指消毒、ソーシャルディスタンシングの実践が求められています。コロナ禍ではわれわれの日常の生活は変化しております。この様な状況が睡眠にどのように影響するのか、という点について解説をお願いします。

吉池先生:新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の世界的大流行と睡眠の関係について、複数の研究結果がすでに報告されています。それらの報告から、コロナ禍において心理的なストレスが不眠を引き起こすこと、また、感染拡大を抑えるための都市封鎖(ロックダウン)に伴う外出制限や社会生活の変化が睡眠・覚醒リズムを後退させることがわかってきました。

ストレスによる不眠

吉池先生:中国の18歳から44歳を対象とした5,641名の集団のアンケート調査1)によると、約5人に1人に不眠症状が現れています。また、「コロナ脅威度(COVID-19のリスクが身近に迫っているかの度合い)」が高いほど、不眠のみならず、うつ、不安、急性ストレス反応が強いことがわかりました。この研究では、1)COVID-19で入院中の人、その治療に従事する医療者、2)COVID-19で外来通院中の人、3)感染者の家族、4)感染していない人の順に、コロナ脅威度が高いと定義しています。「コロナストレス」などと表現される、本感染症の大流行に伴う心理的ストレスと睡眠の関係が、この研究で比較的はっきりと描き出されています。

 次に、医療従事者の方々に限って不眠を含めたメンタルヘルスの状態を調査した中国の研究があります2)。この研究では、対象となった複数の病院の医療従事者を、同感染症診療の最前線で勤務しているか否かで二つの群に分け、メンタルヘルスを比較しています。その結果、約7割の人が睡眠に何らかの問題を感じていることがわかりました。とくに、最前線で診療に従事する人がそうでない人よりも、睡眠の質が悪いと感じ、また不眠、不安、うつの症状をより強く感じていました。

 これらの報告から、本感染症に罹患することへの恐れや同感染症に近い距離で日常的にさらされることが、睡眠を悪化させ、メンタルヘルスを損なうことが示唆されます。

睡眠リズムの後退

吉池先生:コロナ禍における都市封鎖が睡眠・覚醒リズムに影響することもわかってきました。イタリア在住の18歳から35歳の学生および大学職員、計1,310名を対象とした調査3)によると、睡眠に問題を感じる者の割合が、都市封鎖後にそれ以前と比べて増加しました(睡眠評価尺度PSQI※1得点が基準値を超える者が41%から52%に増加)。また、就寝のタイミングが遅れ、起床する時刻が遅くなり、床の上で過ごす時間が長くなっていました。これは、寝床に長くいるのに睡眠の質が低下していることも示しています。また、都市封鎖後に封鎖前よりも時間の流れをゆっくりと感じる人ほど、睡眠の質が悪いこともわかりました。この報告から、コロナ禍における外出制限は睡眠・覚醒リズムを後退させることが示唆されます。これは、決まった時間に起きなければならないという社会的な制約が弱まった結果とも言えます。

※1 PSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index;ピッツバーグ睡眠質問票)
PSQIは、主観的な睡眠の質や睡眠障害の症状を評価するために開発された質問紙です。睡眠障害のスクリーニングや治療による変化指標(アウトカム)に用いられています。回答は7つのコンポーネント(睡眠の質、睡眠時間、入眠時間、睡眠効率、睡眠困難、睡眠薬の使用、日中機能)に分類され得点化されます。7つのコンポーネント得点を合計し、PSQI総合得点を算出します。PSQI総合得点の範囲は 0~21点で、得点が高いほど睡眠が障害されていると判定されます。
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睡眠と免疫の関係

「十分な睡眠」とは

財団:厚生労働省のホームページには、感染予防には「十分な睡眠などで自己の健康管理をしっかりすること」と書かれています4)。この「十分な睡眠」とは具体的にどのような睡眠を指しているのでしょうか?

吉池先生:「十分な睡眠」とは、非常に遠大なテーマであり、ごく身近な疑問でありながらよくわかっていないものの一つでもあります。何のために睡眠が十分と考えるかが大切です。一般的には、健康的な生活に結びつく睡眠とは何なのか、という事を想定した疑問であろうと思います。

 十分な睡眠について別の視点で考えると、そもそも「なぜ眠るのか」という疑問にもつながります。睡眠学が発展する以前は、睡眠は「外的な刺激を遮断して休む」という生産性のない消極的なものとして考えられていました。しかし、今では「人の健康を維持するための積極的な生理学的なプロセス」と考えられています。また、睡眠は体の健康だけでなく、記憶や学習といった脳の機能を昨日よりも高めるために非常に重要であると考えられるようにもなりました。つまり、睡眠は日中をよりよく生活するための準備の時間と言えるのではないでしょうか。「眠りのための睡眠」ではなく、「活動するための睡眠」であることを忘れてはならないでしょう。ですから、昼間に眠気がない程度の睡眠がとれていれば、ひとまず十分と考えることもできます。

 何故かというと、眠りという行為は、我々が行動を変えることで調整できる部分と、体の機能に身を任せるほかない部分があります。例えば、頑張れば起きていることはある程度可能ですが、反対に眠ろうと頑張ってもうまく眠れません。これがかえって自然な眠りのプロセスを妨げてしまい、不眠が長引く原因になりこともあります。睡眠に対して力みすぎず、自然な眠りを心掛けることも大切です。

十分な睡眠は感染予防につながるか?

財団:十分な睡眠をとることは感染予防対策につながるのか、この点について先生のお考えをお聞かせください。

吉池先生:十分な睡眠が感染予防対策につながるという考え方は、基本的に正しいと思います。実は、睡眠と感染リスクの関係について、ヒトを対象に導かれた客観的なデータは少ないのが現状です。主観的な睡眠時間が7時間より短い人、主観的な睡眠効率※2が92%より低い人はそうでない人に比べて風邪をひきやすいことがわかっています5)。これは脳波などに基づいた客観的な睡眠の長さに基づいた結果ではなく、客観的な睡眠時間と主観的な睡眠時間はしばしば異なることから、慎重な解釈が必要です。

 また、睡眠時間と感染リスクの関係については、睡眠時間の長い動物の方が睡眠時間の短い動物よりも白血球の数が多いといわれています。体内で免疫をつかさどるのは、血液中の白血球です。ですから間接的ではありますが、睡眠時間の長さは免疫力の強さに関係するという説もあります。

※2 睡眠効率
睡眠効率とは、ベッドにいた時間を分母として、その中で実際に眠っていた時間の割合のことです。

風邪をひくとなぜ眠くなるのか?

財団:風邪をひくと眠くなるのはなぜですか?

吉池先生:我々は風邪をひくと、発熱や食欲不振などの体の変化とともに、睡眠も変化します。眠気が強くなるのはその一つの現れです。病原体に感染すると、睡眠構造のうちノンレム睡眠※3が長くなり、レム睡眠※4が短くなります。免疫系とは非常に複雑な仕組みです。病原体が体に入ると、白血球などの免疫系の細胞からサイトカインが分泌され、免疫系が活性化されます。炎症とよばれる体の防御反応を促す系(炎症性サイトカイン)と、これを抑える系(抗炎症性サイトカイン)が、それぞれアクセルとブレーキの役割を果たしながら協調して働き、病原体を攻撃します。炎症を促す系の炎症性サイトカインの中にインターロイキン1※5と腫瘍壊死因子※6があります。この2つの炎症性サイトカインは体内時計の影響を受け睡眠中に働きがピークとなります。そのため、十分な睡眠は免疫の働きを助けると考えられます。

※3 ノンレム睡眠
ノンレム睡眠とは、睡眠の前半に最も多く出現する眠りの状態であり、大脳皮質の神経細胞(ニューロン)の活動が低下して、だんだんと同期したゆっくりとした活動を特徴とします。深いノンレム睡眠は身体の疲労回復に重要とされています。
※4 レム睡眠
レム睡眠とは、脳が非常に活発に働いた状態であり、記憶の定着や感情の調節を促すと考えられています。体内時計のリズムを反映し、早朝に最も多く出現します。
※5 インターロイキン1
インターロイキン1(IL-1:Interleukin-1)はサイトカイン(細胞間の情報を伝達する物質)の一種で、マクロファージ系の細胞から産生されるタンパク質です。炎症や感染防御に重要な役割を果たします。
※6 腫瘍壊死因子
腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)とはサイトカインの一種で、不要な細胞を排除するほか、感染防御・抗腫瘍作用を持つ物質です。白血球から作られます。

短時間睡眠はワクチンの効果を抑制する

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吉池先生:睡眠の長さとインフルエンザワクチンの接種後の抗体反応を比較した、フランスのリヨン大学で行われた研究があります6)。平均23歳の健康な男女25名を短時間睡眠群(11名)、通常睡眠群(14名)の2つに分け、短時間睡眠群には最初の6日間を4時間睡眠で過ごし、7日目から13日目までは睡眠不足を補うために12時間眠るよう指示しました。一方、通常睡眠群には13日目まで8時間眠るよう指示しました。どちらの群でも4日目にワクチンを接種し、14日目に抗体反応を測定すると、短時間睡眠群の抗体反応は弱く、通常睡眠群の半分程度の反応にとどまることがわかりました。したがって、睡眠時間が不足していると、接種したワクチンの効果が十分に発揮されないことが示唆されます。

 しかし、この研究では、睡眠を短くされたことによるストレスが、コルチゾール(ステロイドホルモン)の分泌を促し、免疫系の働きを抑えたことが、結果に影響した可能性も考えられます。そのため、睡眠と免疫の直接的な関係を示しているとは必ずしも言えないことに注意が必要です。

質の良い睡眠とは何か

財団:どのような睡眠を「質が良い」というのでしょうか?

吉池先生:睡眠の良し悪しについては今のところ科学的にきちんと定義されていません。

 睡眠には複数の側面があります(図1)7)。睡眠に対する満足感、休息感、睡眠効率、睡眠の長さ、眠りのタイミング、昼間の眠気といった複数の次元から、その人の睡眠が特徴づけられます。

 あるアンケート調査8)では、自分の睡眠に期待するのは睡眠時間と睡眠の質のいずれかと尋ねると、圧倒的に多くの人が睡眠の質と答えています。「睡眠の質」という言葉で思い浮かべるものは、人によって多少違うとしても、共有される概念であり、睡眠時間とは異なる概念であることを示しています。健康的な生活を長く維持するという目標に対して、睡眠がどのように影響するのかを検討することは、国際的にも重要なテーマです。その意味で、主観的な睡眠の質と国民の健康との関わりに関する研究が期待されています。

図1:睡眠には複数の側面があることを示す図。睡眠の質、睡眠効率、睡眠時間の長さ、眠るタイミング、昼間の眠気といったことが関係する。
図1 睡眠がもつ様々な側面7)を改変・引用

吉池先生:これまで、睡眠と健康の関係を調べた研究の多くは、睡眠時間を手掛かりにしています。その中で、例えば7時間という主観的な睡眠時間を基準に、それよりも長い場合、短い場合のいずれも健康に悪い影響があることが報告されています(図2)9)。しかし、主観的な睡眠時間と客観的な睡眠時間とは必ずしも一致しません。とくに、不眠が強くなると、自分の睡眠時間を短く見積もる傾向が強くなり、脳波で見ると7時間眠っているのに、5時間しか眠れていないと感じるというように、主観と客観の開きが大きくなることがあります。

 一方で、客観的な睡眠時間と健康の関係性を検討した研究は極めて少ないのですが、主観的な睡眠時間のデータに反して、客観的な睡眠時間が長いことが健康を損なうことを示す結果は得られていません。睡眠の質が悪いと感じているのに、客観的にはしっかり眠れている場合もあれば、睡眠に満足しているのに、客観的には眠れていないということも起こり得ます。そのため、睡眠を主観と客観の両面で捉え、健康にどのように影響するか評価することが、今後の研究で求められています。

図2:7時間眠っているという主観的な睡眠時間を基準にそれよりも長い場合も短い場合も健康に悪い影響があることをしめすグラフ。
図2 夜間睡眠時間と全死亡リスクの用量反応解析9)
主観的睡眠時間7時間を死亡リスク1とした場合、4時間睡眠や10時間睡眠の場合、死亡リスクが7時間睡眠に比べて約1.2倍になることを示している。

加齢による睡眠への影響

財団:年齢を重ねるごとに睡眠にはどういった変化があるのか教えてください。

吉池先生:成人の場合、加齢に伴い睡眠の総量が減少し、浅い睡眠の割合が増加します。働き盛りの世代(40代から60代)の方は社会的にも家庭においても役割が多く、睡眠が不足しがちです。できるだけ睡眠不足を防ぐような生活が求められます。一方、高齢になると睡眠の機会が得られやすくなりますが、生理学的な変化(老化)により、眠りの質が主観的にも客観的にも悪化していくことがわかっています。ひとまとめに長く寝ることができず睡眠が途切れやすくなり、休息感が以前のように得られなくなります。また、加齢と共に必要な睡眠時間は減少します。したがって、床にいる時間を長くしすぎず、昼間はできるだけ体を動かす工夫をして、昼夜のメリハリをつけることが求められます。

質の良い睡眠のためにすべきこと

財団:質の良い睡眠のための毎日の過ごし方や就寝前に意識することなど、アドバイスをください。

吉池先生:コロナ禍で睡眠の状態をより良く保つための過ごし方について、表のような指針を当研究部ホームページに公開しています。ポイントは「体内時計を整えること」と「ストレスを和らげること」です。

表 質の良い睡眠のためにすべきこと

  1. 毎朝同じ時間に起床しましょう
  2. 目覚めたら太陽の光を浴びましょう
  3. 目覚めたら友人や家族とあいさつ・会話をしましょう
  4. 朝食を同じ時間に摂りましょう
  5. 日中は明るい環境で過ごしましょう
  6. 適度な運動・ストレッチを取り入れましょう
  7. 寝る前に入浴をしてリラックスしましょう
  8. 寝る1時間~2時間前より照明強度を落としましょう
  9. 寝床と居間と別にしましょう

※詳しくは国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部のサイトをご覧ください。

COVID-19緊急事態宣言のため自宅でお過ごしの皆様へ~自宅待機(Stay Home)中の睡眠健康を保つコツ~ 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

体内時計を整える

吉池先生:体内時計のリズムを整えるのに重要なのは、朝に太陽の光を浴びることです。できるだけ朝決まった時間に起床して、朝日を目から取り入れることです。体内時計が光を感知した14~16時間後に、「眠りホルモン」とよばれるメラトニンが分泌され、睡眠・覚醒リズムの規則性が高まります。日当たりの良いところであれば、カーテンを開けて、自然に光を取り入れるだけで十分です。朝に散歩するなど屋外で過ごすと、より高い効果が得られるでしょう。なお、光が体内時計のリズムを前進させてくれる時間帯は朝に限られています。

 一方、夜に強い光を浴びてしまうと体内時計のリズムが遅れてしまいます。そのため、夜は照明の明るさを抑え、暖色系の柔らかい光にするなど、できるだけ光を浴びないようにすることが大切です。また、体内時計のリズムを保つために重要なるのが社会的な交流です。家族や友人と会話することを日課にすることがとても重要です。誰かと交流することは、日中に活動する意識や生きがいにつながり、生活リズムの維持を容易にします。

ストレスを和らげる

吉池先生:昼間に適度な運動やストレッチを行うと、ストレスが和らぐだけでなく、疲労の反動で夜に眠りやすくなります。また、寝る前にぬるめと感じる湯温で適度な時間入浴し、寝室の照明強度を落とすことで心身がリラックスし、入眠が促されます。また、寝室の温度や湿度を心地良いと感じる程度に調節することも寝つきを良くします。厚生労働省がまとめた「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」も参考になるのでしょう。

健康づくりのための睡眠指針2014 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

仮眠について

財団:通勤電車での行き帰りや出張による新幹線での移動する際に仮眠をとっても、すっきりしないことがあります。仮眠はリフレッシュに効果的だという話をよく聞きますが、仮眠(昼寝)の効果と仮眠の仕方についてアドバイスいただけると嬉しいです。

吉池先生:普段寝不足がどの程度あるかということによって、仮眠や昼寝の意味が異なります。夜の睡眠が十分なのに、昼間さらに寝ると、夜は寝つきにくくなります。とくに高齢の方や不眠症をもつ方は、できるだけ昼間に寝ないようにすることが大切です。午後3時以前にとる15分から30分の仮眠は、その後の頭の働きを改善し、疲れを軽減する効果があり、夜の睡眠に影響しにくいと考えられています。しかし、働き盛りの現役世代の方で慢性的に睡眠不足に陥っている場合、仮眠・昼寝はむしろ必要な時間です。

財団:多様な業種や働き方があり、夜勤などシフトワークで働く人も多くなっておりますが、夜勤で働く人は質の良い睡眠を得るにはどうしたらよいでしょうか?

吉池先生:夜勤勤務の方は、昼間の勤務よりも身体的に負担が大きいため、仮眠を適切にとることが夜勤中の眠気とヒューマンエラーの防止につながります。夜勤前に30分から3時間程度眠っておく、夜勤の途中に仮眠をとる、夜勤後に十分な睡眠をとる、といった方法が考えられます。

読者へメッセージ

財団:健康長寿ネットをご覧になられている読者に先生からメッセージをお願いします。

吉池先生:ストレスが不眠を引き起こすという古くから知られた事実が、コロナ禍で改めて確認されました。COVID-19が蔓延する世界的な危機状況で、不安や恐怖を感じることはごく自然なことです。つらい気持ちを仲間と共有する、言葉にして表現する、文字に置き換えるなど、一旦つらい気持ちを自分の外に出してみることが大切です。

 また、COVID-19最前線の医療従事者への感謝を忘れず、身近な感染者ともつながりを失わないよう工夫し、家族を亡くされた方々にお悔やみの言葉を伝えるなど、周囲に「共感」を持つことは精神健康を保つうえで大切です。共感という社会的な相互作用が、免疫機能を高めることも示唆されています10)

 家族や友人などの小さなコミュニティを超えて、共通の目標に向かい皆で協力し合えるのが、ヒトの行動の際立った特徴です。世界的な困難を共に乗り越えていくために、こうした科学の力が支えになることを願っております。

文献

  1. Lin L, Wang J, Ou-yang X, Miao Q, Chen R, Liang F, et al.(2020): The immediate impact of the 2019 novel coronavirus (COVID-19) outbreak on subjective sleep status. Sleep Med. 18-24. (英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. Qi J, Xu J, Li BZ, Huang JS, Yang Y, Zhang ZT, et al.(2020): The evaluation of sleep disturbances for Chinese frontline medical workers under the outbreak of COVID-19. Sleep Med. 72: 1-4.(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. Cellini N, CanaleN, MioniG, Costa S (2020): Changes in sleep pattern, sense of time and digital media use during COVID-19 lockdown in Italy. J Sleep Res. 1-5.(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 新型コロナウイルス感染症の予防法 問1:感染を予防するために注意することはありますか。心配な場合には、どのように対応すればよいですか。厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. Sheldon Cohen 1, William J Doyle, Cuneyt M Alper, Denise Janicki-Deverts, Ronald B Turner. Sleep habits and susceptibility to the common cold. Arch Intern Med. 2009 Jan 12;169(1):62-7.(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  6. Karine Spiegel, John F Sheridan, Eve Van Cauter.Effect of sleep deprivation on response to immunization. JAMA The Journal of the American Medical Association 288(12):1471-2. October 2002(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  7. Buysse, D.J., 2014. Sleep Health: Can We Define It? Does It Matter? Sleep 37, 9-17(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  8. 栗山健一,他:「健康づくりのための睡眠指針2014」のブラッシュアップ・アップデートを目指した「睡眠の質」の評価及び向上手法確立のための研究.2019年度厚生労働科学研究成果報告書(印刷中)
  9. 栗山健一:睡眠の量と質を考える (特集 睡眠障害の診療update : 最新の診断と治療), Japanese journal of clinical medicine 78(5), 854-860, 2020-05
  10. Manczak, E.M., Basu, D., Chen, E., 2016. The Price of Perspective Taking. Clin. Psychol. Sci. 4, 485-492.(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

話し手

写真:話し手の吉池卓也先生
吉池 卓也(よしいけ たくや)
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部 精神生理機能研究室長
最終学歴
鳥取大学医学部医学科卒業、東京医科歯科大学大学院修了
略歴
東京医科歯科大学医学部附属病院精神科、栃木県立岡本台病院、東京都立多摩総合医療センター精神神経科、横浜市立みなと赤十字病院精神科、精神保健研究所成人精神保健研究部、神奈川県立精神医療センター、滋賀医科大学精神医学講座、伊国サンラファエレ大学精神医学部門を経て、2019年より現職。
専門
精神医学、睡眠医学、断眠・光と情動調節

聞き手・著者

公益財団法人長寿科学振興財団 事業推進課 山口 貴利

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