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転移性骨腫瘍

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年6月20日 10時56分

 転移性骨腫瘍(てんいせいこつしゅよう)とは、身体の他の場所にできた悪性腫瘍(あくせいしゅよう:がんや肉腫(にくしゅ)など)から腫瘍の細胞が血液などから運ばれて骨に辿り着き、そこで成長したもの(転移:てんい)をいいます。骨腫瘍の大半をこの転移性骨腫瘍が占めています。

転移性骨腫瘍の症状

 転移性骨腫瘍ができると、骨が腫瘍の細胞で置き換えられるため、骨がもろくなります。脊椎(せきつい:背骨)がもろくなると、背中を支えることができずに少し動いただけで激しい痛みが出ます。また、脊髄神経を圧迫すると麻痺を起こし、寝たきりになることがあります。

 骨がもろくなった場所は、なんのきっかけもなく突然骨折します(病的骨折)。そうなると、けがをした覚えがないのに痛みや腫れが現れます。

 理論上は骨であればどこでも転移が起こりますが、骨転移を起こしやすい場所というのがあります。一番多いのは脊椎、骨盤、肋骨など身体の中央にある骨です。そのほか、大腿骨(だいたいこつ:太ももにある太い骨)や上腕骨(じょうわんこつ:二の腕の骨)などの太くて長い骨に起こりやすいとされています。

転移性骨腫瘍の原因

 転移性骨腫瘍の原因は、身体の他の場所にできた悪性腫瘍が転移することにあります。骨転移を起こしやすいがんとして、肺がん、乳がん、腎がん、前立腺がんなどが知られています。

 逆にがんの種類からみると、前立腺がんと乳がん、そして肺がん、甲状腺がんにかかると骨転移が非常に高い確率で起こります。患者さんの数が比較的多い大腸がんや胃がんは、比較的骨転移が起こりにくいとされています。

転移性骨腫瘍の診断

 骨のレントゲン写真を撮ると、骨腫瘍に特徴的な異常がみられます。画像から骨腫瘍を疑った場合、MRI検査や骨シンチグラフィーなど追加の検査を行い、腫瘍であることを確定診断します。がんにかかったことがある、もしくは今闘病中の方の場合は、血液中の腫瘍マーカーの値などが参考になることがあります。

 痛みなどから先に転移性骨腫瘍が見つかることがあります。その場合は、骨に起こしやすいがんを中心に原発巣の検索を行います。

転移性骨腫瘍の治療

 転移性骨腫瘍の治療には、大きく分けて手術とそれ以外の治療があります。

 手術として、転移性骨腫瘍でもろくなった骨の前後・上下をプレートで固定したり、骨転移の部分を切除して人工の材料(骨セメントや人工関節など)で置き換えたりする手術があります。

 手術以外の治療法としては、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、放射性ヨウ素(131I )内照射療法、ビスホスホネート療法などの腫瘍に直接働きかける治療のほか、鎮痛剤(痛み止め)や骨折を防ぐための薬、装具の利用など生活の質を高めるための治療があります。骨転移の痛みは非常に強く、通常の非ステロイド性消炎鎮痛剤では効果がなく、モルヒネなどの麻薬系鎮痛剤が必要になることも多々あります。

 どの治療法を選択するかどうかは、原発巣の種類や患者さんの年齢や性別、全身状態や他の臓器への転移の状態などによって大きく異なりますが、基本的には手術以外の治療法を選択することが多いです。たとえば、乳がんや前立腺がんはホルモン療法が非常に効果的であり、甲状腺がんは放射性ヨウ素(131I )を投与して体の内側から放射線を当てる治療がよく効きます。逆に、腎がんは放射線に対する反応が非常に悪いことがわかっています。

 いずれの場合も、できるだけ患者さんの負担にならないように痛みや苦痛を取り除く方法を選択します。

 一般的には、肺がん、胃がん、肝がんの骨転移は非常に進行が速く予後が良くないことが知られています。逆に、乳がん、前立腺がん、甲状腺がんの骨転移は進行が遅いことがわかっており、比較的予後が良いとされています。

転移性骨腫瘍の予防・ケア

 転移性骨腫瘍のある方は、非常に骨折をしやすいことがわかっています。高齢のがん患者さんが一度骨折を起こすと、寝たきりになってしまう可能性が非常に高いとされています。がんの進行によって体力が落ちている方も多く、常に転倒の危険が伴います。じゅうたんの端などのささいな段差でもふらついて転倒することがありますので、家の中を見直して、段差があるところはできるだけ段差を解消するか、手すりを付けると良いでしょう。

 現在がんで闘病中の方が、きっかけもなく骨の痛みや腫れを訴えた場合、転移性骨腫瘍の可能性があります。早めに医師の診察を受けましょう。

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