健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

サルコペニアのケア

口腔機能の維持・向上

 サルコペニアの改善・予防のためにはバランスのとれた栄養と運動の習慣が重要です。十分な栄養を摂取し、運動機能の維持・改善を図るためには「食べる」ための口腔機能を維持・改善することが必然です1)

 口の清潔を保ち、虫歯や歯周病を予防して噛む力を保つこと、味覚の質や唾液の分泌量の低下を予防し、食欲や食事量を保つことは、十分な栄養を摂取でき、サルコペニアの要因でもある低栄養を予防することにつながります2)

 歯磨きを丁寧に行い、舌の汚れも取り除くようにしましょう。入れ歯を使用している方は、口に合わないと入れ歯を外しがちとなり、食べられる食材・食品も限られてしまいます。しっかりと調整を行い、口に合ったものを使用することで食べられる食材や食事量も増え、栄養バランスの改善も期待できます。入れ歯のお手入れが行き届いていないと、細菌やカビが入れ歯を装着した際に肺へと入り、肺炎を起こすこともあるため、きれいに洗い、清潔に保ちましょう。また、デリケートで壊れやすいもののため、保管の仕方にも注意して丁寧に扱いましょう3)

 よく話すこと、歌を歌うことは口の動きや発声に関わる筋肉を動かし、飲み込む力を維持することにつながります。大きく口を開けて「ア・イ・ウ・エ・オ」や、「パ・タ・カ・ラ」と発声することで唇や舌、咽頭の機能など飲み込みに関わる筋肉を働かすことができます4)

 誰かと会話することや歌うことは、口腔機能の維持・改善だけではなく、コミュニケーションの手段となり、精神的なケアや社会性、活動性を促す側面も持ち合わせています。他人と会話し、交流することで気分が晴れ、活気を取り戻すこともあります。歌うことでストレスの発散となり、気持ちが穏やかになることもあります。社会とのつながりを持ち、役割や趣味を持つことで活動的となることもあります。

 口腔機能の向上によって栄養面の改善を行い、体力・筋力・身体機能の維持と、会話や歌うことを積極的に行うことで活動性、社会性の向上を図り、閉じこもりやうつなどから起こる心身の機能低下を予防しましょう2)

下肢筋力の維持・向上

 サルコペニアでみられる筋力低下は、高齢者が要介護状態となる主な原因ともなります。

 平成25年厚生労働省の国民生活基礎調査によると、骨折・転倒は要支援・要介護が必要となった原因の上位3位に入ります(表1)5)

 要支援者となった原因の第1位は関節疾患(20.7%)、第2位は高齢による衰弱(15.4%)、第3位が骨折・転倒(14.6%)となっています。要支援者の中でも、要支援1では、骨折・転倒が原因となった割合は第3位(11.3%)、要支援2では、第2位(17.6%)となっています。

 要介護者のうち、要介護4でも、骨折・転倒は第3位(14.0%)となっています。

表1:要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)
平成25年(単位:%)
要介護度第1位第2位第3位
総数 脳血管疾患(脳卒中) 18.5 認知症 15.8 高齢による衰弱 13.4
要支援者 関節疾患 20.7 高齢による衰弱 15.4 骨折・転倒 14.6
要支援1 関節疾患 23.5 高齢による衰弱 17.3 骨折・転倒 11.3
要支援2 関節疾患 18.2 骨折・転倒 17.6 脳血管疾患(脳卒中) 14.1
要介護者 脳血管疾患(脳卒中) 21.7 認知症 21.4 高齢による衰弱 12.6
要介護1 認知症 22.6 高齢による衰弱 16.1 脳血管疾患(脳卒中) 13.9
要介護2 認知症 19.2 脳血管疾患(脳卒中) 18.9 高齢による衰弱 13.8
要介護3 認知症 24.8 脳血管疾患(脳卒中) 23.5 高齢による衰弱 10.2
要介護4 脳血管疾患(脳卒中) 30.9 認知症 17.3 骨折・転倒 14.0
要介護5 脳血管疾患(脳卒中) 34.5 認知症 23.7 高齢による衰弱 8.7

 特に筋力低下は下肢の筋肉に起こりやすく、太腿の筋肉、ふくらはぎの筋肉の筋力低下がみられるので、太腿、ふくらはぎの筋肉を鍛える体操を行いましょう。

太腿の筋力低下に対して効果的な体操

  1. 肩幅に足を開いて椅子に座り、両手を前ならえの状態に前方に突き出します。
  2. ゆっくりと「1.2.3.4.5」と数えながら、反動をつけずに立ち上がります。
  3. 立ち上がったら今度は「1.2.3.4.5」とゆっくり数えながら、どんとお尻をつけてしまわないように、ブレーキをかけながら座ります。
  4. ゆっくり立ち上がる、ゆっくり座る動作を1回として連続で10回繰り返します。1回3セットを朝・昼・晩と行いましょう。

ふくらはぎの筋肉の筋力低下に対して効果的な体操

  1. 椅子の背や壁、机などに両手を軽く添えます。
  2. 両足でつま先立ちになります。
  3. ゆっくり両脚の踵を下ろします。
  4. つま先立ちになって、踵を下ろす動作を1回として、連続で20回繰り返します。1回2セットを朝・昼・晩と行いましょう。

 その他、「四つ這いになって右手と左足をあげ、10秒間静止し、次に左手、右足をあげて10秒間静止する」などのバランス訓練や、「大股で歩く、早足で歩く、後ろ向きに歩く」などの応用歩行などのトレーニングが転倒予防には効果的です。

参考文献

  1. サルコペニアの予防と改善に寄与する補綴歯科を目指して-多職種連携による高齢者の口腔機能,栄養,運動機能の改善-松山美和日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 7 : 90-91, 2015
  2. 介護予防と口腔機能の向上 | e-ヘルスネット情報提供 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 健康長寿教室パンフレット フレイル研究部 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)について 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 平成25年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ介護の状況 表21 要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位) 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

このページについてご意見をお聞かせください