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サルコペニアの診断

公開日:2021年10月29日 10時00分
更新日:2023年7月14日 10時26分

 2019年、アジア各国よりサルコペニアの研究者が集まり、サルコペニアの診断方法について話し合いました。そこから報告されたのが、Asian Working Group for Sarcopenia 2019(AWGS2019)です1)。実は、2014年にもこのアジアのサルコペニアワーキンググループよりサルコペニアの診断方法が報告されており2)、AWGS2019はその改訂版ということになります。サルコペニアの研究は、他の疾病と比較すると未だ歴史が浅く、日々様々な知見が報告されています。そのため、今後も診断方法については、最新の研究成果に基づきながら定期的に見直しがなされるものと思います。

 現在、日本サルコペニア・フレイル学会でも推奨しているのがAWGS2019に基づいたサルコペニア診断です(図1、図2)。この基準では、サルコペニアを筋肉の力、機能、量という3つの指標によって判定します(図3)。筋肉の力、筋力は握力にて判定します。筋肉の機能は、歩行速度、5回椅子立ち上がりテスト、Short physical Performance Battery(SPPB)のいずれかで判定します。筋肉の量は生体電気インピーダンス法(BIA法)もしくは二重エネルギーX線吸収法(DXA法)という2種類の方法によって計測することができます。これらの方法によって両腕両脚の筋肉量を算出し、この腕脚の筋肉量を身長(m2)で補正した値を骨格筋指数(SMI)と呼びます。サルコペニアの判定には、筋肉の量が低下していることが必須条件となり、筋肉の力と機能のいずれかが低下している場合にサルコペニア、両方ともに低下している場合に重症サルコペニアと判定します。

図1:サルコペニアの診断基準AWGS2019を表す図。
図1 AWGS20191)
図2:AWGS2019でのサルコペニア診断基準値一覧を示す図。
図2 AWGS2019の基準値一覧1)
図3:筋力の3要素力、機能、量を表す図。
図3 筋肉の3要素

 なお、BIA法やDXA法を用いた筋肉量計測は設備が整った機関でしか受けることが出来ません。このような条件が整っていない環境下では、筋肉の力と機能のいずれかが低下している場合にサルコペニアの可能性ありと判断し、運動や栄養を意識した対策を講じることや、専門機関へ紹介することが推奨されています。気になる方、まずはかかりつけの医師にご相談ください。

文献

  1. Chen LK, Woo J, Assantachai P, Auyeung TW, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment.J Am Med Dir Assoc. 2020 Feb 4. pii: S1525-8610(19)30872-2. [Epub ahead of print]
  2. Chen LK, Liu LK, Woo J, Assantachai P, et al. Sarcopenia in Asia: consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia.J Am Med Dir Assoc. 2014 Feb;15(2):95-101. doi: 10.1016/j.jamda.2013.11.025.(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

筆者

写真:筆者_山田実先生
山田 実(やまだ みのる)
筑波大学人間系 教授
最終学歴
2010年 神戸大学大学院医学系研究科博士後期課程修了(保健学博士)
主な職歴
2008年 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻助手、2010年 同・助教、2014年 筑波大学人間系准教授、2019年 同・教授、現在に至る。
専門分野
老年学、リハビリテーション

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長寿科学研究業績集「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」について

 長寿科学研究業績集は学術的研究成果の中で、社会のニーズにあったテーマを医療等従事者向けに編集した研究マニュアルです。各関係機関に活用いただくことで研究成果の普及啓発を図かっております。

 令和2年度長寿科学研究業績集は「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」(令和3年3月発刊)と題し、著名な先生方にご解説いただきました。

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業績集「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」(財団ホームページ)(新しいウインドウが開きます)

画像:令和2年度長寿科学研究業績集の表紙画像

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