健康長寿ネット

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サルコペニアの診断

EWGSOPによる定義

 サルコペニアの診断基準は様々な種類がありますが、ヨーロッパのワーキンググループEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)による定義がよく使われています1)

 四肢骨格筋量の低下があることに加えて身体機能(歩行速度)の低下または、筋力(握力)の低下がある場合にサルコペニアと診断されます。

 四肢骨格筋量は四肢の筋肉量(ALM)を身長(m)の2乗で割った、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)の値(kg/㎡)が男性では7.23 kg/㎡以下の場合、女性では5.67 kg/㎡以下であることが必須の条件であり、さらに10mの歩行速度が0.8m/秒未満の場合、あるいは握力が男性では30kg未満、女性では20kg未満の場合にサルコペニアと診断されます(表)。

表:EWGSOPによる診断基準 1)一部改変
四肢骨格筋量(ALM)身体機能(歩行速度)筋力(握力)
ALM÷身長(m)の2乗
男性:7.23 kg/㎡以下
女性:5.67 kg/㎡以下
0.8m/秒以下 男性:30kg未満
女性:20kg未満

EWGSOPの定義による診断手順

 EWGSOPの定義による診断の手順は、図1に示す通り最初に歩行速度を測定し、0.8 m/秒以下の場合は四肢骨格筋量を測定して、診断基準の男性7.23 kg/㎡、女性kg/㎡以下の場合はサルコペニア、高値の場合はサルコペニアではないと診断されます。

 歩行速度が0.8m/秒より早かった場合は、握力を測定し、男性30kg、女性20kgよりも高値の場合はサルコペニアではないと診断され、高値の場合は四肢骨格筋量を測定し、診断基準値以下の場合はサルコペニア、診断基準値以上の場合はサルコペニアではないと診断されます2)

図1:サルコペニアの診断手順(EWGSOP)を示すフローチャート。歩行速度、握力、四肢骨格筋量を測定し、基準値以下の場合はサルコペニアと診断される
図1:サルコペニアの診断手順(EWGSOP) 2)

 アジア人のサルコペニア基準

 EWGSOPの基準はヨーロッパのワーキンググループによってつくられた基準であり、ヨーロッパ人とアジア人では体格や身体機能の違いがあるため、アジアのワーキンググループのAWGSによってアジア人向けのサルコペニアの診断基準がつくられています。EWGSOPの基準とは歩行速度の0.8m/sの基準は同じですが、握力、筋肉量の基準が異なります(図2)。

図2:アジア人向けのサルコペニアの診断手順(AGWGS)を示すフローチャート。
図2:サルコペニアの診断手順(AWGS) 3)

日本人のサルコペニアの診断基準

 EWGSOPの診断基準では欧米人の高齢者の基準値であり、日本人と欧米人では、高齢者であっても体格や生活習慣の違いがあるため、日本人の高齢者に合ったサルコペニアの簡易基準案を国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)が作成しています4)

 65歳以上の高齢者で、歩行速度が1m/秒未満、もしくは握力が男性25kg未満、女性20kg未満である場合で、さらにBMI値が18.5未満、もしくは下腿囲が30cm未満の場合にサルコペニアと診断されます。

 歩行速度、握力が基準値以上であった場合は正常。歩行速度、握力が基準値以下でもBMI、下腿囲が基準値以上であれば脆弱高齢者であるがサルコペニアではないと診断されます(図3)。

図3:日本人にあったサルコペニアの診断簡易基準案を示した図。
図3:日本人に合ったサルコペニアの簡易基準案 4)一部改変

 この簡易基準では身長、体重、握力計、メジャー、ストップウォッチがあれば測定可能であり、診断が比較的容易に行える利点があります。歩行速度の1m/秒は横断歩道を青信号のうちに渡り切ることのできる歩行速度とされています4)

 サルコペニアの統一された診断基準がいまだないため、サルコペニアの診断はどの診断基準を用いて行うか、診断するものの判断によるところが大きいといえます。

参考文献

  1. 特集 フレイル・サルコペニア・ロコモを知る・診る・治す 3.サルコペニアの診断・病態・治療 葛谷雅文 日本老年医学会雑誌2015;52:343-349
  2. サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサス―高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループの報告―の監訳 厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業)高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班 日本老年医学会雑誌 2012;49:788-805 3.
  3. Sarcopenia in Asia Panita Limpawattana Osteoporosis and Sarcopenia volume1,Issue2,December2015,Pages92-97 Fig2 Algorithm of sarcopenia diagnosis presented by AWGS
  4. 第53 回日本老年医学会学術集会記録(若手企画シンポジウム2:サルコペニア―研究の現状と未来への展望―)日常生活機能と骨格筋量,筋力との関連下方浩史 安藤富士子 日本老年医学会雑誌2012;49:195-198 

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