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高齢者糖尿病のケア

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年6月11日 14時43分

高齢者糖尿病看護のポイント

 糖尿病看護の中でも、高齢者に対してはさらに様々な点でのケアが必要となります。高齢者は、年を重ねることで自分の生活リズムを形成しています。そのため、成人期に比べると生活習慣を変えることは難しいとされています。

 今回は糖尿病ケアの柱である「食事療法」「運動療法」「薬物療法」それぞれについて、高齢者について押さえたいポイントについてまとめていきます。

糖尿病の食事療法

 人生の中での楽しみの一つである「食事」。特に年齢を重ねるごとに好みや嗜好はある程度固定されるため、高齢になってから一から食事内容を変えるというのは至難の業です。糖尿病の治療において、「食事療法」は重要な位置を占めています。

 特に高齢者糖尿病の場合には、以下の点に注意しましょう。

食事指導は複数人に対して行う

 高齢者の場合、成人期に比べて独居や二人暮らしなど、少人数で暮らしていることが多いため、患者本人のみに食事指導を行ってもなかなか守ることができないことが多くあります。

 そのため、食事指導を本人以外の家族にも受けていただき、食事について家族のサポートを受けるようにするとよいでしょう。

その日食べる分のみ作るよう指導する

 高齢になるにつれ、料理が億劫となってしまい、一つのおかずをたくさん作ることで食べ過ぎてしまう、スーパーなどでのお惣菜で簡単に済ませてしまう、という傾向が見られます。

 料理を作るということは、買い物に行く、料理をするなど運動にもつながります。そのため、無理をしない範囲でなるべく「その日食べる分をその日に調理する」ように指導していきます。

糖尿病の運動療法

 適度な運動は、血糖値を良好に保つだけでなく、精神的にもリフレッシュできるものです。

 しかし、高齢者だからこそ注意しなくてはいけない点も多数あります。

事前に適した運動量を指導する

 糖尿病と診断された後、少しでも血糖値を下げようとつい運動を頑張ってしまいがちですが、高齢者の場合、過度な運動によって膝や腰の負担となる可能性や、心臓や腎臓にすでに持病がある場合は持病の悪化リスクもあります。

 よって、高齢者に運動療法を勧める場合には、まず医師による問診や心電図などのメディカルチェックを行います。医師より運動療法を行っても良いと判断された後、理学療法士などリハビリの専門スタッフが運動によってかかる体への負荷のチェックを行い、「どれくらいの運動量が適しているか」を把握した上で、持病や膝、腰などに負担をかけない運動方法を指導する必要があります。

低血糖対策を十分に行う

 高齢者は成人期に比べて薬による効果が出すぎてしまうために、低血糖症状が起きやすいといわれています(リンク1参照)。

 よって、運動する際には必ずブドウ糖などの低血糖対策を持ち歩いていくこと、そして運動仲間にも糖尿病があるということを伝え、万が一の時には対応してもらうよう依頼しておくことも大切です。

リンク1 「低血糖の対応と対処法」

糖尿病の薬物療法

 運動療法、食事療法を行っても血糖値が高値持続となった場合、行うのが薬物療法です。しかし薬物療法は、高齢者へは慎重な投与が勧められています。

高齢者は効き目が強く出ることがある

 高齢者糖尿病患者では特に注意しなくてはいけないのが「薬による低血糖症状」です。

 高齢者は加齢による肝機能の低下から、成人期に比べて薬が効きやすい傾向にあります。また、低血糖症状に気づきにくいという特徴も併せてあるため、気が付くと重度の低血糖となってしまっている、ということもあります。よって、新たに薬を開始、また追加する場合には少量から始め、慎重に進めていく必要があります。

薬の管理は家族にも協力を依頼する

 特にインスリン注射の場合、高齢者にとっては注射を行う手技の習得が難しい傾向にあります。製薬会社より、目盛が見やすくするなど、注射を自分で行うにあたって手助けする自助具が開発されていますが、手技の習得自体が難しい場合は、家族にも協力を依頼する必要があります。

 また、本人・家族ともに注射を行うことが難しい場合には、週1回のみのものへ変更し、クリニックにて注射する方法や、あえて内服薬のみにするといったこともできます。

 ケアを行う側として、患者および家族のセルフケア能力を見極め、「長期的に続けられる方法」を探していくことも、大切なことです。

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