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糖尿病性腎症

公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2024年9月 5日 09時56分

糖尿病性腎症とは

 糖尿病性腎症とは、糖尿病三大合併症の一つとされている疾患です。

 糖尿病によって高血糖状態が持続し、腎臓の内部に張り巡らされている細小血管が障害を受けることで発症します。悪化すると腎不全に移行し、血液透析などが必要となることもあります。平成22年度において、全国の新規透析導入患者の43.5%を糖尿病性腎症が占めており、その数は上昇傾向にあります。

糖尿病性腎症の症状 

 糖尿病性腎症は、ある程度進行するまで自覚症状がありません。しかし、糖尿病性腎症を発症すると、尿の中に本来は含まれないはずの尿蛋白(アルブミン)が含まれるようになります。この状態でさらに放置してしまうと、腎臓のろ過機能は低下し続け、血液内に余分な水分や不純物が残りやすくなり、全身のむくみやだるさ、貧血といった症状が現れるようになります。

 最終的には腎臓ではほぼ尿を作り出すことができなくなり、機械によって血液を浄化する「血液透析療法」が必要となってしまいます。

糖尿病性腎症の原因

 糖尿病性腎症の原因、それは「高血糖が持続することによって腎臓内の血管が障害を受ける」ことにあります。血液をろ過して不純物や余計な水分を取り除き、尿として排泄するのが腎臓の主な役割ですが、血液をろ過するために、腎臓には細小な血管が張り巡らされています。糖尿病によって血糖値の高い状態が続くと、腎臓の細小な血管が詰まるなどの障害を受けてしまうため、糖尿病性腎症を発症します。

糖尿病性腎症の診断

二つの検査値 

 糖尿病性腎症の診断には、以下の二つの検査値を利用します。

尿蛋白(アルブミン)

 尿蛋白(アルブミン)とは、文字通り尿に含まれる蛋白質のことです。尿中に尿蛋白が含まれているかどうかは、早期腎症の発見に最も重要な指標となっています。

 本来、蛋白質は腎臓のろ過機能によって再吸収されるため、本来は尿中に排泄されることはありません。しかし、腎症が進行し、ろ過機能が低下してくると、尿中の蛋白質を再吸収しきれず、微量が尿の中に残ったままとなってしまいます。

血中クレアチニン

 血中クレアチニンとは、血液の中にふくまれているクレアチニンという成分を見る検査値です。クレアチニンは不純物の一つで、腎臓機能が低下して不純物を取り除けなくなると血液の中に残るため、腎機能を見るときに利用する検査値です。

 この血中クレアチニンの数値を年齢や性別によって計算し、腎臓のろ過機能がどれほど保たれているかを見る「GFR(糸球体ろ過値)」という数値もあります。

糖尿病性腎症の分類

 糖尿病性腎症は、上の二つの検査値によって表に示すとおり第1期腎症前期、第2期早期腎症期、第3期顕性腎症期、第4期腎不全期、第5期透析療法期の5つの病気に分類されます。

表1:糖尿病腎症病期分類
病期尿蛋白(mg/gCr)eGFR(ml/分/1.73m2
第1期
腎症前期
30未満
(正常値)
30以上
第2期
早期腎症期
30~299
(微量アルブミン尿)
30以上
第3期
顕性腎症期
300以上
(顕性アルブミン尿)
または持続性蛋白尿(0.5g/gCr以上)
30以上
第4期
腎不全期
eGFRが30未満ならば、尿蛋白の値は関係なく腎不全期 30未満
第5期
透析療法期
透析療法により変動 透析療法により変動

糖尿病性腎症の治療

 糖尿病性腎症は、それぞれの病期によって治療方法が異なります。それぞれの病期による治療を表にまとめました。

表2:糖尿病性腎症の治療の全体図
血糖値血圧管理食事管理運動
第1期
腎症前期
血糖コントロール 血圧コントロール 過剰なカロリー摂取を避ける 原則は糖尿病の運動療法
第2期
早期腎症期
厳格な血糖コントロール 血圧管理
(必要に応じて降圧剤)
食塩の摂取量を控える 原則は糖尿病の運動療法
第3期
顕性腎症期
厳格な血糖コントロール 厳格な血圧の管理 食塩1日3g以上6g未満
蛋白質は体重1kgあたり1g以下を目標
軽度の運動制限
第4期
腎不全期
血糖コントロール 厳格な血圧の管理 食塩1日3g以上6g未満
蛋白質は体重1kgあたり0.6~0.8g
運動制限あり
第5期
透析療法期
血糖コントロール 血圧管理 透析方法にあった食事管理 軽度の運動制限

糖尿病性腎症の看護・ケア

 糖尿病性腎症は、症状が進行すると腎不全状態となり、透析治療が必要となってしまいます。国も糖尿病性腎症の悪化による透析患者の増加を危惧しており、糖尿病患者に対し透析防止の指導を行うことでの指導料が保険加算されるようになりました。

 よって、糖尿病と診断された時点で、今後放置してしまうと腎機能が悪化してしまう恐れがあるということ、そして初期段階では症状が出ないからこそ、定期的に受診し、腎機能が悪化していないかどうかを確認していくことの大切さを指導していくことが、大切です。

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