健康長寿ネット

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訪問介護とは

公開日:2019年2月12日 14時55分
更新日:2023年12月28日 12時57分

訪問介護(ホームヘルプサービス)とは1)2)

 訪問介護とは、自分や家族だけで日常生活を営むことが難しくなった要介護者に対して、介護福祉士やホームヘルパーが自宅に赴き、入浴、排泄、食事等の介護、掃除、洗濯、調理等の援助、通院時の外出移動サポート等の日常生活上のお世話を行うサービスです(ただし、「夜間対応型訪問介護」にあたるものを除きます)。訪問介護を利用できるのは、居宅で生活を送る、「要介護」と認定された人です。ここでいう「居宅」には、自宅のほか軽費老人ホームや有料老人ホームなどの居室も含みます。

 家族介護の機能が衰えている今、その役割は、益々大きくなると言えるでしょう。人間にとって「家庭」とは、生活を営む最も基本となるところです。年老いて、自分の力だけで生活することが難しくなったとしても、長く生活していた空間や家族はなにものにも代え難く、最後まで住み慣れた生活をしたいということは、多くの方が望んでいることでしょう。特に高齢になると、環境に適応する能力は衰えます。できるだけ住み慣れた場所で生活を営むことは、最も自然な形なのかも知れません。

訪問介護(ホームヘルプサービス)の対象者

 介護保険により訪問介護(ホームヘルプサービス)を受けることが出来る方は、要介護1以上の認定を受けている方です。

 要支援1あるいは要支援2の認定を受けている方は「介護予防訪問介護」という形でサービスを利用できます。ただし、一部の利用制限もあります。

訪問介護のサービス内容3)4)

 訪問介護のサービスは、大きく分けて3種類あります。「生活援助」「身体介護」「通院時の乗車・降車等介助」です。

生活援助

 生活援助は、日常生活の援助であり本人にかわり身の回りのお世話を中心とするサービスです。具体的には調理、掃除、洗濯、衣類の整理、生活必需品の買い物、薬の受け取りなどを行います。

身体介護

 身体介護は、利用者の身体に直接接触して行われるサービスです。食事介助、衣服の着替え援助、入浴介助、トイレ誘導やオムツ交換などの排泄介助、身体の清拭、体位変換など、利用者の体に直接触れて援助を行います。その利用者の状況に応じて、自立援助の目的で見守り、専門的な相談、指導も受けられます。

通院時の乗車・降車等介助

 通院時の乗車・降車介助は、いわゆる「介護タクシー」とも呼ばれています。要介護者である利用者に対して自宅から通院等の際に、訪問介護員(ホームヘルパー)等が、乗車、移送、降車の介助サービスをします。また、乗車前もしくは降車後の屋内外における移動等の介助、または通院先、外出先での受診等の手続き、移動等のサービスを行います。

 ただし、費用は自己負担となり、要支援の方は利用できません。介護保険による通院・外出介助には行える範囲が限られているため、事前に確認することが必要です。

 また、移送にかかる経費(運賃)は介護保険の対象ではなく、別途利用者が負担します。

訪問介護で頼めないサービス

 訪問介護は、要介護者が出来ないことを援助することが基本です。家政婦さんやお手伝いさんとは異なるため、頼めることに制約があります。あくまでも、利用者本人に対する援助が中心となるので、本人以外の家族への支援や、ホームヘルパーが援助しなくても日常生活に支障がない行為、日常的な家事の範囲を超える援助等は介護保険の給付対象となりません。

 具体的には、本人以外の食事や買い物・洗濯、来客の対応、ペットの世話や庭の手入れ、使用していない部屋の掃除や片づけ、金銭管理や娯楽のための外出援助、褥瘡や創部の処置、ヘルパーによる薬の援助、カテーテル類の管理などはサービスの対象外となります。

 痰の吸引や経管栄養は、介護福祉士や一定の研修を受けた介護職員等は、一定の条件のもとで行えるようになりました5)

 また、介護保険から給付されるサービスである訪問介護以外に、地域のボランティアによるサービスなど、多様なサービスを組み合わせることによって自立した生活が可能になる場合もあります。このようなサービスは地域によって状況は様々ですから、地域のサービスに精通したケアマネジャーに相談してみるとよいでしょう。

訪問介護の費用3)

 訪問介護の費用は利用時間が重要となってきます。訪問介護を依頼する時は、「生活援助40分」などのように内容と時間を決めて依頼することになります。1日に複数回頼むことも可能ですが、時間のかかる「調理」は配食サービスを利用し、訪問介護では入浴介助をお願いするなど、時間を有効に活用しましょう。

 また、事業者選びの際には、サービスの内容、費用、適切なサービスが提供されているかなど事前に把握し、複数の事業者を比較検討した上で選ぶとよいでしょう。

訪問介護の1回当たりの自己負担額(1割の場合)の目安

 訪問介護の利用料の目安は表1の通りです。利用負担は原則1割ですが、一定以上の所得のある者の場合は2割又は3割負担となります。

表1:訪問介護の1回当たりの自己負担額(1割の場合)の目安(2019年10月1日時点)6)7)
内容サービス提供時間自己負担
身体介護 20分未満 166円
身体介護 20分以上30分未満 249円
身体介護 30分以上1時間未満 395円
身体介護 1時間以上 577円(30分増す毎に83円加算)
生活援助 20分以上45分未満 182円
生活援助 45分以上 224円
通院時の乗車・降車等介助 1回 98円
  • 初回月内にサービス提供責任者が自ら訪問介護を行う場合など1月につき200円が加算されます。
  • 利用者やその家族から緊急に訪問介護の要請があり、ケアマネジャーが認めて身体介護を行った場合、1回につき100円が加算されます。
  • 早朝・夜間(6時~8時、18時~22時まで)は25%増し、深夜(22時~6時まで)は50%増しとなります。
  • 事業所と同一敷地内または隣接する建物に居住する人の場合、自己負担額×90%(10%減算)、ただし同一敷地内または隣接する建物に居住する利用者の人数が1か月あたり50人以上の場合は自己負担額×85%(15%減算)となります。また、上記以外の範囲に所在する建物に居住する人で、その建物に居住する利用者の人数が一か月あたり20人以上の場合は、自己負担額×90%(10%減算)です。
  • 身体介護に引き続き生活援助を行う場合には20分から起算して25分増すごとに66円追加されます(70分以上を限度とする)(表2)。
  • 事業所によって介護職員処遇改善加算(現行加算)、介護職員等特定処遇改善加算(特定加算)が加わります。なお、介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算は支給限度額の対象外です。
表2:身体介護に引き続き生活援助を行う場合の費用の目安6)7)
内容サービス提供時間自己負担
身体介護に引き続き生活援助を行う場合 20分以上 66円
身体介護に引き続き生活援助を行う場合 45分以上 132円
身体介護に引き続き生活援助を行う場合 70分以上 198円

訪問介護サービスを提供する事業所の職員体制

 訪問介護サービスを提供する事業所の職員体制は、身体介護中心型、生活援助中心型のいずれも人員基準は同じです。訪問介護の事業所には通常、以下の職員が配置されています。

サービス提供責任者(サ責)

 サービス提供責任者(サ責)は、訪問介護員、サービス利用者のパイプ役となります。訪問介護サービスの利用申し込みの調整、訪問介護計画書の作成、訪問介護員(ホームヘルパー)に対して具体的援助の指示、訪問介護員の業務管理、訪問介護員に対する研修、技術指導などを行います。

 サービス提供責任者(サ責)は、常勤で訪問介護サービス利用者40人に対して1人以上とし、介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、旧介護職員基礎研修修了者、旧訪問介護員(ホームヘルパー)1級、または旧2級過程修了者のいずれかの資格を必要とします。ただし、利用者数が40人を超えるごとに1人以上追加配置しなければなりません。

訪問介護員(ホームヘルパー)

 訪問介護員(ホームヘルパー)は、自宅を訪問し、生活援助、身体介助などを行います。介護福祉士、または訪問介護員が、常勤換算で2.5人以上配置すること、となっています。

常勤管理者

 常勤管理者は常勤で専ら管理の職務に従事することとなっています。

参考文献

  1. サービス編  介護保険の解説 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 厚生労働省 訪問介護の報酬・基準について P1-27(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 牛越博文監修:図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本. 講談社, 東京都, 2018年, P74-75
  4. 一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会:高齢者住まいアドバイザー検定R公式テキスト. 第2版, ブックウェイ, 兵庫県, 2018年, P86
  5. 江田章江ほか編:困りごとから探せる介護サービス利用法[改訂版], 社会福祉法人東京都社会福祉協議会, 東京都, 2017年, P55,P61
  6. 厚生労働省 令和元年度介護報酬改定について(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  7. 介護報酬 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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