健康長寿ネット

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「尊厳の保障」へ社会貢献のライフワーク

公開日:2020年2月28日 09時00分
更新日:2020年2月28日 09時00分

江澤 和彦(えざわ かずひこ)
医療法人博愛会・医療法人和香会・社会福祉法人優和会 理事長、日本医師会理事


 平成30年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.25歳、女性の平均寿命は87.32歳であり、毎年伸びを示している。2007年生まれの日本人の2人に1人は107歳に到達するという研究報告もある。私の生まれた1961年の平均寿命は、男性66.03歳、女性70.79歳であったことを考えると隔世の感がある。日本老年学会(老年関連7学会で構成)と日本老年医学会からは、高齢者の身体状況や活動能力を科学的に検証した結果、10~20年前と比べて5~10歳の若返り現象が見られ、高齢者の定義を65歳以上から75歳以上に見直すべきとの提言もなされた。実際に、新体力テストや歩行速度調査等も同様の結果を示し、2012年度の「団塊の世代の意識に関する調査結果」(内閣府)においても、高齢者を65歳以上とした回答は全体の1割程度であった。

 自他ともに高齢者の若返りが認識される一方で、平均寿命と健康寿命の差が男性約9年、女性約12年となっている。近年、健康寿命の延びが平均寿命の延びを上回っているが、依然両者の開きは大きい。令和時代は、2039年に死亡者数166万人のピークを迎え、多くの方が亡くなられる「多死時代」であると共に、健康寿命の延伸と介護予防を確立する「予防時代」なのである。

 世界に類を見ない少子高齢化、生産年齢人口の減少をきたす我が国において、就労をはじめとする高齢者の社会参加の重要性は極めて高くなっている。男性就業率(2018年)は、15~59歳:84.2%、60歳以降:42.6%であり、先進国で最も高い水準にある。女性就業率(2018年)も15~59歳:71.1%と先進国中第3位、60歳以降:23.8%は同第2位と高い水準にある。また、「平成26年高齢者の日常生活に関する意識調査」(内閣府)の結果でも、60歳以上の8割が70歳以降まで働くことを希望している。もちろん、年金収入のみでは生活が立ち行かないことも背景にあると推測されるが、勤勉な日本人の特性を表している。

 我が国の生産年齢人口である15~64歳人口比率のピークは1990年の69.7%であるが、生産年齢人口を74歳まで延伸と仮定すると、2025~2040年にかけては、ピーク時の1990年の比率と同等となる見込みである。さらに、2055年~2115年にかけても、同様に2005年の生産年齢人口比率と同等の予測となり、高齢者の就労が我が国の超高齢社会における切り札であることは間違いない。

 令和時代は「多死時代」であることを前述したが、私は長年ライフワークとして「尊厳の保障」に取り組んできた。この世に『命』ほど価値観の高いものはなく、誰もが人生の最期まで尊厳が保障されることを命題として、如何に社会に貢献出来るかに精力を注いできたつもりである。たとえ今は寝たきりや意識障害であっても、誰しも普通の暮らしをしていたお元気な頃があり、仕事に精を出したり、家族との団らんを過ごしたりされていたはずである。私たちは、そこに想いを馳せながら寄り添うことが肝要である。心が通じ合うことで、治療効果も介護効果も増大する。今度のお花見も来年のお正月も確実に約束出来ない方々が世の中には大勢いらっしゃる。今度ではなく、今出来ることを実行することが求められている。急性期から慢性期、介護に至るまで医療、介護の究極のゴールは、その人らしい暮らしの実現や穏やかな大往生を創造することにある。お一人おひとりの「尊厳の保障」、これこそが医療人の最大の使命であると確信している。「予防時代」となる令和時代に健康寿命が延伸し、我が国が健康長寿大国を極めることを期待するが、不幸にして、障害や認知症、要介護状態をきたしても、誰もが誇りをもって暮らせる共生社会でなくてはならない。誰もが排除されない包摂的社会の構築が求められている。

 私は、公私共に、社会貢献を生きがいとして生涯過ごしたいと考えており、自分が健康である限り、仕事に従事出来る限り、これからも変えるつもりはない。寿命は自ら決められないが、人生や生き方は自分で決めることが出来る。私たちが診療やケアを施してお元気になられた患者さんや利用者さんの笑顔は鳥肌が立つほど嬉しいものである。被災され避難所で暮らす方や公共交通機関で急病となられた方にも多々関わらせて頂いたが、微力ながら少しでもお役に立ちたいという想いは私の人生の原動力となっている。

 医療法人の経営者をはじめ、行政の公共活動や業界の役員も数多く経験させて頂いているが、国民の幸福に資するかどうかで物事を判断するようにしている。全ての共通点は、自らを犠牲にすることがあっても如何に社会に貢献出来るかということと、あらゆる局面において、全力投球で向き合うことである。仕事が多忙で休みが取れないことや、睡眠時間が少ないことをストレスに感じない体質にも恵まれているが、いつ人生が終了しても悔いを残さないようにその都度対処してきたつもりであり、今後も同じ生き方を選択したい。人々の笑顔や幸せは、私にとって、この上ない喜びであり幸福を感じて生きる力の源と言っても過言ではない。この世に生を受けた喜びを噛み締めつつ残された人生を感謝と共に全うしたいと思っている。ありがとうの感謝の意をもって人生100年時代を生きることは至福の人生に他ならない。

著者

写真:著者の江澤和彦先生
江澤 和彦(えざわ かずひこ)
現職は医療法人博愛会・医療法人和香会・社会福祉法人優和会 理事長。救急医療・重症管理等の内科臨床に意欲的に取り組むと共に、現在も専門である関節リウマチの臨床や感染管理に積極的に携わっている。平成8年現職就任以降、地域づくりを目指して、多数の医療介護施設を開設し、複数の病院、介護施設、サービス付き高齢者向け住宅、訪問・通所事業所等を運営し、特に、設計・建築、外装・内装デザイン、補助具開発も手掛ける。「社会貢献」を信条とし、社会保障制度・地域包括ケア・地域医療構想・医療保険・介護保険・診療介護報酬等に関する数多くの講演や執筆を行い、ライフワークである「尊厳の保障」に精力的に取り組んでいる。
最終学歴
岡山大学大学院医学研究科卒業(医学博士取得)
資格
労働衛生コンサルタント(保健衛生)、日本リウマチ学会リウマチ指導医・専門医
賞罰
厚生労働大臣表彰(2012年)
現役職
日本医師会 常任理事、日本慢性期医療協会 常任理事、日本介護医療院協会 副会長、慢性期リハビリテーション協会 副会長、日本医療法人協会 理事、日本リハビリテーション病院・施設協会 理事、全国老人保健施設協会 常務理事、全国デイ・ケア協会 理事、厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会/介護保険部会)臨時委員、厚生労働省 社会保障審議会(障害者部会)臨時委員 他

著書

  • 知識・技能が身につく実践・高齢者介護 第1巻 検証!改正後の介護保険『療養病床再編と老人保健施設』(共著 ぎょうせい)2008年発行
  • 医療経営白書2008年度版『療養病床生き残りへの選択―医療・介護療養病床、介護療養型老人保健施設の経営方策』(共著 日本医療企画)
  • 認知症診療の進め方-その基本と実践-(共著 永井書店)2010年発行
  • 高齢者ケア実践事例集2010年10月「尊厳の保障を目指してーユニットケアによる個を尊重したケアの実現―」(第一法規)
  • シリーズ介護施設 安心・安全ハンドブック5『苦情対応と危機管理体制』(株式会社ぎょうせい)2011年発行
  • 高齢者のための薬の使い方―ストップとスタート―(共著 ぱーそん書房)2013年発行
  • 感染制御標準ガイド(共著 じほう)2014年発行 他

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