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高齢者の色覚の老化

公開日:2019年6月21日 09時00分
更新日:2019年6月12日 10時18分

色覚とは

 色覚とは色を正確に判断する感覚のことです。先天的に色覚に異常を来す方がいますが、加齢とともに後天的に色覚が変化してくる方もいます。

色覚の仕組み1)

 ものを正確にみるためには、視力、視野、色覚の3つの機能がそろっている必要があります。いずれも目の機能ではありますが、ここでは色覚の仕組みについてお伝えします。

 人の目は、カメラの仕組みとよく似ています。カメラのレンズの役割をする「水晶体」を通って目の中に入った光は網膜に届きます。網膜はカメラでいえばフィルムに焼き付ける役割があります。網膜には「視細胞」とよばれる細胞があり、ここで見えているものの形や色を判断しています。

 ものの色を見分けているのは、視細胞の中にある「錐体」とよばれる細胞です。錐体は赤を感じ取るL錐体、緑を感じ取るM錐体、青を感じ取るS錐体の3種類に分かれます。これら3種類の錐体が無いか、いずれかの機能が十分では無い場合、色の見え方に異常を来すことになります。

先天的色覚異常と後天的色覚異常

 色覚の異常には、先天的なものと後天的なものがあります(表1)。

表1:色覚異常の種類2)より作成
先天的な色覚異常 遺伝 3つの錐体のいずれかの機能不全
後天的な色覚異常 加齢、白内障 水晶体が加齢とともに黄色く変色することによって起こる
網膜疾患 網膜にある錐体が障害を受けて機能不全となる
緑内障 眼内の圧力が高くなり網膜にある神経節細胞が障害を受けて色覚障害を生じる
視神経疾患 視神経が障害を受けると錐体が正常に機能していても色の情報が上手く伝わらなくなる
大脳疾患 色を判断する脳の一部に障害を受けて色を判断できなくなる(モノクロに見える)

 一般的に、色覚に何らかの異常を来している人は、男性の20人に1人、女性の500人に1人いるといわれています2)

 しかしこれは、先天的な色覚異常を持つ人の人数であり、後天的な色覚異常の人は含まれていません。後天的な色覚異常の代表的な要因として挙げられるのが、白内障による色覚の変化です。

加齢による後天的な色覚異常

 厚生労働省が公表した「平成29年(2017年)患者調査」によると、平成29年(2017年)の白内障の推計患者数は外来と入院を併せて9万人以上いるとされています3)

 白内障は、何らかの原因により、カメラのレンズの役割をしている「水晶体」が、黄色くにごってくる病気です。白内障の原因としては、先天的、外傷、アトピー、薬剤、放射線などがあり、ほか他の目の病気(炎症)に続いて起こるものもあります。しかし、もっとも多い原因は加齢によるものです。

 白内障の初期の頃はなかなか症状が出にくいのですが、早い人では40歳代からすでに白内障が始まっている人がいます。80歳代になるとほぼ100%の人が、程度の差があるとしても、白内障になっているといわれています4)

 その他の加齢による色覚異常は、目の病気あるいは脳の病気によって引き起こされています。では、後天的に色覚に異常を来すと、私たちの生活にはどのような変化が起こるのでしょうか。

色覚異常による影響

 私たちの目や脳は、色を感じ取るときに3つの要素で判断します。色相、明度、彩度です。

  • 色相:赤、青、黄色、緑など、色の種類のこと
  • 明度:明るさの度合いのことで、もっとも明度が低いのが黒、もっとも明度が高いのが白
  • 彩度:鮮やかさの度合いのことで、白や黒を含む色は彩度が低く、白や黒を含まない色は彩度が高くなる

 加齢による色覚異常は、ある日急に起こることは少なく、何らかの病気が進行するにつれて色覚の変化も強くなってきます。例えば白内障の場合、ごく初期のころであれば水晶体の色の変化も小さいので、「見え方が違う」ことには気付きません。しかし白内障が進行してくると、徐々に水晶体のにごりが強くなり、物の見え方の変化に気付くようになります(図1)。

図1:正常な見え方と白内障の人の見え方の違いをあらわす図。白内障の人の見え方は正常な見え方に比べて濁ったような見え方であることをあらわす。
図1:正常な見え方と白内障の人の見え方の違い

色覚の老化と日常生活での注意点

 白内障が進行してくると、常にサングラスをかけているような状態になります。そのため、明るいところでは全体的にうっすらと色がかかったように見えますが、暗いところでは色の変化が分かりにくくなってしまいます。

 白内障に限らず、加齢による色覚異常は、急激に変化するわけではありませんのでなかなか気付きにくいのですが、日常生活の中で注意する点がいくつかあります。

 例えば、段差が見えにくくなることです。少し暗いところでは、階段の一番下の段が影のように見えてしまい、境目が分かりにくくなります。すると階段を踏み外してしまい、転倒事故につながってしまいます。

 また、ごく薄い色が識別できにくくなるため、例えば炎の先端が見えにくくなることがあります。炎の先端は非常に高温となっているため、衣服に燃え移ったり、やけどをしてしまうことがあります5)

 加齢による色覚の老化は徐々に進行し、その原因となっている病気によって治療法が異なります。少しでも色の見え方の変化に気付いたら、早めに専門医を受診することをお勧めします。例えば、黒と紺の靴下を混同してしまう、あるいは薄いグレーのつもりで薄いピンクを手に取るようなことがあれば、色覚の老化が始まっているかもしれません。

参考文献

  1. 東京都カラーユニバーサルデザインガイドライン 東京都福祉保健局(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 参天製薬 色覚異常とは(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 総務省統計局 平成29年患者調査 上巻(全国)推計患者数,病院-一般診療所・入院-外来 × 傷病分類別(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 日本眼科学会 目の病気 白内障(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 参天製薬 後天的色覚異常(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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