健康長寿ネット

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運動機能の老化

運動機能とは

 運動機能を若年者と比較すると、ほとんどの高齢者は低下していきます。しかし、性別や日常活動の程度などによって、低下する程度や低下する速度には、大きな違いが出てきます。同じ年齢であってもマスターズなど世界的なスポーツの大会などに参加し、記録を出す人もいるのが良い例でしょう。また、病気の有無によっても機能低下の速度は異なり、運動機能は最も個人差が大きく出るところであると考えられています。

運動機能の老化と原因

 運動機能が老化する原因は、形態学的変化と運動学的変化、循環器変化、神経感覚機能の変化に分類されます。

形態学的変化:
身長の変化や、円背などに伴う姿勢の変化、骨や関節の変化
運動学的変化:
筋力、柔軟性、俊敏性、平衡性、歩行動作、リズム運動(タッピング)の変化
循環器変化:
血圧や脈拍数を含む循環機能、肺活量を含む呼吸機能の変化
神経感覚機能の変化:
知能や感覚の変化

 これらの変化により、運動機能は徐々に老化していくことになります1)

関節・骨の老化と原因

運動機能の老化により高齢女性がつまづく様子を表すイラスト。高齢者の運動機能の老化の原因は加齢に伴う筋力低下、社会活動性や体力の低下、骨密度や骨量の低下などが要因。

 人は誰でも高齢になると、筋肉を構成する筋繊維数が減少し、さらに筋繊維が萎縮してしまうことにより、筋肉量が低下します。加齢による筋変化は、筋繊維そのものの変化よりも、筋肉量の低下が目立ちます。加齢による筋力低下の本質は、筋の萎縮によるものです。

 成人における筋肉の重量は、体重のおよそ40%です。もちろん個人差はありますが、20歳ころの筋肉量を基準に考えると、70歳くらいでは男女ともに30%の低下がみられることから、10年間でおよそ6%ずつ、低下していることになります。

 高齢者になると、社会活動性や体力が低下します。また。過去に病気やケガの経験があると、それがきっかけとなり、あまり動かない生活へと移行しやすくなります。その結果、活動性はさらに低下し、筋肉の萎縮を急速に進行させてしまうことがあります。しかし、適切な運動を続けていれば、高齢者であっても筋力の回復を目指すことはできます。

 骨では、加齢により骨吸収が増加するとともに、骨形成が減少することで、徐々に骨密度や骨量が低下し、場合によっては骨粗鬆症を発症します。人の骨量は、10歳代後半から20歳代に最大となります。そこから40歳代くらいまでは、骨量を維持できていますが、40歳代後半から50歳代くらいの間に減少し始めます。特に女性の場合、閉経の時期を境目として、骨量の減少が著しくなります。閉経を迎えるとホルモンバランスが不安定になります。このうちエストロゲンと呼ばれるホルモンは骨形成を促進する働きがあるため、エストロゲンの分泌量が急激に減ることで、骨形成が骨吸収に追いつかなくなり、骨量の減少を招きます。

 この変化は、閉経後10年以上経過した女性や、40歳代以降の男性にもみられ、徐々にではありますが、骨量の減少から骨粗鬆症を起こしやすくなります。

 骨量を増加させる運動としては、ジャンプや縄跳びといった瞬発力を高める運動が有効であると言われています。しかし高齢者の場合、安全性を考慮し、一般的には全身の骨や筋肉を程よく動かす「有酸素運動」が効果的です。具体的には、ウォーキングやジョギング、水泳などがあります。

 また、加齢による関節での変化としては、関節軟骨の変形があります。関節の軟骨が徐々にすり減ってくることで、関節の形や動きが変化する「変形性関節症」を起こしやすくなります。これにより、関節の痛みや、動きに制限がでることで、日常の活動性が低下し、さらに関節の動きを悪くします。特に、膝関節や股関節の痛み、動きには注意しましょう。関節軟骨の変性や変形は、人によっては20歳代から始まり、60歳代以上になると、膝関節、股関節、肘関節や手指の関節の80%で認められるといわれています。

運動機能低下を示すフレイル・サルコペニアとは

 フレイルとは「加齢に伴い身体の予備能力が低下して健康障害を起こしやすくなった状態」、サルコペニアとは「加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下」と定義されています。

 サルコペニアはEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)によると、「身体機能」の低下を含めて3段階に区分すると以下のよう規定されます。

プレサルコぺニア:
単なる「筋肉量」の低下
サルコぺニア:
「筋肉量」の低下に「筋力」または歩行速度などの「身体機能」の低下がみられる
重症サルコぺニア:
「筋肉量」も「筋力」も「身体機能」も低下した状態

 サルコペニアの原因は運動量の低下や加齢だけではなく、何らかの病気を発症したり、栄養不足に陥ることにありますので、筋肉量を維持、増進することが、サルコペニアの予防につながります。そのためには、適度な運動と、適切なアミノ酸補給がポイントです。さらに、ビタミンDなどを補充することで、筋力の維持につながります2)3)

 フレイル、サルコペニアについて詳細に解説したページがありますので、参考ください。

リンク1:フレイル(虚弱)

リンク2:サルコペニア

参考文献

  1. 老化による機能低下 理学療法科学(PDF:3MB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. サルコペニア、フレイルとは 食彩だより第40号 東京医科歯科大学医学部付属病院臨床栄養科(PDF:733KB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 3.高齢者 厚生労働省(PDF:1.2MB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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