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酸化ストレス

公開日:2016年7月25日 04時00分
更新日:2019年2月 1日 18時25分

酸化ストレスの定義

 酸化ストレスとは、「酸化反応により引き起こされる生体にとって有害な作用」のことで、活性酸素と抗酸化システム(抗酸化物質)、抗酸化酵素とのバランスとして定義されています1)。ここでいう「酸化」とは、何らかの分子に酸素原子が結合することです。

 地球をとりまく大気には、酸素が約21%含まれています。私たちは呼吸をすることでこの酸素を取り入れ、食品を食べることにより糖質、脂質、たんぱく質などの栄養素をからだの中に取り込んでいます。取り込んだ栄養素から、私たちのからだの働きの元であるエネルギーをつくるためには、栄養素を燃やすこと、すなわち"酸化"が必要なのです。

 一方で、酸化は体の中の全体で起こっているため、酸化によって細胞が傷つけられることがあります。これが酸化ストレスです。

酸化ストレスの原因・仕組み

 発生した酸化ストレスに対し、抗酸化能(活性酸素を除去する能力)が追い付かない状況になると、酸化ストレスがたまっていくことになります。その原因には、虚血や心理的・肉体的ストレスといった病気によるもの、紫外線や放射線・大気汚染・タバコ・薬剤・金属・酸化された食べものなどをとるなどの日常生活の要因によるものがあります。また、過度な運動も酸化ストレスを高める要因の一つです2)

 摂取した栄養素は身体の中で分解され、細胞の中にあるミトコンドリアの酸化反応により、エネルギー源に変換されます。この過程で過剰に発生した活性酸素によって酸化ストレスは亢進し、DNAやたんぱく質といった生体成分を酸化させているのです。酸化されたDNAやたんぱく質の中には、血中や尿中に出てくるものもあるため、血液検査や尿検査で分かることがあります。

活性酸素とは

 活性酸素とは好気性生物が酸素を消費する過程で発生する副産物のことです。体に取り込まれた栄養素の多くは分解され、グルコース(糖の一種)や脂肪酸となり、細胞の中にあるミトコンドリアで酸化されます(酸化的リン酸化反応)。この時、酸素は他の分子との間で自身がもつ電子をうけわたすことで不安定となり、活性酸素と呼ばれる物質に変わります。活性酸素は、元の物質である酸素よりもずっと、他の分子を酸化する能力が高いという性質をもっています。

 活性酸素の多くは、それを除去する酵素や抗酸化剤で消去されます。この仕組みを「酸化ストレスの防御系」と呼びます。

 しかし、過度の運動や運動不足、偏った食事、喫煙などの不健康な生活習慣、あるいは慢性炎症などによって、活性酸素の生成と消去のバランスがくずれると酸化ストレスが生じ、老化や老年病の原因となる可能性があります(図)。

図:活性酸素の老化への影響を示す図。
図:活性酸素の影響

 一方、活性酸素はこれまでに述べたような有害な作用だけではなく、体にとって有用なものでもあります。例えば感染がおこった時、好中球などの炎症細胞からつくられる活性酸素は、病原微生物を殺すのに役立っています

活性酸素と老化の関係

 活性酸素によって細胞が攻撃されると、細胞膜の脂質が酸化し、細胞で行われる「栄養と老廃物の出し入れ」が、スムーズに行えなくなります。また、細胞の核が損傷すると細胞が死滅したり、LDLコレステロールが酸化されると血管の老化を促進します。このように活性酸素は細胞を傷つけたり死滅させることによって、老化を促進するということが分かっています。

酸化ストレスによる症状・病気

 酸化ストレスが高い状態が続くと、私たちの体を構成する全てのDNAやたんぱく質、脂質、糖質が酸化されていきますが、現在ではさまざまな病気において、これらの酸化ストレスにより変化した分子が、蓄積していることがわかってきました。例えば糖尿病では、酸化された糖とたんぱく質が結合し、異常な糖化たんぱく質が増えていることがわかっています。また、動脈硬化を起こした血管では、酸化された脂質が蓄積し、血管の内腔が狭くなり、血液が流れにくくなっています。

 さらに、アルツハイマー病やパーキンソン病など、高齢者に多い脳の病気でも、酸化したたんぱく質などが蓄積していますし、酸化ストレスによって細胞が損傷を受けると、その細胞はやがてがん化します。

 このように、強い酸化ストレスにより酸化された生体内の分子は、さまざまな病気の原因となっている可能性があるのです。

活性酸素の除去

 近年、様々なメディアで「活性酸素の除去」が取り上げられています。しかし、活性酸素は必ずしも身体にとって有害なわけではありません。場合によっては、有益に働いていることもあります。

 例えば白血球は、活性酸素の作用によって感染防御の重要な役割を果たしています。活性酸素にはその他にも、血管を弛緩させ末梢の血流を確保する役割や、細胞の分化やシグナル伝達にも関係しています。

 ですから、活性酸素の除去に目を向けるよりも、不要な活性酸素の攻撃力を減らすことや、高齢になると減ってくる「抗酸化力」を高めることの方が、重要であると考えられています。

参考文献

  1. 酸化ストレスとは? 用語解説 活性酸素 酸化ストレス フリーラジカル 日本老化制御研究所(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 活性酸素と酸化ストレス 厚生労働省e-ヘルスネット (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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