健康長寿ネット

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免疫系の老化

免疫系とは

 「免疫」とは、菌やウイルスなどの微生物、あるいは「異物」とよばれる自分の体には元々ないもの(非自己)から、自分たちの体(自己)を守るしくみです。「免疫機能」のことを「生体防御機能」ともいいます。

 免疫系には自然免疫と獲得免疫があります。

 自然免疫とは、生まれつきに持っている免疫系のことを言い、例えば、好中球やマクロファージなどの「白血球」が、からだに侵入してきた微生物を攻撃する働きにより成立っています。

 獲得免疫とは、さまざまな抗原(病気のもととなるもの)を体に取り込むことで獲得していく免疫のことをいい、自然免疫では対処できなかった場合に発動します。過去に体の中で起こった免疫反応の特徴を、特定の細胞が記憶することによって新たな免疫機能を獲得し、次に同じ抗原が体の中に侵入したとき、防御反応をするようになります。分かりやすい例をあげるなら、予防接種(ワクチン)はこの免疫機能を上手に応用したものです。また、花粉症などでも知られるアレルギー反応も、免疫反応が原因となって現れる症状の一つです。

 しかし、免疫機能も、運動能力(体力)、視力、聴力といった能力などと同様に、年齢とともに衰えていきます。この機能が低下すると、若い頃は簡単に治ってしまう病気でもなかなか回復しない、あるいは抗生物質を投与しても効き目が悪い、ということが起こります。

加齢による免疫機能の変化

高齢者夫婦が体調を崩している様子を表すイラスト。加齢により免疫力が低下し、免疫機能が老化すると、感染症にかかりやすくなり、重症化もしやすくなります。

 免疫機能は加齢とともに低下しますが、若い頃と変わらない免疫機能を保つためには、免疫のしくみを理解することが必要です。

 これまで行われた研究により、加齢によって低下する機能は、自然免疫系よりも獲得免疫系の方が著しいことがわかってきました。一説によると、獲得免疫の能力は、20代頃がピークであり、40代ではその半分に低下するとされています1)

 こうした免疫力の低下には加齢以外にも、ストレスや環境が影響を及ぼすといわれています。厚生労働省の調査によると、高齢者のストレスの第一位は「自分の健康状態に対する不安」となっており、「病は気から」という考え方のもと、ストレスを貯めないことが健康長寿の秘訣と言えるのかもしれません。

免疫機能の老化の原因

 免疫機能の老化にはどのような原因が考えられるのでしょうか。

 免疫系には顆粒球、マクロファージ、樹状細胞、リンパ球(T細胞、B細胞がある)など、たくさんの細胞が関わっています。この中でもB細胞は、骨髄の造血幹細胞から、T細胞は胸腺で作られ、血液中に放出され、体内での役割を果たしていきます。ところが、加齢により骨髄や胸腺が委縮する、あるいは機能低下が起こるため、免疫力が低下していくのです。

 免疫機能の老化を予防し、活性化させる方法として、

  • 摂取カロリーを通常の70~80%に制限する
  • 適度に運動する
  • 抗酸化物質の増加や内分泌機能の調整のために、ビタミンEやCを効率よく摂取する

などがあります。

 一方で、ワクチン接種に関しては60歳前後では単体でも効果があるものの、それより上の年代においては、ワクチンと他の療法を併用する必要があると考えられています。

免疫機能の老化による症状

 では、免疫機能が老化すると、どのようなことが起こるのでしょうか。もっともよくみられる事象は、感染症にかかりやすくなり、重症化もしやすくなることです。特に獲得免疫の機能は加齢とともに衰えてくることから、新型のインフルエンザにかかりやすくなったり、新型の感染症にもかかりやすくなる傾向があります。上気道感染が原因で寝たきりになる、あるいは命に関わってしまうということもあります。例えばインフルエンザにより死亡する人は、50歳をすぎると急に増え始め、70歳以上になると全年齢平均の、およそ2.8倍となります(グラフ)。

グラフ:年齢別にみたインフルエンザの致死率の違いを示す棒グラフ。インフルエンザで死亡する人は50歳を過ぎると急激に増えることを示す
グラフ:年齢別にみたインフルエンザの致死率の違い

 免疫機能は、感染症だけではなく、アレルギーなどにも密接に関係しています。そのため、免疫機能を維持・向上することで、高齢者になっても健康で活動的な生活をおくることができ、健康寿命も延びていくのではないかと考えられます。

参考文献

  1. 免疫老化のメカニズムを解明しました 京都大学(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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