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ジョイント・バイ・ジョイントアプローチとは

公開日:2016年7月25日 08:00
更新日:2019年2月 1日 17:19

ジョイント・バイ・ジョイントアプローチとは

 ジョイント・バイ・ジョイントアプローチ(Joint by Joint approach)とは、ストレングス&コンディショニングのリーダー的存在であるMichael Boyleと理学療法士のGray Cookによって生み出されたjoint by joint theory(ジョイント・バイ・ジョイント理論)に基づくアプローチです。

 動作において、身体の関節がそれぞれの役割を持って個別に働きながら、複数の関節を同時に協同して働かせることが機能的な動作に結びつくというところからジョイント・バイ・ジョイントの考え方は始まっています。ファンクショナルトレーニングの5原則のうちの分離と協同にあたります(リンク1)。

リンク1:ファンクショナルトレーニング

 各関節の役割というのは大きく分けてモビリティ関節(動き)とスタビリティ関節(固定)に分けられます。Michael BoyleGray Cookはモビリティ関節とスタビリティ関節は人間の関節に交互に存在する1)と言っています。

 問題が見られる部分のみをアプローチするのではなく、問題のある部分の上下の関節の役割を十分に発揮できるように全身運動の中で練習していく必要がある2)としています。例えば、膝の安定性を図りたいときは膝の周囲の筋肉の筋力トレーニングだけを行うのではなく、股関節と足首の可動性を意識した全身運動のプログラムを行って膝の安定性を促していくということです。

 理学療法士のGary W.Grayが「ファンクショナルな動作は、適切な関節が、適切な可動域内において適切なタイミングと適切な強度で利用されたときに出現する」1)と述べています。

 機能的な動作は立位で成り立っていることが多く、たとえ臥位(がい:寝ている状態のこと)でSLR(下肢伸展挙上)※1を行ったときに股関節(モビリティ関節)の可動性はクリアしていても、体幹(スタビリティ関節)の安定性が低ければ、立位で股関節を屈曲させる(太ももを上に持ち上げて)動作は難しくなります。

 「モビリティ関節の動きの低下」、「スタビリティ関節の安定性の低下」、「関節同士の協同した働きの低下」、これらのいずれかでも欠けていると、機能不全や痛み、柔軟性の低下につながり、機能的な動作を行うことができなくなります。

 アセスメント(評価)の際には、実際の動きの中で各関節の役割が発揮できているか、協同して働いているかをチェックし、アプローチにおいても全身の動きの中で各関節の役割を協同して発揮できるプログラムを行うことが必要となります。

※1  SLR(下肢伸展挙上):
SLR(下肢伸展挙上)は下肢伸展挙上のことで、仰向けに寝て膝関節を伸ばしたまま股関節を曲げることです。他動的に行って股関節の柔軟性をみることや、自動的に行って大腿四頭筋の筋力トレーニングとして用いられます。

モビリティ関節とスタビリティ関節

 ジョイント・バイ・ジョイントアプローチにおいて、各関節の役割は表1と図1のとおりモビリティ関節とスタビリティ関節に大きく分けられるとされています1)2)

表1:各関節の役割
関節役割
頸椎 スタビリティ関節
肩関節 モビリティ関節
肩甲胸郭関節 スタビリティ関節
胸椎 モビリティ関節
肘関節 スタビリティ関節
手関節 モビリティ関節
股関節 モビリティ関節
仙腸関節および腰椎 スタビリティ関節
膝関節 スタビリティ関節
足関節 モビリティ関節
足部 スタビリティ関節
図1:モビリティ関節とスタビリティ関節を示す模式図
図1:モビリティ関節とスタビリティ関節

 大きな動きに適している関節をモビリティ関節、適していない関節をスタビリティ関節としており、モビリティ関節である股関節や肩関節は球関節であり、可動性に富んでいます。スタビリティ関節である肘関節や膝関節は蝶番関節または蝶番関節に近く、動きの幅に制限があります。

 ただ、ここで「スタビリティ関節は、可動性は必要ないのか」、「モビリティ関節は、安定性は必要ないのか」というとそうではありません。足首は背屈※2の可動域の低下が問題となりやすく、足首の安定性も必要ではあるが、足部の安定と足首の可動性があって機能が発揮できる3)とあるように、「動き」で考えるときに隣り合う関節同士がどの役割を持ちながら協同して力を発揮するのかという意味として捉えられます。

 関節の役割を個別に考えるのではなく、動きの中で考えていくことが必要というところがポイントとなるでしょう。

 例として、胸椎・腰椎と骨盤(仙腸関節)・股関節は連続して隣り合っており、腰椎・骨盤はスタビリティ関節、胸椎と股関節はモビリティ関節です。胸椎・腰椎と骨盤は体幹と言われる部分で、胸椎の可動性が低下すると体幹の回旋の動きが行われず、腰椎へ負荷がかかり、腰痛や体幹の不安定性につながります。腰椎と骨盤の安定性が低下し、体幹が不安定であれば、股関節の動きが制限されます。

 トレーニングではいろいろな考え方、アプローチがありますが、ジョイント・バイ・ジョイントアプローチとは、動きにおいて各関節のつながりを考え、関節の安定性と可動性の適した役割とバランスを促すように評価やトレーニングを行っていくことが大切という考え方であると捉えることができるでしょう。

※2 背屈:
背屈とは足首の背屈は足首を反らす動きで、背屈の可動域制限が起こると、しゃがみ込みにくいことや踏ん張る動作が十分に行えず力を発揮しきれないことなどにつながります。

参考文献

  1. ファンクショナルトレーニング 機能向上と障害予防のためのパフォーマンストレーニング 中村千秋編集 渡部賢一 鈴木岳 北川雄一 著 文光堂 2010
  2. GRAY COOK: EXPANDING ON THE JOINT-BY-JOINT APPROACH, PART 1 OF 3(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. GRAY COOK: EXPANDING ON THE JOINT-BY-JOINT APPROACH, PART 2 OF 3(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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