健康長寿ネット

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高齢者の身体活動と運動

公開日:2016年7月25日 20時00分
更新日:2019年2月 1日 16時36分

運動の種類と効果1)

 運動には様々な種類があり、運動の種類によって効果も異なります。運動は身体機能の向上のみではなく、ストレスの発散や生活習慣病予防、もの忘れにもよい効果が得られるといわれています。高齢者にも運動の種類や強度に注意して行えば、基礎代謝の向上、筋肉の強化を図ることができます。

心肺機能の向上が期待できるプールで運動を行っている高齢者の写真。

 運動を行うと、血流の改善、食欲がわく、腸の働きがよくなる、気分がよくなるなどの効果が得られます。ウォーキングやプール運動は、心肺機能の向上が得られ、ウォーキングは骨が丈夫になる効果も得られます。筋力トレーニングやバランス訓練は筋肉量が増え、筋力を強化できます。ストレッチングは筋肉の柔軟性が促され関節の動きが滑らかとなります(表1)。

表1:運動の種類と効果1)
運動の種類運動の効果
運動全般
  • 血流がよくなる
  • 食欲が湧き、腸の働きがよくなる
  • 気分がよくなる
ウォーキング・プール 心肺機能の向上
筋力トレーニング、バランス訓練 筋肉量の増大、筋力強化
ストレッチング 筋肉の柔軟性向上、関節の動きの改善
ウォーキング 骨が丈夫になる

高齢者になぜ運動が必要なのか(フレイル・サルコペニア予防)1)

高齢女性がつまづき転倒しそうなイラスト。サルコペニアや骨・筋肉・関節(運動器)の障害があるとフレイルになりやすく、転倒のリスクや死亡率が高くなることを表す。

 加齢によって筋肉量、筋力、身体機能の低下がみられることをサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)といいます。また、「筋力の低下、活動量の低下、歩行速度の低下、易疲労性、体重減少」のうち、3つ以上該当する場合をフレイルといいます。

 高齢者ではサルコペニアや骨・筋肉・関節(運動器)の障害がみられると、容易に歩行能力やバランス能力の低下、筋力低下へと結びつき、フレイルとなりやすくなります。フレイルは介護が必要となる前段階であり、転倒のリスクや死亡率が高まりやすく、移動能力やADLが低下しやすい状態であり、健康に生活できる健康寿命が短くなる状態です。

 その反面フレイルは、回復できる力が残っている状態で、適切な運動やリハビリテーション、食事療法や薬物療法を行うことにより、健康な状態へと回復することが可能な状態でもあります。

 そのため、高齢期には適切な運動を行い、筋肉量の増大や筋力強化、歩行能力やADL、身体機能の向上を図ることはサルコペニアやフレイルを予防し、高齢者の健康寿命を延ばすことにつながるのです。

 また、呼吸器疾患や心血管疾患、抑うつ症状、運動器疾患はフレイルと合併しやすいことがいわれています。生活習慣病はサルコペニアやフレイルの危険因子となることもいわれています。運動は心肺機能が高まる、爽快感や達成感を得られる、骨を丈夫にする、生活習慣病の予防効果もあり、フレイルと関連のある疾患の予防ともなります(リンク1、リンク2参照)。

リンク1:フレイルの予防

リンク2:サルコペニアの予防

身体活動量と死亡率の関連2)

 身体活動量と死亡率とは関連性があり、普段の身体活動量と全死亡、がん、心疾患、脳血管疾患における死亡との関連を調べた研究では身体活動量の多い人は死亡リスクが低くなることがわかっています。

 身体活動量を運動強度指数METに活動時間をかけた値(METS・時間)で換算し、身体活動量最大群から最小群まで4つのグループに分けて調査した結果、男女とも身体活動量が多い群ほど死亡リスクの低下がみられました。

 身体活動量最小群と比べた場合、身体活動最大群では、全死亡リスクは男性で0.73倍、女性で0.61倍と低下がみられました。

 男性の身体活動最大群では、がん死亡リスクが0.80倍、心疾患死亡リスクが0.72倍と低下がみられました。女性の身体活動最大群では、がん死亡リスクは0.69倍と低下がみられ、心疾患、脳血管疾患では他の群の低下もみられ有意性がないものの低下がみられました(表2)。

表2:身体活動量最大群の死亡リスク2)より作成
男性女性
全死亡リスク 0.73倍 0.61倍
がん死亡リスク 0.80倍 0.69倍
心疾患死亡リスク 0.72倍 低下
脳血管死亡リスク 低下なし 低下

 身体活動量が多いことが、なぜ死亡リスクを低下することにつながるかは明確にはなっていませんが、インスリン抵抗性、脂質、血圧などの改善や老化や炎症に関連がある酸化ストレスの軽減が図れること、心理的によい影響を及ぼすことなどが死亡リスクを軽減させると考えられています。

 身体活動の種類に関係なく、日頃からよく動いている人で死亡リスクが軽減することがわかっており、可能な範囲で今よりも身体活動量を増やすことが死亡を予防することにつながります。

参考文献

  1. 健康長寿教室テキスト 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 国立がん研究センターによる「多目的コホート研究」HPより(身体活動量と死亡との関連について)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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