健康長寿ネット

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運動強度とエネルギー消費量

公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 18時00分

運動によりどのくらいエネルギーを消費したか

 人は日常生活に必要な家事などの身体活動を行う時と、運動を行う時にエネルギーを消費します。人が1日に消費するエネルギー量のうち、安静時の基礎代謝量は約60%、食事誘発性熱産生(食事で体内に吸収された栄養素が分解されて消費されるエネルギー)1)が10%、残りの30%が家事などの身体活動と運動で消費するエネルギーです。基礎代謝量と食事誘発性熱産生は、個人の体格と食事量によって決まり、個人内での変動は少ないため、どれだけ身体活動・運動を行うかでエネルギー消費量は多くも少なくもなります2)

 1回の運動で消費されるエネルギー量は、体格・運動強度(運動の強さ)・運動時間で決まります。同じ運動強度の運動を同じ時間だけ行ったときには、体格の小さい人よりも体格の大きい人の方が消費エネルギーは大きくなります2)

 短距離走などの運動強度の高い運動とウォーキングなどの比較的運動強度の低い運動を同じ時間行うのでは、運動強度の高い運動の方がエネルギーの消費量は大きくなりますが、運動強度の高い運動では疲労も大きく、長い時間続けることはできません。比較的運動強度の低い運動では時間当たりのエネルギー消費量は少ないですが、長い時間運動を続けることが可能です2)

運動強度の評価(メッツ)3)4)

 運動強度(運動の強さ)は、体重1kgあたりに身体に取り込まれる酸素の量が指標とされますが、酸素の量はわかりづらいため、メッツ(MET: metabolic equivalent)という単位が使われます。

 メッツとは、安静時の酸素摂取量3.5ml/kg/分を1としたときに、その運動で何倍のエネルギーを消費できたかで運動強度を示した単位です。

 例えば、テレビを座ってみることや車に乗ることは1.0メッツ、座って会話や食事、デスクワークは1.5メッツ、料理や洗濯、着替え、洗面、シャワー、家の中を歩くなどは2.0メッツ、ウォーキングや掃除は3.0メッツ、卓球やラジオ体操第1は4.0メッツ、バドミントン、ゴルフは4.3メッツ、野球やソフトボールは5.0メッツ、ウエイトトレーニングやスイミング、バスケットボールは6.0メッツ、山登りは6.5メッツ、サイクリングや重い荷物の運搬は8.0メッツ、柔道、柔術、空手などの武道・武術は10.0メッツです(表1、表2)。

高齢者夫婦が料理している写真。料理は運動強度2.0メッツ。
高齢男性がラジオ体操している写真。ラジオ体操は運動強度4.0メッツ。運動によるエネルギー消費量は、運動強度(メッツ)×時間×体重(kg)の式から得られる。
表1:生活活動のメッツ4)
メッツ生活活動の例
1.8 立位(会話、電話、読書)、皿洗い
2.0 ゆっくりとした歩行(平地、非常に遅い=毎分53m未満、外・家の中)、料理や食材の準備(立居、座位)洗濯、子供を抱えながら立つ、洗車・ワックスがけ
2.2 子どもと遊ぶ(座位、軽度)
2.3 ガーデニング(コンテナを使用する)、動物の世話、ピアノの演奏
2.5 植物への水やり、子どもの世話、仕立て作業
2.8 ゆっくりとした歩行(平地、遅い=毎分53m)、子ども・動物と遊ぶ(立位、軽度)
3.0 普通歩行(平地、毎分67m、犬を連れて)、電動アシスト付き自転車に乗る、家財道具の片付け、子どもの世話(立位)、台所の手伝い、大工仕事、梱包、ギター演奏(立位)
3.3 カーペット掃き、フロア掃き、掃除機、電気関係の仕事:配線工事、身体の動きを伴うスポーツ観戦
3.5 歩行(平地、毎分75~85m、ほどほどの速さ、散歩など)、楽に自転車に乗る(毎時8.9km)、階段を下りる、 軽い荷物運び、車の荷物の積み下ろし、荷づくり、モップがけ、床磨き、風呂掃除、庭の草むしり、子どもと遊ぶ(歩く/走る、中強度)、車椅子を押す、釣り(全般) 、スクーター(原付)・オートバイの運転
4.0 自転車に乗る(毎時16km未満、通勤)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)、高齢者や障がい者の介護(身支度、風呂、ベッドの乗り降り)、屋根の雪下ろし
4.3 やや速歩(平地、やや速めに=毎分93m)、苗木の植栽、農作業(家畜に餌を与える)
4.5 耕作、家の修繕
5.0 かなり速歩(平地、速く=毎分107m)、動物と遊ぶ(歩く・走る、活発に)
5.5 シャベルで土や泥をすくう
5.8 子どもと遊ぶ(歩く・走る、活発に)、家具・家財道具の移動・運搬
6.0 スコップで雪かきをする
7.8 農作業(干し草をまとめる、納屋の掃除)
8.0 運搬(重い荷物)
8.3 荷物を上の階へ運ぶ
8.8 階段を上る(速く)
表2:運動のメッツ4)
メッツ運動の例
2.3 ストレッチング、全身を使ったテレビゲーム(バランス運動、ヨガ)
2.5 ヨガ、ビリヤード
2.8 座って行うラジオ体操
3.0 ボウリング、バレーボール、社交ダンス(ワルツ、サンバ、タンゴ)、ピラティス、太極拳
3.5 自転車エルゴメーター(30~50ワット)、自体重を使った軽い筋力トレーニング(軽・中等度)、 体操(家で、軽・中等度)、ゴルフ(手引きカートを使って)、カヌー
3.8 全身を使ったテレビゲーム(スポーツ・ダンス)
4.0 卓球、パワーヨガ、ラジオ体操第1
4.3 やや速歩(平地、やや速めに=毎分93m)、ゴルフ(クラブを担いで運ぶ)
4.5 テニス(ダブルス) 、水中歩行(中等度)、ラジオ体操第2
4.8 水泳(ゆっくりとした背泳)
5.0 かなり速歩(平地、速く=毎分107m)、野球、ソフトボール、サーフィン、バレエ(モダン、ジャズ)
5.3 水泳(ゆっくりとした平泳ぎ) 、スキー、アクアビクス
5.5 バドミントン
6.0 ゆっくりとしたジョギング、ウェイトトレーニング(高強度、パワーリフティング、ボディビル)、バスケットボール、水泳(のんびり泳ぐ)
6.5 山を登る(0~4.1kgの荷物を持って)
6.8 自転車エルゴメーター(90~100ワット)
7.0 ジョギング、サッカー、スキー、スケート、ハンドボール
7.3 エアロビクス、テニス(シングルス)、山を登る(約4.5~9.0kgの荷物を持って)
8.0 サイクリング(約毎時20km)
8.3 ランニング(毎分134m)、水泳(クロール、ふつうの速さ、毎分46m未満)、ラグビー
9.0 ランニング(毎分139m)
9.8 ランニング(毎分161m)
10.0 水泳(クロール、速い、毎分69m)
10.3 武道・武術(柔道、柔術、空手、キックボクシング、テコンドー)
11.0 ランニング(毎分188m)、自転車エルゴメーター(161~200ワット)

※試合の場合

エネルギー消費量の計算4)

 エネルギー消費量(kcal)は、以下の式で表すことができます。

エネルギー消費量(kcal)=(エネルギー代謝率(RMR):kcal/kg/時)×(時間:時)×(体重:kg)

 エネルギー代謝率(RMR)は、さまざまな身体活動やスポーツの身体活動強度を示すもので、活動に必要としたエネルギー量が基礎代謝量の何倍にあたるかによって活動強度の指標となっています。

エネルギー代謝率(RMR)=「(活動時のエネルギー消費量 - 安静時のエネルギー消費量) / 基礎代謝量= 活動代謝量 / 基礎代謝量」

 また、エネルギー代謝率とメッツの間には、「RMR = 1.2 × (メッツ-1)」が成り立ちます。

 運動中のエネルギー消費量を算出する場合、体重あたり、1時間あたりで表すとメッツとほぼ同じ値を示します。ただし、酸素1リットルあたりの熱量数を5kcalとします。例えば、体重50kgの人が、6メッツの運動強度で30分(0.5時間)運動したならば、「エネルギー代謝率(RMR)=1.2×(6メッツ-1)=6 kcal/kg/時」となり、「エネルギー消費量 = 6kcal/kg/時 × 0.5時間 × 50kg = 150kcal 」となります4)

 厚生労働省の健康づくりのための身体基準2013では、それぞれの身体活動で消費する体重別のエネルギーが示されています。例えば、普通歩行を10分では体重50kgの場合のエネルギー消費量は20kcal、70kgの場合は25kcalとなります(図)。

図:身体活動で消費するエネルギー消費量を示した図
図:身体活動で消費するエネルギー4)
エネルギー消費量は、強度(メッツ)×時間(h)×体重(kg)の式から得られた値から安静時のエネルギー量を引いたものです。すべて5kcalの単位で表示しました。

参考文献

  1. 身体活動とエネルギー代謝 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます) 
  2. 食事誘発性熱産生 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます) 
  3. メッツ 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 健康づくりのための身体活動基準2013 厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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