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嚥下障害のリハビリテーション(基礎訓練)

公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2023年8月16日 14時11分

嚥下障害のリハビテーション(基礎訓練)とは

 基礎訓練は、食べ物を使用せずに行う訓練です。実際に食べる前に、食べるために必要な筋肉を動かしたり、刺激を加えたりして、口腔周辺の運動や感覚機能を促し、摂食による誤嚥のリスクを予防して安全に食を楽しむことを目的とします。

嚥下障害の基礎訓練の実際

口腔ケア

 食べ物のカスが残存していると歯垢や歯石、舌苔となって細菌の増加を招きます。口の中の汚れを取り、衛生的に保つためのケアを行うことで口の中の細菌を減らし、誤嚥性肺炎を予防することができます。

嚥下体操(図1参照)

 嚥下体操は嚥下に関わる首や肩、胸郭、口腔器官の運動を行い、嚥下を行いやすくするための体操です。

  1. おなかに手をあてて、おなかが膨らむように鼻から吸って、おなかがへこむようにゆっくり口から吐く深呼吸を数回繰り返す
  2. 首を回す
  3. 首を左右に倒す
  4. 肩を上げ下げする
  5. 両手をあげて軽く背伸びをする
  6. 頬を膨らませたりすぼめたり2~3回繰り返す
  7. 舌を左右の口角を触れる(2~3回繰り返す)
  8. 息がのどに当たるように強くすって止め、三つ数えて吐く
  9. 「パパパ、ラララ、カカカカ」とゆっくり言う
  10. aの深呼吸を数回繰り返す

図:食べる前の準備体操として藤島式嚥下体操を解説する図。

図1:"藤島式"嚥下体操セット 1)

肩・頸部・胸郭の関節可動域訓練

 肩や首、胸郭の動きに制限がある場合は、口腔期の運動や嚥下を妨げるので、筋肉のリラクゼーションを行い、関節の動きを広げるように動かします。

舌・口唇・頬など口腔周囲のマッサージ・運動

 食べ物や飲み物を取り込んで咀嚼し、咽頭に送る働きをする舌や唇などの口腔器官の動きと動きに関わる筋肉を働かすために行います。マッサージを行って硬くなった筋肉を柔らかくしてから、嚥下体操の様に自分で行う運動やリハビリ職(主として言語聴覚士)が他動的に動かして行う運動、舌圧子などで抵抗を加えて行う運動などを行います。

ブローイング

 図2のペットボトルブローイングに示すとおり、鼻から空気が漏れ出る方や、唇を閉じる力・呼吸の力が弱い場合は、コップやペットボトルに入れた水をできるだけ長く優しくストローで吹く、巻き笛を拭くなどブローイング(吹く練習)を行います。

図2:ペットボトルブローイング

咀嚼訓練

 ガムやするめなどを使用して、噛むために必要な筋肉を鍛える訓練を行います。

頭部挙上訓練

 図3に示すとおり、嚥下に必要な喉頭挙上を促すために、舌骨上筋群、喉頭挙上筋群の筋力強化を図ります。仰臥位で足の先を見るように頭を上げます。

 一人で行うのが困難な方は介助者が頭を持ち上げて自動介助で行います。

図3:頭部拳上訓練

嚥下反射訓練・嚥下訓練

 嚥下反射を促すために唾液を飲み込む練習(空嚥下)を行います。飲み込みが弱い方には、舌を前に突き出したまま空嚥下をする(舌-突出嚥下法)方法もあります。凍らせたスポンジで喉を刺激(アイスマッサージ)したり、氷を口に含んだり(氷なめ)などの冷却刺激や、チューブを鼻や口から通す刺激を与えて嚥下反射を誘発することもあります。

プッシング

 声帯が閉じにくい場合、動きが良い方の声帯をより内転方向に動かして声門閉鎖をカバーするため、両手を胸の前で押し合うことや、図4に示すように壁や机などを手の平で押すことをしながら強く「あー」、「えい」などと発声します。

図4:プッシング

Kポイント刺激法

 口が開きにくい方は、綿棒や舌圧子などでKポイント(臼歯後三角の最後部・内側 図5参照)を刺激することで、口が開きやすくなり、食塊の咽頭への送り込み、嚥下反射が起こりやすくなります。

図5:Kポイント

メンデルゾーン手技

 「ごっくん」をする時に喉頭が十分に上がらない方や、食道の開きが十分でない方に、徒手で喉仏の挙上を保ちながら飲み込む練習をして、喉頭が挙上する感覚の学習を促します。

発音訓練

 嚥下と構音を行う器官は同じなので、単語や文章の発声練習を行い、嚥下に必要な器官の運動、筋肉の働きを促します。

呼吸訓練・咳嗽(がいそう)訓練

 誤嚥した時にもしっかり咽られることを促します。腹部が膨らむことを意識しながら深く息を吸い、「えへん」と声を出しながら息を吐き、咳込みを誘導します。

引用

  1. 社会福祉法人聖隷福祉事業団浜松市リハビリテーション病院,えんげと声のセンター""藤島式""嚥下体操セット 1食べる前の準備体操(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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