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嚥下障害のリハビリテーション(摂食訓練)

公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年2月 1日 21時26分

嚥下障害のリハビリテーション(摂食訓練)とは

 嚥下障害のリハビリテーション(摂食訓練)は、実際に食べる・飲むことを行う訓練です。基礎訓練で食べるために使う筋肉を動かし、運動・感覚刺激の入力を行って、嚥下しやすい環境を整えてから摂食訓練を実施します。

摂食訓練を行う前の準備

  • 覚醒が低いまま摂食をすると誤嚥のリスクが高くなります。しっかりと覚醒を促し、今から食事をするという声掛け、意識づけを行うようにします。
  • 個人の嚥下レベルに合わせた食物形態・硬さ・粘度などの調整を行い、受け入れやすい食べ物(味、好み、温度など)を用意します。
  • 食事のお膳が見えやすく、動きにくいように滑り止めで固定することや、手指の巧緻性が低下している場合は、持ちやすく、すくいやすく、口から摂り込みやすい太柄や先が曲げられるスプーン(図1参照)、普通箸が操作しにくい人用の介護箸(図2参照)、すくいやすく安定性のある食器(図3参照)など、食事を行いやすい環境を整えます。口唇での取り込みが難しい場合は、浅く幅の狭いスプーンを選択します。
  • 口腔ケアを行い、口の中の細菌を除去して清潔にします。

図1:太柄で先が曲げられるスプーン

図2:箸が操作しにくい人用の箸

図3:縁が斜めですくいやすい食器

摂食訓練を行う姿勢

 嚥下を安全に行うため、個人に最も適した肢位の設定を行います。

座位の場合

 骨盤をしっかり90度に起こして座位をとり、顎は軽く引くようにします。椅子は両足底が床につく高さ、机の高さは自然に手を下ろして肘が付く高さに設定します(図4参照)。

図:摂食訓練の座位姿勢。椅子に腰かけ、足の裏は床に着け、骨盤は90度に起こし、顎を軽く引きます。

図4:摂食訓練の座位姿勢

臥位の場合

 座位が困難な方は、ベッドアップ30度位が誤嚥しにくい(図5参照)と言われていますが、人によっては頭頸部の過伸展や全身の筋緊張の亢進がみられ、呼吸や嚥下状態に影響が出る場合もあるので、個人に合わせた角度の設定とポジショニングを行ないます。ベッドの角度がフラットに近いほど、鼻への逆流や咽頭への流れ込みが起こりやすいので、一口量や形態に注意して進めます。

図:摂食訓練の臥位姿勢。座位が難しい場合、ベッドアップ30度で訓練を行うと良いです。

図5:摂食訓練の臥位姿勢

頸部回旋法(横向き嚥下)

 横を向いて嚥下することで、横を向いた方と反対側の咽頭部が広くなり、食塊の通りをスムーズにする方法です。咽頭機能に左右差がみられる場合や咽頭部に食塊が残りやすい場合に行われます。

頸部屈曲法

 首が反って顎が出た状態だと誤嚥するリスクが高くなります。「お臍を覗き込むようにしてください」と声掛けし、自然な首の屈曲を促して誤嚥のリスクを軽減します。

食べ物の形態の調整

 飲み込みやすく、口腔内に残留しにくい形状や粘性、硬さ、まとまりの良さなど、個人に合った食べ物の状態に調整します。

一口量の調整

 一口の量が多くなれば、誤嚥のリスクは高まります。一口で摂り込める適切な量であるか、食塊はスプーンの摂り込みやすい位置にあるか、などを確認、調整します。

スライス型ゼリー丸飲み法

 薄くスライスしたゼリーは、表面が平面で崩れにくいので凹凸や丸みのあるゼリーの塊よりも滑りが良く、飲み込みが行ないやすいという特徴を利用した嚥下訓練法です(図6参照)。

図:スライス型ゼリー丸飲み法を示した図。薄くスライスしたゼリーは飲み込みが行いやすいです。

図6:スライス型ゼリー丸飲み法

交互嚥下法

 固形物と流動物とを交互に食べ、(ほぐした魚などのパサつきのあるものや粘度の高いものを食べた後にゼリーなどの滑りの良いものを食べる)、先に食べた固形物の残留を防ぐ嚥下法です。

ストローピペット法

 コップやストローから飲むことが難しい場合に、ストローを飲み物に刺してからストローの口先を指で閉じ、ストロー内に飲み物をとどめた状態で口の中に垂らす方法です。

反復嚥下法

 一口嚥下した後にもう一度空嚥下を促して、残留物を防ぎます。

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