健康長寿ネット

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老化予防のための睡眠

公開日:2019年6月21日 09:00
更新日:2019年6月18日 12:46

よく眠る大人は健康?

 睡眠は、私たちの健康にとって重要な生活習慣です。日本には「寝る子は育つ」という諺がありますが、「良く眠る子は大きく育つ」ことを示しています。子供が成長するためには心と体の健康が必要ですが、これは子供に限ったことではありません。いつまでも健康で若々しくいるためには、大人にとっても睡眠は大変重要なのです。

加齢による睡眠の変化

 中高年くらいになると、睡眠に関する不満や問題が多くなってきます。一般的に、高齢者になると睡眠時間が短くなると思われがちです。

 しかし、厚生労働省が行っている「国民健康・栄養調査」の平成29年(2017年)の結果によると、睡眠時間が一番短いと思われるのは40歳代であることが分かりました。

 たとえば男性の場合、睡眠時間が6時間以上の人の割合は20歳代~40歳代は50%台、50歳代は55%、60歳代は68%、70歳以上は78%と増えていきます。また女性の場合は、20歳代は59%、30歳代は62%、40歳代は48%、50歳代は49%、60歳代が54%、70歳以上が70%となっています。

 同じ調査の中で「睡眠が十分取れているか」という問いに対しては、「あまり取れていない」または「まったく取れてない」と回答した人の割合は、やはり男性、女性ともに40歳代がもっとも多いという結果になりました(図1、表1、表2)1)

 60歳を超えると、7時間~8時間、あるいは8時間~9時間の睡眠時間を確保している人の割合が少し高くなってきます。

図1:男女20歳以上の年代別の睡眠の質の状況を示す図。男女ともに40歳代がもっとも睡眠の質が良くないことをあらわす
図1:睡眠の質の状況(男性・女性、20歳以上)1)より作成
表1:睡眠の質の状況 男性、20歳以上1)より作成
20-29歳30-39歳40-49歳50-59歳60-69歳70歳以上
充分とれている 25.1 15.1 15.6 14.5 30.4 41.6
まあまあとれている 49.4 55.9 53.5 57.0 56.1 50.1
あまりとれていない 23.2 25.8 28.3 26.1 12.7 8.0
まったくとれていない 2.3 3.3 2.6 2.4 0.8 0.4
表2:睡眠の質の状況 女性、20歳以上1)より作成
20-29歳30-39歳40-49歳50-59歳60-69歳70歳以上
充分とれている 21.5 17.9 13.5 17.2 20.2 36.0
まあまあとれている 57.8 55.9 55.6 54.6 63.5 52.8
あまりとれていない 17.3 22.6 27.6 26.0 15.7 10.7
まったくとれていない 3.4 3.6 3.2 2.3 0.6 0.5

高齢者に多い「悪い睡眠」の例

 睡眠とはそもそも、心身の疲労を回復するために取るものです。しかし、自分にとって短いと感じる睡眠は、十分に疲労を回復することが難しくなります。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、睡眠により十分な休養が取れない人の割合は、40歳代がもっとも多く、60歳代以降はどの年代よりも低くなります(図2、表3)1)2)

図2:睡眠により十分な休養が取れていない者の割合(男女計)を示すグラフ。睡眠により十分な休養が取れてない人の割合は40歳代が最も多いことをあらわす
図2:睡眠により十分な休養が取れていない者の割合(男女計)1)より作成
表3:睡眠により十分な休養が取れていない者の割合(男女計)1)より作成
20-29歳30-39歳40-49歳50-59歳60-69歳70歳以上
2012年 17.7 22 24.1 17.6 10.9 8.0
2017年 23.2 27.6 30.9 28.4 15.0 9.9

 また、同調査結果のうち、平成24年(2012年)と平成29年(2017年)の結果を比較すると、どの年代においてもこの5年間で「睡眠により十分な休養が取れていない」と感じる人が増えていることが分かります。

 30歳代~50歳代の働き盛りの世代と比較すると、十分な睡眠が取れているように見える高齢者の世代ですが、実は睡眠にも加齢による変化があります。

 睡眠による加齢の変化には、以下のようなものがあります3)

  • なかなか寝付けない
  • 深く眠る時間が短くなる
  • 就寝時間と起床時間が早くなる
  • 何度も起きてしまい長く眠れない
  • 昼寝をしてしまい夜眠れない

 また、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などの睡眠障害を持つ人が増え、中年以前の年代と比較すると、有病率が高いといわれています3)

 中でも睡眠時無呼吸症候群は、若年層でのそれとは違い、肥満傾向にならない、夜間のいびきが小さい、昼間の眠気に気付きにくいなどといった特徴があり、見過ごされがちであるとされています。睡眠時無呼吸症候群の治療としては、夜間に専用の器械を用い鼻マスクを装着して就寝する持続的気道陽圧法(CPAP)という方法があります。しかし高齢者の場合は、歯が無い、義歯を外して就寝する、下顎が不安定になるなどの理由からCPAPによる治療効果をあまり期待できないことも稀にあります4)

睡眠による老化予防の効果5)

 良い睡眠には、心身の疲労を回復する効果や、生活習慣病を予防する効果があることが分かってきました。

 例えば、短い睡眠時間や不眠が続くと、肥満や高血圧、耐糖能異常をはじめとする、いわゆるメタボリックシンドロームのリスクが高くなるといわれています。

 また、夜間に十分な睡眠を取ることは、老化防止に効果的であるといわれています。その理由として挙げられるのが、成長ホルモンです。成長ホルモンは眠っている間に分泌量が増えるとされており、子供の成長に必要なホルモンです。成人にとっての成長ホルモンは、骨や筋肉を作る働きがあります。老化を防ぎ若々しく健康な体を維持するために、成長ホルモンが重要な働きをしています。

 厚生労働省では、平成26年(2014年)3月に「健康づくりのための睡眠指針 2014」を公表しました。ここでは、健康な体を維持するための「睡眠12箇条」が明記されています。

健康づくりのための睡眠指針 2014~睡眠12箇条~

  1. 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
  2. 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
  3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
  4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
  5. 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
  6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
  7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
  8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
  9. 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
  10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
  11. いつもと違う睡眠には、要注意。
  12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

 睡眠12箇条は、必ずしも高齢者に向けて作成されているわけではありませんが、世代に関わらず、良い睡眠で心と体の健康を維持することは必要です。加齢とともに起こる睡眠の変化も合わせて考え、良い睡眠を取ることを心がけましょう。

参考文献

  1. 総務省統計局 国民健康・栄養調査 平成29年国民健康・栄養調査 66 睡眠の質の状況 - 睡眠の質の状況、年齢階級別、人数、割合 - 総数・男性・女性、20歳以上 年次(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査報告(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 老年医学会雑誌 49巻3号(2012年)小曽根 基裕ほか 高齢者の不眠(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 日本老年医学会:老年医学系統講義テキスト.初版,西村書店,東京都,2013年,P160
  5. 厚生労働省 睡眠対策 健康づくりのための睡眠指針 2014(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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