健康長寿ネット

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高齢者の運動機能向上

運動器とは

 運動器とは、人の身体を動かすために働いている組織で、脳、脊髄、末梢神経、筋肉、関節、骨、軟骨、椎間板のことを指します。運動器の各組織は連動した動きによって働いており、どれかひとつの組織が欠けても、身体は上手く動くことができなくなり、歩行や日常生活活動に支障をきたすようになります1)

運動機能低下の要因とその影響

 加齢にともなう下肢や体幹の筋力低下や、体力・持久力の低下、膝や腰の痛みがみられることで、身体活動が減少します。身体活動の減少が起こると、バランス機能や歩行能力が低下し、容易に転倒・骨折するようになります。また、体力の低下から病気にもかかりやすくなり、安静にする時間が長くなることで、容易に機能低下が起こります。

 歩行や日常生活に介助が必要な状態になると、外出することが億劫となり、家に閉じこもりがちとなって、社会的な役割を失うことや、精神的にふさぎ込みがちとなります。ますます、身体活動の機会が減少し、運動機能の低下を招く悪循環となります2)

運動機能向上の目的

 高齢者の運動機能の低下は、日常生活の質の低下を招きます。運動機能の向上を図ることは、身体活動量を増やし、活動的な生活を送ることを促します。活動的な生活の中で、主婦として家事を行うことや、清掃活動やボランティア活動、趣味などに取り組むことで、社会的な役割を担うこと、精神的にも充実した日常生活を送ることを促し、日常生活の質(QOL)を高めることが大切です。

 社会的にも精神的にも満たされた毎日を送ることは、さらなる活動の向上を促し、運動器の疾患や精神的な落ち込みの予防にもつながります。元気で生活できる期間(健康寿命)を伸ばすためには、運動機能の向上を図ることが必要なのです。

運動機能向上方法

安全面の確保

 高齢者に運動機能向上のためのプログラムを実施する際には、安全面に配慮して行うことが必要であり、高齢者の運動機能や心理面、社会面について、介護保険についてなど、高齢者に関わる十分な知識がある者が実施することが望ましいとされています。はじめに、運動機能向上のプログラムに参加できるか否かを見極めること、万が一の緊急事態に備え、医療機関のフォロー体制や安全管理マニュアルを準備しておくことも必要です。

専門職によるプログラムの実施

 高齢者は運動機能の個人差も大きく、痛みや既往歴など、個別に配慮すべき点も多いため、集団でプログラムを実施するとしても、個別の評価を行い、個人に合わせたプログラムの実施が必要です。そのため、個人の機能によってプログラム内容の調整を行える専門職がプログラムを実施します。

運動の対象とする筋肉

 運動の対象となる筋肉は、座る・立つ・歩く・階段を上り下りするためなど、姿勢保持や移動機能に関わる基本的な日常生活活動に必要な筋肉です。中殿筋・大殿筋・大腿四頭筋・ハムストリングス・前脛骨筋・下腿三頭筋が対象となります。

運動の進め方

 運動プログラムは段階的に構築し、運動を行うための筋肉や靭帯をつくる「コンディショニング期間」、負荷をかけて筋力増強を図る「筋力向上期間」、日常生活活動や家事や趣味などの活動に必要な動作につながる「機能的運動期間」を設け、1か月ずつ段階的に進めていきます。

運動頻度と運動強度

 運動機能の向上を図るためには週2回以上、最大筋力の6割以上の負荷をかけた筋力トレーニングが必要とされています。週1回しか時間をとれない場合は、家庭での自主トレーニングを週1回追加します。

 運動強度は、初めは負荷をかけずに楽に行える運動から始め、徐々に負荷をかけて「ややきつい」というレベルまで上げていきます。運動後の疲労具合をみて運動強度の設定を行います。

運動プログラムの例

  1. ウォーミングアップ:ストレッチングやバランス運動
  2. 主運動:コンディショニング運動※1、機能的運動※2や筋力向上運動
  3. クーリングダウン:ストレッチング、リラクゼーション
※1コンディショニング運動:
コンディショニング運動とは、筋肉や靭帯などの組織が、運動負荷に耐えられるようにする運動のこと2)
※2機能的運動:
機能的運動とは、座位や四つ這い、膝立ち、立位などの姿勢保持や歩くために必要な機能を促すための運動のこと。

運動器不安定症とは3)

 運動器不安定症とは、運動器疾患によって歩行やバランス能力が低下し、転倒しやすくなり、閉じこもり傾向となって、日常生活活動に支障をきたしている状態です。

 運動器不安定症の診断基準は、下記の運動機能低下をきたす11の疾患の既往または罹患しているもの、かつ、機能評価基準が1または2に該当するものです。

運動機能低下をきたす11の疾患

  1. 脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度腰椎後弯・側弯など)
  2. 下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)
  3. 骨粗鬆症
  4. 変形性関節症(股関節、膝関節など)
  5. 腰部脊柱管狭窄症
  6. 脊髄障害(頚部脊髄症、脊髄損傷など)
  7. 神経・筋疾患
  8. 関節リウマチおよび各種関節炎
  9. 下肢切断後
  10. 長期臥床後の運動器廃用
  11. 高頻度転倒者

機能評価基準

  1. 日常生活自立度判定基準ランクJ(独力で外出できる)または、A(介助なしには外出できない)に相当
  2. 運動機能:1または2
    1. 開眼片脚起立時:15秒未満
    2. 3m timed up-and-go(TUG)テスト:11秒以上(椅子に座った状態から立ち上がり、3m先までできるだけ速く歩いて、折り返し、再び椅子に座るまでの時間を測るテスト)

参考文献

  1. 日本整形外科学会公認 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモチャレンジ! 「ロコモ」を知ろう 運動器とは?(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 運動器の機能向上マニュアル(改訂版)厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 「運動器不安定症」日本整形外科学会 (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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