健康長寿ネット

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認知症の看護

 認知症の人への対応とは

認知症とは

 認知症は、脳に何らかの異常を来し、記憶障害や見当識障害、暴言・暴力や行動障害を起こすこと、日常生活に支障を来している状態です。認知症には大きく2通りの症状があります。中核症状と周辺症状(行動・心理症状)です。

 認知症の症状は大きく2通りに分かれる

中核症状

 脳細胞の機能が低下し、記憶障害、見当識障害、理解力や判断力の障害、実行力の障害などが見られます。脳細胞の機能が低下する原因には色々ありますが、現在の日本人の中でもっとも多いのがアルツハイマー型認知症です。

周辺症状(行動・心理症状)

 元々の性格や素質に、環境や心理状態が加わって現れる症状で、不安や焦燥感、うつ状態、幻覚や妄想、徘徊、興奮や暴力、不潔行為などが見られます。

 中核症状と周辺症状のうち、一般的には中核症状が先行して現れることがいようです。「できない」ことが増えてくる自分に対して、不安や焦燥などを感じ、うつ状態に陥るなど、周辺症状が現れるようになるといわれています。

認知症の人は何を考えて生きているのか

 認知症の人は、記憶障害などの状態を抱えながら、様々なことを考えて生きています。例えば、認知症の人が好む行動と嫌がる行動について考えてみましょう。

認知症の人が好む行動や考え方

  • 安心できる場所を求める
  • 安心できる人との関わりを求める
  • 自分が出来ることは積極的にやりたい
  • 昔の栄光や得意だったことを認めてほしい

認知症の人が嫌がる行動や考え方

  • いつもと違う場所で過ごすこと
  • いつもと違う人に関わること
  • 「できない」と否定されてしまうこと
  • 新しいことを覚えなくてはいけないこと

 この他にも、認知症の人は自分が出来ることと出来ないことを見分けることが出来ません。そのため、運動能力の低下を認めずに「安全」を無視した行動をすることがあり、転倒しやすくなります。

認知症の人への接し方のポイント

 認知症の人への接し方としてポイントとなるのが「嫌がることを強要しないこと」です。認知症の人は、自分が嫌がることを強要されると、周辺症状が強く出る傾向があります。逆に、自分が好む行動を続けていられるうちは、周辺症状が強く出にくい傾向があります。

 その他、孤独感を味わうこと、本人のペースを乱すこと、冷たくあしらわれること、プライドを傷つけられることを嫌います。こういった接し方をすると、周辺症状が強く出るようになり、接し方が難しくなります。

なじみの関係を築く

 人は誰でも、知らない人がそばにいると、緊張して不安になります。普段からなじみの関係を築いておくと、本人はリラックスできます。そばにいるだけではなく、お互いに話をしやすい「なじみの関係」を築いておきます。

孤独感を感じさせない

 認知症の人は、孤独を感じると、不安やストレスを感じ、大声を出したり、うろうろと歩き回ったり、暴力を振るうようになります。「なじみの誰かがそばに入れてくれる」と感じるような接し方をすることで、穏やかに過ごせるようになります。

本人のペースを乱さない

 認知症の人は、自分のペースを乱されることを嫌います。急がせず、ゆっくりとした言葉をかけ、時には「大丈夫ですよ」と声をかけることで、安心して物事に取り組むことが出来るようになります。

プライドを傷つけない

 認知症の人は、「怒られる」ことを嫌います。認知症の記憶障害は、物事や言われたことを忘れていても、感情的な記憶は残っていると言われています。怒られたこと自体はすぐに忘れてしまっていても、怒られたことで感じた「屈辱的な気持ち」は覚えています。過去の栄光や自分の得意だったことも、その出来事と共に「良かった」という感情や誇りといった感情的なことを、ずっと覚えているのもそのためです。

認知症への新しい接し方

 ここ数年、認知症の人への接し方として有効性の高い考え方が注目を浴びています。「バリデーション」と「ユマニチュード」です。

バリデーションとは

 バリデーションは、認知症の人の「感情」に焦点を当てたコミュニケーション法です。その目的は次の2つがあります。

  • 認知症の人の感情・欲求のを表に出すように促す
  • 人生の未解決問題を解決するよう手助けする

 日本で行われたある研究では、特別養護老人ホーム等の施設入所者30名を対象として、週に1回、同じ時間、同じメンバー、同じ場所で、一緒に歌をうたうなどのアクティビティを実行しました。その結果、バリデーション介入群にのみ、感情状態の陰性傾向が低下し、陽性傾向が上昇したという結果が出ました。バリデーションを行うことで、認知症の人との間にコミュニケーションが成立し、心的交流が可能になったと考えられています。

ユマニチュードとは

 ユマニチュードは、フランスで始まった、知覚・感情・言語による包括的なコミュニケーションに基づいたケア技法です。ユマニチュードの基本は、「見つめる」「触れる」「話しかける」「立つように支援する」の4つの考え方に基づいています。

見つめる

 認知症の人は視野が狭くなっているので、目線に合わせてできるだけ近い場所から見つめる

触れる

 認知症の人が嫌がらない範囲で、出来るだけスキンシップを図り、体を支える

話しかける

 ケアを行う時には、心地よい言葉で優しく話しかける

立つように支援する

 人の尊厳(プライド)を維持するためには、立つという行動が効果的です

 具体的には、150の技法があります。この技法は、一度にすべてを実践するのではなく、出来ることから少しずつ始めて行けば良いそうです。看護師や介護士だけではなく、自宅で認知症の人をみている家族などにも実践できることがあります。

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