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高齢者の摂食嚥下(せっしょくえんげ)機能に影響する要因

公開日:2016年7月25日 09時00分
更新日:2021年3月 3日 11時42分

高齢者の摂食嚥下機能

 摂食嚥下(せっしょくえんげ)とは、食物が認知され、口腔、咽頭、食道を経て胃に至るまでのすべての過程をいいます。摂食嚥下障害とは、この一連の動作に障害があることです。

 誤嚥(ごえん)とは、食べものや飲み物の一部あるいは全部が声門以下の気道に流入することをさします。食べ物や飲み物以外に鼻汁や唾液などの分泌物が気道に流入し、誤嚥することもあります。また、胃内容物(胃液など)が、食道から咽頭に逆流し気道に流入することを、逆流性の誤嚥といいます。それらの誤嚥で起こる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。

 日本人の死亡原因について、平成29年(2017年)の人口動態統計から、肺炎と誤嚥性肺炎を分けて集計するようになりました。令和元年(2019年)の死亡原因の中で、誤嚥性肺炎は2.9%で6位となっていますが、高齢になるほどその比率は上昇しています1)

 高齢者の肺炎には、摂食嚥下障害が背景にあり、誤嚥性肺炎が多いと考えられています。高齢者では、一見食欲不振と思われる症状の背景に、誤嚥もしくは誤嚥性肺炎が潜んでいて、嚥下障害により食事がとれない場合があるため、食欲不振だけでなく、微熱が続く、痰が増える、声がかすれたまま、など誤嚥を疑う症状がある場合には、専門医療機関で摂食嚥下機能の評価を受けた方が良いでしょう。

加齢による摂食嚥下機能への影響2)

 高齢になると、う蝕や歯周病の進行により歯を失ったり、舌の運動機能、咀嚼(そしゃく)能力、唾液の分泌、味覚なども低下したりします。加えて口腔の感覚も鈍化するため、咽頭へ食べものを送り込む能力が低下するなど、口腔の問題が摂食嚥下機能を障害するようになります。

 また喉頭(のどぼとけ)を吊り上げている筋肉の減少によって、喉頭の位置が下降し、嚥下時の喉頭挙上が不十分となり、食道の入り口を閉めている括約筋の機能低下も伴って、喉頭の閉鎖が不十分となり誤嚥しやすくなります。さらに、咽頭収縮筋の収縮力が低下し、咽頭に唾液や食物などが残留することによっても誤嚥のリスクが高まります。しかし、加齢による摂食嚥下機能への影響は個人差があり、高齢になっても摂食嚥下障害がみられないこともあります。

 加齢とともに摂食嚥下機能だけでなく、滑舌など構音機能の低下、さらには心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念が「オーラルフレイル」です。「オーラルフレイル」に対しては、より早期から口腔機能を維持向上させることが重要とされています3)

摂食嚥下機能に影響する薬物

 高齢者の中には、さまざまな疾患を合併している人がいます。また、これら疾患の治療のために多くの薬を飲んでいる場合があります。これらの薬物が摂食嚥下障害をもたらしている可能性もあり、注意が必要です。

 摂食嚥下機能に影響する薬で気を付けなければならないのは、脳機能を抑制する薬です。抗精神病薬や精神安定剤、抗けいれん剤などは、覚醒レベルの低下をまねき誤嚥を誘発します。

 第二に比較的多くの薬にある副作用の口腔乾燥は、摂食嚥下機能に悪影響をおよぼします。口腔乾燥により味覚や咀嚼機能が低下するため、嚥下可能な食塊を形成するまでの咀嚼回数が増加し、嚥下までの時間が延長します。たとえば利尿剤、三環系抗うつ剤、交感神経遮断剤、抗ヒスタミン剤、抗精神病薬などがこれにあたります。

 第三に高齢者では薬物代謝が低下しているため、副作用が生じやすく、例えば不随運動などが生じて、摂食嚥下機能が障害されることがあり注意が必要です。代表的な薬として、抗精神病薬や抗パーキンソン薬などがあります。

 その他、咽頭収縮筋の収縮力を低下させる抗コリン剤、三環系抗うつ剤、Ca拮抗薬なども嚥下機能を低下させるため注意が必要です。

摂食嚥下障害をきたす疾患

 高齢者の食欲不振の原因の一つに摂食嚥下障害があります。摂食嚥下障害は多くの疾患によって生じます。たとえば摂食嚥下障害をきたす原因疾患として、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害、パーキンソン病や重症筋無力症などの神経・筋疾患、その他に炎症、腫瘍、中毒、外傷などがあり、食べ物が飲み込めなくなったり、誤嚥を生じたりするようになります。

 摂食嚥下障害をきたす疾患は、高齢になるほど合併することが多くなります。高齢者では、認知症が合併することが多く、認知機能障害の進行とともに摂食嚥下障害は重度化していきます。

口腔機能を維持するためのケア3)

 加齢によって、噛む・飲み込むという口腔機能が低下すると、硬い食べ物を避け、柔らかい食べ物ばかりを選びがちになります。すると、噛む機能はますます低下し、食事の質の低下などの悪循環を招いてしまいます。活舌(かつぜつ:滑らかな話し方。滑舌ともいう)の低下や食べこぼしが増えるのも、噛む機能が低下していることが影響しています。

 また、飲み込む力が低下すると食べたものが気管に入り、ムセたり誤嚥を起こしやすくなります。このような状態(誤嚥)を予防し、口腔機能を維持向上するための具体的なケア方法をご紹介します。お食事前の習慣として、毎日の生活に取り入れてみましょう。

お口の予防体操

 舌・唇・頬・喉の筋肉を鍛えることで、口腔機能や嚥下機能の維持・向上をはかることができます。

頬の体操

 唇をしっかり閉じて、頬を膨らませたり、すぼめたりする(図1)。

図1:唇を閉じ、頬を膨らませたりすぼめたりする頬の体操を表す図。
図1 頬の体操4)より引用

唇の体操

 唇を閉じて、舌で唇の裏側をなぞるようにぐるりと回したり、上下に動かしたりします(図2)。

  • 口を大きく開け、舌を大きく前に出したり、引っ込めたりします
  • 舌を大きく前に出して、上下・左右に動かします
図2:口腔機能や嚥下機能の維持・向上のための唇の体操の方法を表す図。
図2 唇の体操4)より引用

唾液腺マッサージ

 口腔機能が衰えると唾液の分泌が減少し、口が乾燥して食べづらさを感じるようになります。唾液の分泌を促すための唾液腺マッサージも行いましょう(図3)。

  1. 耳下腺マッサージ
    • 耳の付け根にある耳下腺の上に、親指以外の4本の指を当て、後ろから前へとゆっくりと円を描くように耳下腺をマッサージします。
  2. 顎下腺マッサージ
    • 親指の腹を耳の下の下顎の骨の内側の軟らかい部分に当て、1~2秒間押しては離す動きを繰り返しながら、少しずつ前方に移動させながらマッサージします。
  3. 舌下腺マッサージ
    • 顔の前で両手を合わせ、両手の親指で、顎の下から舌を押し上げるように1~2秒間押しては離す動きを繰り返します。
図3:唾液の分泌を促すための唾液腺マッサージの方法を表す図。
図3 唾液腺マッサージ4)より引用

 口腔機能を維持するためには、お口の運動やマッサージと併せて、定期的に歯科を受診して口腔機能を評価してもらい、状態を確認しながらケアを行い、機能低下を予防していくことが重要です。また食事の質を維持するために、噛むことを意識した食事や調理法を選択するよう心がけることも大切です。

文献

  1. 厚生労働省 令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況(2020年11月30日閲覧)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 長屋政博:高齢者の摂食・嚥下障害 臨床看護 第35巻第4号:476-482,2009
  3. 日本歯科医師会 通いの場で活かすオーラルフレイル対応マニュアル 2020年版(2020年11月30日閲覧)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. お口の健康度セルフチェックを作成しました! 一般社団法人 北海道歯科衛生士会(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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