健康長寿ネット

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消化器の老化

消化器とは

 消化器とは、食物を摂取し、消化、吸収、排泄する器官群のことです。口から食物を摂取する、摂取した食物を栄養素に分解する(消化)、栄養素を血液中に吸収する、消化しにくい残りの部分を体から排泄するという働きをしています。

消化器を表すイラスト。消化器は口、のど、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門の器官で構成されています。また、消化管の外側に位置している消化に関わる膵臓、肝臓、胆嚢も含まれます。

 消化器は口から肛門までの器官で構成されています。

  • のどと食道
  • 小腸
  • 大腸
  • 直腸と肛門

 また、消化器系には、消化管の外側に位置している消化に関わる臓器も含まれます。

  • 膵臓
  • 肝臓
  • 胆嚢

加齢による消化器の老化

 消化器は予備的な機能を兼ね備えている臓器であり、他の臓器と比べると、加齢による影響は少ないといわれています1)

 しかし、高齢者にも消化器の病気は多く見られていますし、消化器が老化したことによって、食べたいものが食べられなくなっている人もいます。加齢による消化器の影響はどのようにでるのでしょうか。

高齢者の口腔機能の老化

 まず口腔機能からみていくと、唾液の分泌が低下します。これは加齢によって唾液腺が委縮することや、長い年月を生きてくる間にかかったさまざまな病気に対する内服薬の影響が関係していると考えられています。実際、健康な高齢者(慢性疾患にかかっていない人)を対象にした調査では、唾液内の成分は加齢による大きな変化はみられないという結果が出ています2)。唾液が出ないと、噛んだり飲み込んだりすることが難しくなります。また、口の中が乾燥して、衛生状態が悪くなり、口内炎、舌炎、歯周病にかかり、これらから来る不快感、疼痛などにより、食事がとれなくなります。実際に、病院へ受診する高齢者の訴えで、口腔内の乾燥を訴える高齢者は、多いとされています2)

 また、虫歯や歯周病で歯が抜けてしまうと、咀嚼力(そしゃくりょく=噛む能力)が大きく低下し、噛むのに必要な咬筋(こうきん)が萎縮してしまいます。その結果、柔らかい食品ばかり食べるようになり、糖質を多くとりすぎてしまう一方で、たんぱく質、カルシウムなどが不足しがちになり、便秘にもなりやすくなります。

 舌炎が続くと味を感じるのに必要な味蕾が萎縮し、味覚機能が低下します。その結果、食欲も落ちてしまいます。

高齢者の食道の老化

 加齢によって食道の収縮力は低下します。これによって上部食道括約筋(かつやくきん)の張力(ちょうりょく)が弱くなります。また、他の臓器と比較してその変化は小さいようですが、食道の内腔圧や、食べ物を胃に送るための蠕動運動(ぜんどううんどう)が弱くなるといわれています。

 さらに食道下部の筋肉がゆるんでしまったり、食道の動きが悪くなったりすることで、胃液や胃の内容が食道に逆流することもあります。これを逆流性食道炎といいますが、結果的に潰瘍ができてしまうことがあり、さらに食道機能が悪くなります。

高齢者の胃や腸の老化

胃の老化

 胃は、加齢によって粘膜が萎縮することで、胃酸分泌が低下し、病原体への抵抗力が低下します。鉄やビタミン吸収能力も落ちてしまいます。
また、加齢によって胃の弾力性も低下するため、一度に大量の食べ物を胃にためておくことができなくなります。さらに、蠕動運動が弱まるため、小腸へ食べ物を運ぶ能力も低下します。つまり、たくさん食べていないように思っても、胃の中に食物がたまってしまい、胃が苦しくなるという症状がみられるようになります。

小腸の老化

 小腸は、加齢による影響を受けにくい臓器とされてはいるものの、やはり消化液を分泌する能力が低下し、消化吸収が悪くなります。脂っこいものがあまり食べられなくなったり、乳製品の消化吸収の能力が衰えます。

大腸の老化

 大腸は、蠕動運動の低下や、肛門括約筋の収縮力の低下、腹圧の低下などが起こります。これらの様々な要因によって、便秘がちとなることが多いようです。特別養護老人ホームに入居している高齢者の35.9%が毎日下剤を使用しているというデータもあります3)

 また、大腸壁の一部が、小さな袋状になって腸の外側に突出して憩室(けいしつ)を作り、そこに腸内を移動している物質(便)がたまることで、感染を起こすこともあります。

肝臓の老化

 肝臓は、加齢によって組織の一部が線維化してしまうものの、機能面では老化の影響は受けにくいとされています。しかし、飲酒やストレスなどによって肝臓が受けたダメージを修復する能力は若いころよりも衰える傾向にあります。胆石を持つ人も増えて、胆石から胆嚢炎などをおこすこともあります。

噛む能力の維持の方法

 老化によって食べる能力、消化吸収の機能は低下しますが、食べる能力を守っていくためには、まずは噛む能力を維持することが大切です。

「食べる能力」を維持するためのポイント

  • 口の中の衛生状態を保つことで、歯が抜け落ちる一番の原因である「歯周病」を予防すること。
  • 丈夫な歯を高齢まで維持すること。
  • よく噛んで飲み込んで、おいしく食べること。
  • 積極的にからだを動かして、消化管の動きを良くすること。

参考文献

  1. 消化器内科(胃腸) 国家公務員共済組合連合会虎の門病院(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 化学 と生物 Vol. 37, No. 6, 1999 公益社団法人日本農芸化学会(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 特別養護老人ホームにおける入所者の重度化に伴う効果的な排泄ケアのあり方に関する調査研究事業 厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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