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第4回 冬の養生

 

公開月:2022年1月

杉山 卓也
薬剤師、漢方アドバイザー、神奈川中医薬研究会会長


 落ち着いた気候の秋が終わり、暦の上では立冬(11月上旬)~立春(2月上旬)までのおよそ3か月間の冬。寒さの強いこの季節、中医学や漢方では動物はエネルギーの消費を抑えるために気血といった栄養成分を「貯める」時期とするのが養生として正しいと考えられています。ですから、冬の時期には春夏のように積極的に行動を起こすのではなく、静かに知識や栄養を蓄えることを基本とするのがよいでしょう。

 冬は中医学では五臓のうち「腎」と関係性が強い時期として考えられています(図)。腎はホルモンの分泌を中心に、人間の成長や老化に深く関与する部位として考えられています。冬は冷えにより「腎」の働きが弱まりやすくなるため、しっかりと冬の冷えから体を守らないと老化を促進してしまうことになる、という教えがあります。冬の寒さは冷えの害である「寒邪(かんじゃ)」と乾燥の害である「燥邪(そうじゃ)」が合わさることで、特に粘膜や皮膚にダメージを与えます。風邪などの感染症が増えるのもこのせいです。

図:五臓別こころの不調と治し方を表す図。
図 五臓別こころの不調と治し方

 冬に働きを落としがちな「腎」を補う食材としてはまず「黒い食材」を目安にするとよいでしょう(図)。黒ごま、黒糖、黒豆、黒米、海藻類、黒きくらげなどがこれに当たります。これらの食材に体を温める作用の強い生姜、人参、にんにく、にら、ねぎ、かぼちゃなどを合わせるとさらに効果的です。適度な塩辛さ(これを鹹味(かんみ)と呼びます)を持つ食材は「腎」を元気にするとされますが、摂り過ぎは逆にむくみを助長し、「腎」に負荷をかけてしまうことになるためご注意下さい。

 生活養生としては、とにかく外部や内部への「冷え」の侵入を防ぐこと。しっかり湯船に浸かって体を温めたり、冷たい飲食物を避けたり、適度な運動をしたりするのも効果的です(あとで冷えないように汗はしっかりとふきとること)。夜はできるだけ早く就寝し、暖かくして部屋の加湿などにも気を使っておくとよいでしょう。

 冬によく用いられる漢方薬としてはお腹が冷える方には内臓を温める働きのある「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」、感染症などを繰り返す人には「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」などを用いるとよいでしょう。また、冬の寒さや加齢による「腎」の衰えにより冷えを感じる方は、特徴として腰痛や脱毛、むくみなどを伴うことが多いので、腎を温める作用のある「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」などがオススメです。また、血行不良による冷えでお悩みの方には血流を促しながら血液の流れも改善する「血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)」や「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」などもオススメです。

 辛い冬の寒さには、自分の体質に合った漢方薬を使いながらしっかりと「蓄える」ことを心がけつつ、冬の恵みを楽しんでいただければと思います。


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