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派遣報告書(小室絢)

派遣者氏名

小室 絢(こむろ あや)

所属機関・職名

東京大学医学部附属病院老年病科・専門研修医

東京大学大学院医学系研究科加齢医学専攻・大学院生

専門分野

老年医学

参加した国際学会等名称

2018 Annual Scientific Meeting of the American Geriatrics Society

学会主催団体名

American Geriatrics Society

開催地

アメリカ オーランド

開催期間

2018年5月3日から2018年5月5日まで(3日間)

発表役割

ポスター発表

発表題目

The utility of CGA7, the simplified CGA screening tool in acute care settings

簡易版高齢者総合機能評価スクリーニングツール CGA7の長期入院予測の有用性

発表の概要

目的

 CGA7は高齢者総合機能評価(CGA)を短時間で行うため長寿科学総合研究CGAガイドライン研究班が作成した簡易版CGAスクリーニング検査である。意欲、認知機能、基本的ADL、手段的ADL、情緒に関して7つの質問項目から構成されており、5分程度で容易に実施できる。本研究ではCGA7を用いることによって急性期病院における長期入院の予測が可能であるか評価を行った。

方法

 2014年4月から2017年3月までに東京大学医学部附属病院老年病科に入院した429名の高齢患者の病院データベースを解析した。患者は主に認知機能障害やそれに伴う症状の悪化または肺炎や心不全などの急性疾患の加療のために入院していた。短期検査入院の患者は除外した。31日以上の入院を長期入院とし、それに対する予測能はAUCで評価した。

結果

 CGA7の平均は3.8(SD1.7)、平均入院日数は21.7日(SD16.0)であり、この両者は有意に相関していた。長期入院の割合は19.1%であり、短期入院群よりも有意にCGA7が低かった (p<0.001)。CGA7単独での長期入院に対するAUCは0.75 (95%信頼区間0.69, 0.82)であった。年齢、性別、緊急入院かどうかによるモデルのAUCは0.72であり、このモデルにCGA7を加えることによってモデルの予測能は有意に上昇した(AUCの変化+0.06, 95%信頼区間0.005, 0.11, p=0.03)。

考察

 CGA7の位置づけはスクリーニングツールであり、異常が検出された場合は標準的方法での評価が必要であるとされている。しかし、本研究結果はCGA7単独でも長期入院の高リスク群を特定するのに有用であることを示唆している。入院時CGA7を実施することでより早期かつ効率的な治療および退院支援の実施が期待される。

派遣先学会等の開催状況、質疑応答内容等

 日本では老年医学を専攻している医師は少ないため、アメリカ老年医学会学術集会に参加されている人の多さに驚きました。ポスターセッションだけでも4セッション存在しており、1セッションで大きなホールが埋まる数(200以上)のポスターが掲示されていました。学生、レジデントと若手の医師も多く、活発な議論が各ポスターの前で行われていました。現地の老年医学会の先生方からは「日本は長寿の国だがどうしてそんなに長生きできるのか」など日本での状況を聞かれることがありました。

平成30年度第1期国際学会派遣事業派遣者:小室絢の発表風景

本発表が今後どのように長寿科学に貢献できるか

 今回、高齢者総合機能評価のスクリーニングツールとして使用されているCGA7についてCGA7単独でも長期入院を予測することが出来ることを発表しました。CGA7は7つの簡単に評価することが出来る質問から構成されているため、評価者による偏りがなく使用することが出来ます。今後、CGA7が今回発表した内容のように長期入院予測用として広まれば、高齢者の早期退院支援に貢献することが出来ると考えています。