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各論3 まちづくりを通してのフレイル予防・対策 4.地域の高齢者と共に育てるフレイル予防 -東京都西東京市-

 

公開日:2021年9月24日 10時39分

東京都西東京市健康福祉部 高齢者支援課
在宅療養推進係 主任
徳丸 剛

1:西東京市の現状

1.市の概要

 西東京市は、平成13年に旧田無市と旧保谷市が合併して誕生した市である。都心から20㎞圏で区部に隣接している。市の面積は15.75平方キロメートル(東西4.8キロメートル、南北5.6キロメートル)、人口密度は区部を除く東京都多摩地域で2位の過密さとなっている。

図1:西東京市の位置図。
図1 西東京市の位置

2.市の課題

 人口は令和2年(2020年)11月1日現在20万5,885人、今後、団塊の世代が75歳以上となる令和7年(2025年)には人口が減少する一方、高齢化率は、25.1%に増加する。そのうち75歳以上の後期高齢者の占める割合は58.2%と予測しており、急激な高齢化と単独世帯数の増加、認知症高齢者の増加への対応が求められている。

 また、地域活力の低下や地域コミュニティの衰退といった状況も懸念され、地域コミュニティの再構築が求められている。このため、多世代にわたり健康でいきいきと暮らすためには、こころと体といった保健医療の分野にとどまらず、社会や経済、住まいや教育など行政のあらゆる分野における健康水準の確保が課題となっている。

3.市全体の目標

 上記課題を踏まえ、当市では、「健康」応援都市の実現を戦略の機軸に位置づけ、平成26年(2014年)7月にWHOが提唱する健康都市連合に加盟した。平成28年(2016年)3月には、行政サービスを提供する職員の働き方改革の一環として、市と職員労働組合で「健康な職場環境を目指す健康市役所」宣言を締結。平成29年(2017年)5月には、市長、管理職が、『「健康」イクボス・ケアボス宣言』をした。

 このように、「地域・住民が互いに支えあう(応援する)まち」=『「健康」応援都市』の実現を目指し、地域包括ケアシステムの構築に向けた施策を進めている。

2:高齢者同士で実施するフレイルチェックとは

 自身のフレイル状態について確認するプログラムとして東京大学高齢社会総合研究機構が開発したのが「フレイルチェック(以下、「チェック」という。)」である。

 このチェックは大きく2つの狙いがある。

 一つ目は、住民自身の早めの気づき・自分事化による「三位一体(口腔・栄養、運動、社会参加)」への行動変容である。チェックでは、参加者の住民自身が既定のチェックシートに基準以上であれば青丸シールを、基準以下であれば赤丸シールを貼る。このことによって自分で貼る行為自体と、赤青シールにより一目で自分の良いところ悪いところが分かることによって、「自分事化」し、行動変容を促すことになる。

 二つ目は、元気シニアの活躍の場の提供による生きがいを持った担い手側として活躍してもらうことである。チェックを実施するのは、通常の健診等と異なり、専門職や行政の職員ではなく高齢者から養成された「フレイルサポーター(以下、「サポーター」という。)」である。このサポーターとしてチェックの現場で測定を実施したり、講義したりする役割を担うことによって、やりがいのある活躍の場を提供することになる。

図:高齢者同士で実施するフレイルチェックを行う様子を表す図。
図 フレイルチェックについて
(東京大学高齢社会総合研究機構 機構長飯島勝矢 資料より一部改変)

3:西東京市が取り組む理由-フレイルチェックとの出会い-

 先に述べたような現状の中、地域包括ケアシステムの構築のためには、地域づくりに関して更なる取り組みが必要だと感じていたが、有効な解決策が見つからない状況であった。

 そのような状況の中、平成28年(2016年)8月に、千葉県柏市において行われていたチェックを見学し、フレイル予防について知る機会を得た。柏市のサポーターが生き生きと、参加者と一緒になって楽しそうに運営している様子を見たとき、私たちの中で「これだ!」と思えた瞬間だった。

 チェックと出会って私たちが考えた、西東京市が取り組むべき理由は大きく3点が挙げられる。

1.介護予防事業に継続性を持たせ効果検証が可能となる

 チェックによって、フレイルの状態を定期的にチェックし、半年ごとに参加者自身のフレイルの状態が数値化される。これによって、参加者自身の気づきと共に、チェックとチェックの間の活動(既存の介護予防講座等)への参加をうながすことによって、それぞれの取り組みの効果検証が可能となり、参加者の予防意識の継続性も持たせることができる。

2.参加者を仲間づくり、地域づくりの核として活用できる

 サポーターは、これまでの他自治体の事例から特に男性高齢者が多く、今まで地域へ出るきっかけが無かった意欲のある男性高齢者を獲得できる。これによって、退職後の男性など、これまでの経験を活かして地域づくりへの核となってもらえる人材を呼び込むことができる。実際、他の市の事業における男性の割合が1-2割にとどまる中、当市のサポーターは半数が男性となっている。

 また、チェックへ参加した市民に対しては、社会参加の一環として地域のサークル、高齢者クラブ、ミニデイ等を紹介することで、本人のためのみならず、紹介した団体の活性化につながり、ひいては仲間づくり、地域づくりを促進し、孤立する高齢者を減らすことにつながる。

3.将来的な介護給付費を減らすことが可能

 フレイルの段階で予防することで、高齢者が要介護状態になるまでの期間を延伸することができる。このことによって、将来的な介護給付費の伸びを抑制する効果が期待できる。

4:フレイルチェックを開始するまで

1.東京大学高齢社会総合研究機構と連携協力に関する協定を締結

 我々が大きな課題と感じながら有効な解決策が見つからなかった、いくつもの課題について、チェックをきっかけに解決できると考えたことから、平成28年12月には、主にフレイル予防を目的に東京大学高齢社会総合研究機構と市で連携協力のための協定を締結した。

2.フレイル予防講演会を開催

 平成29年(2017年)1月には、チェックを始めとするフレイル予防事業を西東京市内で進めていくために、「フレイルとは何か?」から市民と専門職が共に学ぶための講演会講師として東京大学高齢社会総合研究機構 飯島勝矢教授をお招きした。

 終了後の参加者アンケ―トの意見には、「非常に具体的なお話でわかりやすく、フレイルにならないぞ!!という気持ちになれた」、「チェックも、楽しそうでぜひやってみたいと思った」、「自分を知ることがまず大事、気付くことで変わる、自分自身で考える」などがあった。

 この講演会をキックオフとして、フレイル予防事業を開始した。

3.フレイルサポーターを養成

 実際のフレイル予防の事業としては、平成29年(2017年)4月に行なわれたサポーターの養成研修が始まりである。

 この養成研修で募集したサポーターは、市内ですでに様々な活動をしている市民の方や、先に述べたフレイル予防講演会で募集した方、市の広報誌で募集した方などで、令和2年10月現在で計119名を養成した。現在は、このサポーター達が市内各地で行われるチェックを運営している。

4.フレイルトレーナーの選出

 チェックの現場で専門的助言をし、サポーターを養成、指導していく役割を担う専門職が「フレイルトレーナー(以下、「トレーナー」という。)」である。市内の理学療法士と柔道整復師の計3名を選出した。

 このトレーナーも先の養成研修に参加し、サポーターと共に市内のチェックを始めとするフレイル予防事業の運営の中核を担っている。また、他自治体で開催される講演会や養成研修への派遣も行っている。

5:フレイルチェックを開始して-西東京市の取り組みの特徴-

1.フレイルチェックの開催状況

 平成29年(2017年)5月に、市内第1回目のチェックを行った。

 当日は、飯島教授をはじめとする東京大学高齢社会総合研究機構の研究チームにもご参加いただき、トレーナーとサポーターも共に運営した。

 令和元年度は、市内8カ所で1回ずつの新規チェックを実施し、加えて2回目以降の方向けのチェックも含め計26回開催した。

写真1:フレイルチェックで講義中のフレイルサポーターの様子を表す写真。
写真1 フレイルチェックで講義中のフレイルサポーター

2.フレイルチェックのリピート率向上に向けた取り組み

 チェックは1度受けて終わりではなく、何度も受け、自身の状態の変化を自覚していくことが重要である。このため、当市では、半年後の2回目のチェックでは新規の参加者募集は行わず、1回目のチェックを受けた市民のみに参加いただくことにしている。

 また、当市ではチェックを地域ごとに実施しており、参加者の対象地域も限定している。このため、同じ地域の市民同士が集まることになり、その市民同士でも仲間づくりを行いたい、という狙いがある。

 この狙いの実践やリピート率向上に向けた取り組みとして、2回のチェックの間に、「フレイル予防のためのミニ講座」を開催している。内容は、参加者同士の仲間づくりや、チェックで自身の弱点に気づいた方向けに、自宅で出来る運動・栄養・社会参加について学べる講座や専門職による個別相談を実施している。

 さらに、2回目のチェックの前に、郵送で勧奨通知も行っている。

 このような取り組みを進めた結果、当市における2回目のリピート率は平均60%程度を達成している。

3.地域活動情報誌の作成

 チェックを受けて、自身の改善したい項目が分かった後、どのように既存の予防活動等につなげていくのかが重要である。

 これまでは、市役所内のそれぞれの部署で予防講座などのチラシ等を発行していた状況であったため、フレイル予防の三つの柱ごとに講座や地域活動をまとめた地域活動情報誌「Keep Going!」を、先行してチェックを導入していた神奈川県茅ヶ崎市の取り組みを参考に作成し、チェック参加者に配布している。

4.フレイル予防出張講座の開催

 当市では、市の広報誌、ホームページ等の様々な媒体を通じて、フレイル予防の普及・啓発に努めている。その結果、地域の団体から「フレイル予防について知りたいので講座をやってほしい」という要望が寄せられるようになった。

 しかし、チェックは、会場のスペースや設備の他、開催時間を2時間確保する必要があるなど、一定の制約がある。このため、チェックの体験版として、既存の地域団体向けに、フレイル予防の説明と簡単なチェックのみの1時間程度の講座を実施している。この講座の狙いは、チェック本番への誘導や、後に述べる、地域団体サポーターの養成への機運づくりとしても活用している。

6:市民の力を引き出すフレイルサポーター活動

1.フレイルチェックの運営をサポーターへ

 チェックはサポーター、トレーナー、市職員の3者が役割を分担して実施している。それぞれの役割の比重について、事業開始時は講義や指示出しはトレーナーが行い、参加者の受付や回収したチェックシートデータの確認などは市職員が行っており、サポーターの役割は計測部分のみだった。

 それが現在では、トレーナーはチェック開始前後のミーティングのみ、市職員は荷物の運搬と回収したチェックシートの管理のみとなり、それ以外は講義から運営まで全てサポーターが実施する形になり、本当の意味での「住民主体の支え合い活動」に成長している。

2.フレイルサポーター自身のアイディアでの改善

 このようにサポーターが自立してくるにつれ、サポーター自身から様々な改善のアイディアが出てくるようになっている。

 例えば、機器を使った測定場所を番号で分かりやすく示すための表示を作成してきたり、東大の研究結果に関する最新のグラフを自身で作成してきたり、ミニ講座でサポーター自身が習っている楽器を持ち込んで歌の演奏に沿って滑舌の練習をしたり、次々と自主的な活動が行われている。

7:フレイルサポーター同士が話し合う場の設置

1.フレイルサポーターミーティングの設置

 サポーター同士がチェックの改善にとどまらず、地域へのフレイル予防の周知活動や、地域の課題解決について話し合う場として、「フレイルサポーターミーティング」略して「サポミ」を設置し、毎月開催している。

 また、サポミの運営を担う事務局的な役割を担うサポーター5人が集まる「世話人会」も設置しており、議題の決定や会議の進行を担っている。

 サポミ発足後、最初の議題となったのは独自のマニュアル作りであり、半年にわたって議論・作成し、全サポーターがチェック時の確認などで活用している。

 次にサポーターから、地域の集まりや団体で啓発するための啓発用のチラシが欲しいという意見が出てきた。このため、地元で活動しているデザイナーにアドバイザーとして参加してもらい、サポミに加えチラシ作成の部会を新たに設置し、話し合いながら作成した。

写真2:フレイルサポーター同士がチラシ・ポスターについて話し合う様子を表す写真。
写真2 チラシ・ポスターについて話し合うフレイルサポーター

8:地域でのフレイル予防への気運の盛り上がり

1.地域団体での自主サポーター活動の開始

 フレイル予防を市内で啓発するに従い、地域から活動の提案が次々と出てきている。

 もともと、数万人の高齢者に対して、行政が直接運営するチェックだけでは全高齢者が継続的に受講する体制を賄えないと感じていた。そこで、既存の団体が自主事業としてチェックを運営し、団体のメンバーと周辺住民が受講する受け皿となる体制を構築していきたいと考えている。

2.住民団体でのフレイルチェック自主開催へ

 そのような中、地域の公共施設を自主運営している住民団体から「自分たちもチェックを実施したい」という要望があった。その団体の狙いとしては、まず、自分たちの団体が活動を開始して20年が経ち、初期メンバーの高齢化による運営の継続に不安が出てきたため、メンバーのフレイル状態を継続的にチェックして健康の維持向上を目指したいということ。次に、地域も高齢化が進んでおり、地域住民も健康を維持してもらい、チェックをきっかけとして、自分たちの団体へ新規会員として加入してもらいたいということだった。

 このような要望を受け、行政と団体の狙いが一致したことから、初の取り組みとしてこの団体専属のサポーターを養成し、現在は年4回程度、独自のチェックを実施している。

3.シルバー人材センターでの自主サポーター活動の開始

 地域住民の自主団体も本格的な活動を始めた時期に、高齢者の就労を支援しているシルバー人材センターからも自主運営の要望があった。同センターの狙いとしては、まず、会員の健康維持による就労期間の拡大。次に、会員のチェックデータが一般市民より良いことが予想されるため、そのデータをアピールすることによって同センターの新規会員の獲得を目指したいとのことだった。

 このような要望を受け、公益団体として初めての専属サポーターを養成し、その後、2期生も養成し、現在は年10回程度、独自のチェックを実施している。

4.地域の高齢者クラブでの自主活動

 市内の高齢者クラブをとりまとめている連合会では、傘下のいくつかのクラブに数人のサポーターが所属しており、そのメンバーが自主的に周知活動の重要性を認識し周知活動を実施している。

 具体的には、会全体の取組として全ての所属クラブの会長を通じて全会員に対して簡易チェックを配布した。加えて、サポーターが各クラブに個別に出張講座を実施している。

5.医師会提案でのフレイル予防に関する周知

 専門職も気運が高まってきている。

 まず、西東京市医師会では、医師会と行政との会議において、同会の副会長から「医師会としてもフレイル予防に関して会員及び患者に対して啓発したい」という要望があった。

 この要望を受け、後期高齢者向けの健診時などに啓発チラシを配布することになり、現在、各クリニックで配布している。

6.歯科医師会員によるオーラルフレイル啓発活動

 西東京市歯科医師会では、市のイベントでオーラルフレイルのミニ講演会を開催している。

 チェックでは基本的に受けた市民の気づきを重視し、自分で改善することを前提にしているが、唯一専門的な対処が必要な項目は口腔対策になる。この、市で開催しているイベントの中のミニ講演会で、歯科医師会員から口腔のフレイルいわゆるオーラルフレイルの重要性について市民啓発を行っている。

9:フレイル予防に取り組んでみて

1.既存の行政の予防事業との連動

 以上のようなフレイル予防の取り組みを開始するにあたって、当市では庁内検討チームを立ち上げ、介護予防を担当する部署、健診等の若年予防を担当する部署が参加し、フレイル予防についての各種検討を行っている。この中で出た提案から、チェックを行う会場のいくつかを市の福祉会館で行い、そこで行われている既存の予防事業につなげる取り組みも進めている。

 この検討を進める中で、フレイル予防は市役所内の連携を進めるツールにもなりうると実感している。

2.市民の予防への関心の高さ

 市民調査で、「市が取り組むべき介護保険・保健福祉サービス」として要望のトップが「介護が必要な状態にならないための予防に関する事業」であり、全体の4割を超える割合となっている。

 実際に、チェックも毎回定員オーバーの状況である。

 また、先に述べた出張講座は、あえて市が周知していないにも関わらず、口コミなどで多くの団体から開催要望が来ている状況にある。

 このように、フレイル予防というキーワードをきっかけに、確実に市民の健康に対する「予防の意識」が高まっていると実感している。結果として市が実施したアンケートではフレイルという言葉を知っている65歳以上の高齢者が過半数となっている。

10:ウィズコロナ下でも着実に進めるフレイル予防

1.事業全体の休止

 以上のように、一歩一歩進めてきたフレイル予防事業であるが、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大により、大幅な軌道修正を余儀なくされてしまった。

 実際に、チェックの会場となる福祉会館等が使用できなくなったことと、市全体の方針としての主催イベント中止の決定により、令和2年3月から活動休止に追い込まれてしまった。

 また、高齢者自身も重症化が懸念される世代であることもあり、外出を自粛しているとの声が多く寄せられていた。

2.市のホームページに自宅でできる運動動画を公開

 この状況下において、これまでフレイル予防を実施してきた我々としては、新型コロナ感染対策の重要性は共有しつつも、室内で動かないことによる元気高齢者のフレイル化を懸念していた。

 このため、早い段階から何らかの対策を講じる必要性を感じていた。

 まず、対策の第1弾として、日本老年医学会による自粛高齢者へのフレイル啓発ステートメントをきっかけに、令和2年(2020年)3月下旬に市のホームページに外出自粛によるフレイルの悪化について予防啓発するページを掲載した。

 その後、先に述べた「フレイル予防のためのミニ講座」で柔道整体師であるトレーナーが実施している運動講座をもとに「お家でできる運動動画」として撮影・編集し、市ホームページはもちろん、市公式YouTubeチャンネルで公開した。

 ただ、自分でホームページを閲覧できない高齢者もいるため、別途、外出自粛による危険性についての啓発チラシも作成し、サポーターや地域包括支援センター職員などが3,000枚のポスティング・配布を行った。

3.団地へのアンケートで裏付けられた外出頻度の低下

 あるサポーターから、自身が居住する全戸(約700戸)に上記の啓発チラシを配布したいとの希望があったため、チラシと同時に団地居住高齢者にコロナ下でのアンケートを行った。

 この調査の結果、新型コロナによる外出自粛により、外出頻度が低下した高齢者が41.2%、週1回以下の閉じこもり傾向が13.5%となり、大きな活動量の低下が見られた。特に、運動や会話の低下が顕著にみられた。

写真3:フレイルサポーターがアンケートをポスティングする様子を表す写真。
写真3 アンケートをポスティングするサポーター

4.市民の求職者支援と共に外出自粛対策グッズの配布

 この結果も踏まえ、当市としてはこれまで以上に外出自粛対策の必要性を感じた。

 このため、令和2年(2020年)6月には、市内に住民票がある75歳以上高齢者約26,500人に対して、自宅での運動に使えるトレーニングバンドを始めとする、フレイル予防の視点を入れた様々な冊子やグッズが入った「おうち時間応援パック」を配布した。

 そのほかの中身として、教育委員会の協力のもと市内各小学校の小学生が高齢者に向けた応援メッセージを書いたメッセージカードや、友人・知人とのコミュニケーションの手段として市内の風景を写した絵葉書、高齢期の栄養についての注意を記載してあるパンフレット、熱中症対策としての水の気化熱を利用したクールタオルなどを同封した。

 封入・配布方法も検討し、郵送ではなく、求職者支援として様々な作業を行う有償ボランティアを活用した。

 この募集の際に、求職者に留まらず庁内各部署に周知協力を依頼した。これにより、若年性認知症者、ひきこもりの若者など、普段は「支援される側」であった市民が、高齢者を「支援する側」として参加・協力することができ、しっかりとした報酬がある自身の活躍の場として、共生社会の一つの形としても意義があったと考えている。

写真4:おうち時間応援パックの中身を表す写真。
写真4 おうち時間応援パックの中身

5.地域で再開した通いの場への運動講師派遣

 上記パックで高齢者に配布したトレーニングバンドは、市内病院の理学療法士でもあるフレイルトレーナーが監修し、運動方法を記載したリーフレットを同封すると共に、市公式YouTubeチャンネルにリーフレットの運動方法を撮影した動画も公開した。

 しかし、個人ではなかなか取り組みづらいという声を受け、上記トレーナーを地域の希望する団体に派遣する事業も同時に開始している。

 これによって、運動方法の指導はもちろんのこと、地域の高齢者が集まるきっかけとして活用してもらうことで、外出自粛による健康被害の低減に努めていきたい。

6.サポーターによる代用ガウンの作成・配布

 令和2年5月上旬に、別の事業委託により市に派遣されている看護師から、病院や施設で不足している医療用ガウンの代替となる代用ガウンの作成提案があった。

 この代用ガウンの作成をサポーターが行うことで、チェックの休止期間中のサポーター活動の一環とできると考え、協力できるサポーターに依頼した。

 実際に多くのサポーターのみならず、その知り合いからも作成協力の申し出があり、すぐに目標の枚数に達し、最終的に400枚以上の代用ガウンを市内介護事業所等に配布することができた。

7.サポーター同士のオンラインでの交流

 5月下旬に東京都の緊急事態宣言が解除されたことを受け、チェックの再開についてサポーターと共に検討を開始した。

 その際に、少人数で集まり検討することと並行して、オンライン会議システムを活用しての打ち合わせも開始した。

 その後、サポミについても、これまで全員が会場参加であったが、現在は会場参加とオンライン参加の双方で実施している。サポーターからは「オンラインで安心して参加できる」、「わざわざ会場まで行かなくても参加できる」と前向きな意見が多い。

写真5:フレイルサポーター同士のオンラインでの交流の様子を表す写真。
写真5 サポミで意見交換するサポーター
(奥の壁にはオンラインで参加しているサポーター達の映像が投影されている)

8.フレイルチェックの本格的再開

 令和2年3月に休止したチェックだが、サポーターとの検討の結果、①来場時の検温、②1人の測定が終わるごとに手指消毒・機器や器具の消毒、③参加人数を半数に制限、などの感染予防策をとった上で再開することになった。実際のチェックは同年7月から再開した。

 測定してみると、リピーターの参加者の平均値として、握力の減少などの筋力低下がみられ、外出自粛によるサルコペニアが実際の数値として確認できた。

 このような結果をみると、外出自粛対策としてのフレイル予防の意識向上のためにも、これまで以上にチェックの重要性を認識しているところである。

11:今後の課題と展望

1.庁内の連携体制の構築

 フレイル予防は、単なる予防事業ではなく、まちづくりそのものの起爆剤になると考えている。しかし、現在、市役所内の連携について言えば、先に述べたように、健康づくりに関係する部署とは連携はほかに、自治会・町内会を担当する部署や、都市計画に関する部署等、幅広い関係部署と連携を進めている。

2.最後に

 以上のように、少しずつだがフレイル予防のムーブメントが市内に広まっている実感はある。今後は、この取り組みをしっかりと効果検証し、さらに体系化されたシステムとして完成させていきたいと考えている。

 そして、フレイル予防がウィズコロナ下でさらに重要性を増している中、新たな切り口で、まちづくりを目指していくきっかけとなるものであり、市民がより長く健康に暮らし、安心して最期を迎えられる、地域包括ケアシステムの基盤とするため、今後もさらなる改善と普及に努めていく。

プロフィール

写真:筆者_徳丸剛先生
徳丸 剛(とくまる ごう)
東京都西東京市健康福祉部 高齢者支援課
在宅療養推進係 主任
最終学歴
2005年 三重大学工学部卒
主な職歴
2009年 西東京市総務部管財課 2011年 議会事務局 2015年 健康福祉部高齢者支援課 現職 健康福祉部高齢者支援課在宅療養推進係主任