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令和5年度 長生きを喜べる長寿社会実現研究支援 採択プロジェクトについて

 公益財団法人長寿科学振興財団(以下「当財団」という。)は、財団ビジョン「長生きを喜べる長寿社会の実現~生きがいのある高齢者を増やす~」を達成するため、長寿科学研究者等支援事業「長生きを喜べる長寿社会実現研究支援」(以下「本事業」という。)を実施しています。本事業は課題解決になる実用的な方法の研究開発から本格的な社会実装を含めた一気通貫の課題解決型のプロジェクトを採択し、支援するものです。

 令和5年度の本事業の公募では産学官民各界より多数のご提案がありました。公募締切後、提案書を受理した50件について第一次審査(書類審査)、第二次審査(プレゼンテーション審査)、最終審査を審査評価委員会が実施し以下のプロジェクトを採択内定としました。

審査講評(審査評価委員長 駒村 康平)

 長寿科学研究者支援事業「長生きを喜べる長寿社会実現研究支援」(以下「本事業」という。)は、公益財団法人長寿科学振興財団(以下「財団」という。)のビジョン「長生きを喜べる長寿社会の実現~生きがいのある高齢者を増やす~」に基づき、我が国が直面する課題の中でも、高齢社会における課題解決を目指す貴重な助成事業である。本事業は、長寿科学の観点でアプローチされた実用的な方法を研究開発し、社会実装まで取り組める課題解決型のプロジェクトを採択するものである。

審査手続き

 令和4年度公募において50件のプロジェクト提案(以下「提案」という。)があった。本事業は審査評価委員(以下「委員」という。)が「審査基準」の共有、「利害関係の排除」を明瞭にしたうえで、以下の手続きで審査・合議に基づき採択した。

  • 第一次審査(書面審査)
  • 第二次審査(プレゼンテーション審査)
  • 最終審査

 提案が多数あったため、委員全員が全ての提案を審査することが望ましいところである。しかし、審査スケジュールと委員の負担を考慮する必要があっため、一次審査(書面審査)では、委員の専門性を考慮し、審査対象を分類し採点を行った。一次審査会においては採点の上位層を委員の合議により二次審査候補者を選定した。二次審査および最終審査においても、審査基準に基づく採点に加え、合議により審査を行った。

審査基準

 本事業の主課題は「長生きを喜べる長寿社会の実現~生きがいのある高齢者を増やす~」である。

 また、主課題を実現するための課題解決となるキーワードとして以下の4つを掲げた。

  1. 高齢者のQOL、生きがい、健康、活力のエンパワメント
  2. 弱っても安心して活き活き過ごせるまちづくり
  3. 認知機能が低下しても個人の尊厳を尊重した普段の生活における様々な意思決定支援
  4. 高齢者にやさしいテクノロジー・デジタル技術の開発・実装

 そのため、審査においては、以下の3つの審査基準を設定し採点・評価した。

1)社会的インパクトがあるか
2)学際的であるか
3)持続可能かつ実効性があるか

採択プロジェクトに対するコメント

 令和4年度の公募において斎藤 民 氏(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部 部長)の「ユニバーサル・フレンドリー・ファシリティが認知症の人と地域住民の社会参加向上とスティグマ軽減、ウェルビーイング向上にもたらす効果検証」(Aステージ)を採択した。

 斎藤氏のプロジェクトは「暮らすだけで自然と行動変容する環境づくり」というゼロ次予防のアプローチおよび「認知症等社会生活機能が低下した人も含め顧客拡大を狙う」アクセシブル・デザインのコンセプトに基づき、誰でも参加しやすい施設を開発し、認知症の人や地域住民の社会参加向上、認知症スティグマ低減とウェルビーイング向上効果を検証する。

 また、産官学民の連携に基づき、誰もが参加しやすいファシリティを開発・実装・展開することにより、認知症の人々をはじめとする社会生活機能にハンディキャップのある人々と地域住民の社会参加促進とスティグマ軽減を通じたウェルビーイングの向上を図ることを目標にしている。

 認知症の人々に対して理解があり、彼らが自立して生活を続けることを支援することを目的とするコミュニティ(ディメンシア・フレンドリー・コミュニティ)を実現するためには、斬新で魅力的なファシリティを創造することが必須であり、また、日本の方向性として求められている。その意味で、斎藤氏のプロジェクトは、大変共感できる構想であり、財団のビジョンおよび本事業の趣旨に合致していると考えられた。ただ、社会実装や全国展開を見据えたビジネスモデルには課題があると思われたが、Aステージという特性を生かし積極的にチャレンジしていただきたい。

総評

 令和4年度の提案は高齢社会における様々な課題解決に向けた多様なアプローチが多くあった。我々委員は、審査基準に基づき社会へのインパクトとともに、研究手法の厳密性や事業可能性、その実行組織体制を審査したわけであるが、残念ながらこれらのいずれも十分に満たす提案はあまり多くはなかった。とくに研究者サイドの目線や供給オリエンテッドからの発想で、本当に、社会的なムーブメントを起こせるのか、需要を作りうるのかどうなのか、社会実装が可能なのか、技術が社会に浸透するのかという点が曖昧な提案が少なからずあった。

 本事業は大きな意味で、「長寿社会の諸問題を解決する」プロジェクトを支援したいという目的を持っている以上、

  1. プロジェクトが特定分野の研究者目線によってのみ作られ、ひとりよがりの内容になっていないか
  2. 技術面の可能性だけではなく、社会に受け入れられる可能性を十分に検討しているのか

といった視点は極めて重要であろう。そういう意味で「研究が誰のものなのか」という点は改めて問い直す必要を昨年の審査同様に感じざるを得なかった。

 そのため、次年度の提案には、市民を中心とし、課題解決する研究者、そして行政や企業・団体などが協力してプロジェクトを進めていく「アクションリサーチ」あるいは「シチズンサイエンス」という視点や、そのプロジェクトを確実に社会実装し持続的に社会に浸透させていく「真に学際的なチーム編成になっているのか」、「広い意味での制度・政策につなげていけるのか、その知見と体制を組んでいるのか」という、本質的な産学官民連携をより強く意識することを求めたい。

公募について

 公募については以下のページをご覧ください。

長生きを喜べる長寿社会実現研究支援の公募


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