長寿科学研究に関する情報を提供し、明るく活力ある長寿社会の実現に貢献します。

令和2年度若手研究者表彰事業 長寿科学賞受賞者について

長寿科学振興財団長寿科学賞第21回若手研究者表彰式の写真

 令和2年度若手研究者表彰事業における「長寿科学賞」受賞者1名が決定し、令和3年3月12日(金)名古屋マリオットアソシアホテルにおいて、第21回若手研究者表彰式を行いました。受賞者には表彰状、表彰盾、副賞(研究費100万円)が贈呈されました。受賞者とその研究概要は以下のとおりです。

(1)受賞者氏名

丸山 健太 氏

所属機関・職名

自然科学研究機構生理学研究所 特別協力研究員

研究課題名

腸内リボ核酸による骨粗鬆症の病態修飾に関する研究

研究期間

平成26年度~令和2年度

研究内容及び研究成果の概要

 我々の血圧は常に一定に保たれるよう調節されているが、こうした恒常性の維持は血管に発現するpiezolと呼ばれる機械刺激受容体が担っている。piezolは腸でも発現していることが知られているが、腸のpiezolがどのような生理機能をはたしているのかは不明であった。今回、遺伝子改変マウスを駆使した研究によってこの謎に挑んだところ、糞便中に含まれる腸内細菌由来のリボ核酸(RNA)が腸のpiezolを活性化することでセロトニンの産生を誘導していることが明らかとなった。これまでの研究でセロトニンは骨形成を抑制するホルモンであることが報告されていたが、piezolをマウスの腸で特異的に欠損させると血中のセロトニン濃度が顕著に低下した。また、当該マウスでは腸でのセロトニンの産生障害を反映して骨形成が亢進し、骨量が増加していた。さらに、RNA分解酵素を老齢マウスに注腸することで腸内のRNAを除去したところ、血中セロトニン濃度の低下をともなった骨量の上昇が観察された。これらの結果は、糞便中のRNApiezolを介して腸と骨の恒常性を維持していることを示唆すると同時に、腸内RNA量の制御によって骨粗髪症を予防できることを意味している。

代表論文

RNA sensing by gut Piezo1 is essential for systemic serotonin synthesis. Erika Sugisawa, Yasunori Takayama, Naoki Takemura, Takeshi Kondo, Shigetsugu Hatakeyama, Yutaro Kumagai, Masataka Sunagawa, Makot Tominaga amd Kenta MaruyamaCell 182: 609-624, 2020. ※責任著者

写真2:長寿科学振興財団長寿科学賞第21回若手研究者表彰式の写真