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感染予防とフレイル対策 2つの視点が鍵

 

公開月:2021年4月

荒井 秀典(あらい ひでのり)
国立長寿医療研究センター理事長


 2019年末に中国武漢市において最初の感染者が出たとされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、瞬く間に日本を含む世界中に広まり、2021年1月19日時点でPCR陽性者は全世界で9,600万人以上、死者205万人以上、わが国でもPCR陽性者数は約34万人超、死者約4,700人となっている。

 2021年1月現在は第3波の真っ只中で、東京など大都市では医療崩壊の危機ともいわれ、感染をいかに抑制するかが喫緊の課題となっている。すでに欧米を中心に多くの国々ではワクチンの接種が始まっており、イスラエルにおいては国民の約30%の接種が終了しているようだが、わが国でも2月から医療従事者への接種が始まり、つづいて高齢者の順に接種が行われる予定で、ワクチンによる集団免疫によりCOVID-19の制圧をめざす方向となっている。

 COVID-19だが、50歳未満の人はPCRが陽性になっても無症状や軽症で経過し、亡くなる人はほとんどいないが、高齢者や糖尿病・高血圧・心疾患・呼吸器疾患・腎疾患・がんなどの持病を持つ人は重症化しやすく、死亡率も高いため、注意が必要である。したがって、高齢者の感染をできるだけ減らす必要があり、中でもフレイル高齢者の感染はできるだけ避けなければならない。

 COVID-19の感染経路は、主に接触感染、飛沫感染で、一部エアロゾル感染もあり得ると考えられている。その具体的な感染対策については、厚生労働省のホームページから多くの団体からのものが公開されており、国立長寿医療研究センターからも高齢者に向けたハンドブックや活動ガイドが公開されている。

 また、老人介護施設などにおいてクラスターが発生すると介護現場が危機的な状況に曝(さら)されることが懸念されているため、日本老年医学会と全国老人保健施設協会は合同で、『介護保険施設における新型コロナウイルス感染症対応ガイド』を発出した。さらには、新型コロナウイルス感染症拡大下における在宅ケアを守るための対処方針が日本在宅ケアアライアンスから出されている。これらのほかにもさまざまな団体が、独自にさまざまな情報を発信している。このような情報が適切に活用されることが望まれる。

 COVID-19は人類に対して大きな挑戦状を突きつけている。このまま外出自粛による高齢者の身体不活発が持続すると、今後は元気な高齢者でもフレイルとなり、フレイル高齢者は要介護になったり、認知症になったりする可能性が高く、介護崩壊が起きる可能性が懸念される。

 したがって、本特集は「新型コロナウイルス禍のフレイル対策」として、感染予防という観点だけでなく、健康寿命の延伸という観点から、すべての高齢者が安心して活動でき、必要な医療・介護資源を活用できるようみんなで見守り合う、そんな社会に成熟することを期待して、それぞれの分野におけるエキスパートに執筆を依頼した。

 ぜひともご一読いただき、ご自分だけでなくできるだけ多くの人に読んでいただけるよう、本特集のことを広めていただければ幸いである。

著者

写真:筆者_荒井秀典先生
荒井 秀典(あらい ひでのり)
1991年:京都大学医学部大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)、同老年科医員、同助手、1993年:カリフォルニア大学サンフランシスコ校、1997年:京都大学医学部老年内科助手、2003年:京都大学大学院医学研究科加齢医学講師、2009年:同人間健康科学系専攻教授、2015年:国立長寿医療研究センター副院長、同老年学・社会科学センター長、2018年:同病院長、2019年より現職
専門分野
老年医学

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公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2021年 第30巻第1号(PDF:5.6MB)(新しいウィンドウが開きます)

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