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今冶タオル体操でまちを愛して元気に(愛媛県今治市)

公開日:2018年4月24日 13時48分
更新日:2019年2月 1日 15時21分

4歳児から78歳の愛好会メンバーが模範体操を披露。参加者も一緒に体操

「今治の吉永小百合です。よろしく」と愛好会会長

 「ゆっくり息を吸いながら腕を上げていきます」とご当地、今治の『木山音頭』が流れ、渡辺小百合さん(写真1)の大きな声が会場に響く。「タオルの力を使って大きく胸を伸ばします」。赤いTシャツに赤いバンダナ姿の今治タオル体操愛好会の4歳から78歳のメンバー約20人が模範体操をすると、会場の参加者も合わせて体動かす。この日参加した川又暁子さん(78)は愛好会創設期からのメンバーだ(写真2)。

写真1:今治タオル体操愛好会会長の渡辺小百合さん
写真2:愛好会創設期からのメンバーである川又暁子さん(78)。ひ孫さんもいらっしゃる

 ここは愛媛県今治市の郊外にある「しまなみアースランド 今治自然塾」の芝生広場。今日は第17回防災フェスティバルの集まり。1995年1月に起こった阪神・淡路大震災を契機に始まった防災フェスティバルの多彩なプログラムの1つに「今治タオル体操」がある。渡辺さんはイベント全体の総合司会も務めている。

 今治タオル体操愛好会会長の渡辺さんは会うなり「今治の吉永小百合です。よろしく」と笑いを誘った。今治タオル体操は、タオル1本あれば、子どもからお年寄りまで気軽に取り組める内容で、所要時間は約3分。全部で17種類の運動が組み込まれた体操だ。立った姿勢で行う「立位編」、いすや床に座って行う「座位編」、ロック調の曲に合わせて行う「ニューバージョン編」の3つがある。

 流れる音楽は、今治地方に古くから伝わる『木山音頭』をアレンジしたもの。木山音頭は、慶長7年(1602年)から行われた今治城の築城の際に普請奉行だった木山六之丞によって土木工事作業員たちの士気を高めるためにつくられたといわれる。

 今治タオル体操は、今治市の男女共同参画の取り組みから始まった。1999年に男女共同参画社会基本法が施行されたのを機に、「女性のパワーで今治を盛り上げるために何かできないか」と今治女性会議と今治生活文化女性塾との合同勉強会が開かれ、その集大成として「女性のパワーで今治を元気なまちにしたい。今治といえばタオル。タオルを使う体操をすると気持ちいい」ということから、1年かけて体操を独自に考えた。

 勉強会が開かれた1999年には、瀬戸内しまなみ海道の開通、2004年には今治城築城・開町400年祭、2005年には町村合併による新今治市の誕生など、まちを挙げてのビッグイベントが続いた。このことが今治タオル体操の誕生を後押した。

 勉強会から1年かけて、体操の長さと運動の種類、音楽やテンポ、衣装などについて話し合いながらつくり上げ、それを専門家の監修を経て完成させた。そして2000年10月に今治タオル体操を普及するボランティアグループ「今治タオル体操愛好会」が誕生した。

「たけしのみんなの家庭の医学」で話題に 震災被災者から出前の要望

 今治タオル体操愛好会の会員数は、4歳から82歳までの女性が150人。男性は「人前で体操するのは恥ずかしい」(渡辺さん)ためか、わずか2人。

 主な活動は、1.広報・啓発活動─FMラヂオバリバリが開局した2002年から週1回5分番組を任せられている、2.出前体操・イベント参加─依頼の電話があれば、タオルを持って学校、介護施設、各種団体などに出前体操に出向く、3.今治タオル体操コンテストの開催─動作の正確さを競う「規定部門」と、自由な振り付けによる独創性などを競う「創作部門」の2つがある。毎年10月頃に開かれる今治タオル工業組合(旧・四国タオル工業組合)主催の今治タオルフェアの期間中に開かれる、4.研修事業─個人でタオル体操を習いたい人の講座を毎月開催─などだ。2013年には、『今治タオル体操』というDVD付きの書籍を講談社から出版した。

 昨年(2017)11月には、地方自治法施行70周年記念として総務大臣賞を受賞した。「地場産品であるタオルのPRも兼ねて、タオルを使った体操を考案。地場産品のPRだけでなく、市民の健康づくりに寄与」というのが受賞理由だ。

 地元県紙である愛媛新聞をはじめ、2012年1月にはテレビ番組「たけしのみんなの家庭の医学」で紹介され、ある医学博士が「この体操は肩こりに効く」と言ったため、全国で大反響となって、愛好会はパニック状態になった。その後もNHK、テレビ東京、よみうりテレビ、BS-TBSなどでも紹介され、全国的に愛好会の名は知れ渡った。

 それまで年間20~30回の出前出張体操は一気に5倍になった。2013年、今治市役所は始業前に職員が行っていたラジオ体操をやめて「今治タオル体操」に切り替えた。

 また、2011年の東日本大震災で被災した岩手県宮古市の仮設住宅に暮らす被災者がたまたま「たけしのみんなの家庭の医学」の番組を見ていて、「ぜひ来てほしい」という電話があった。しかし、愛媛県は宮城県が救援県となっていたため、2012年には宮城県女川市、石巻市、翌13年には宮城県東松島市、名取市、気仙沼市に愛好会のメンバーが訪れて、海水浴場のがれき撤去などのボランティアを行うとともに、仮設住宅を訪れてお年寄りらとタオル体操で汗を流して被災者を勇気づけた。慣れない仮設住宅暮らしでは次第に口数も少なくなり、交流も薄れてきたが、愛好会が来て体操すると「笑いを思い出させてくれて、ありがとう」と感謝されたという。

 2017年3月にも熊本地震の被災地である熊本県嘉島町の仮設住宅を訪れて被災者を勇気づける様子は、4月にNHKニュース「おはよう日本」でも大きく報道された(写真3)。

写真3:熊本地震で被災された方々と仮設住宅前でタオル体操

 昨年(2017)は、第72回えひめ国体や第17回全国障害者スポーツ大会の開会式のエキシビションに出場した(写真4)。愛好会会員から「まさか自分が国体でタオル体操を踊るとは」と感動の声があった。同年11月、東京・JR有楽町駅前広場で開かれた「いやされて愛媛旅〜愛と姫の楽園〜」観光フェスティバルでも今治タオル体操を披露して会場を盛り上げた。

写真4:えひめ国体でタオル体操のエキシビション

 今治タオル体操愛好会の年会費は、正会員年2,000円、賛助会員年1,000円、企業会員年10,000円。オリジナルグズも多彩だ。オリジナルエコバッグ2種類1枚350円、タオル体操Tシャツ1枚1,600円、オリジナルシール1枚30円、せんべい1袋2枚入り130円、オリジナルタオル1枚650円(写真5)という具合だ。

写真5:「肩こりにええんよ〜」と体操の解説が入ったオリジナルタオルは、通常の80センチが100センチと長い

今治市はタオル生産、海事都市、月賦販売発症の地

 愛媛県北東部、瀬戸内海に突き出た先に今治市がある(図)。県庁所在地の松山市からJRで約1時間の気候温暖なちだ。広島県尾道市から美しい島々を経て今治市を結ぶ西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)は「サイクリストの聖地」ともいわれている。

図:愛媛県今治市

 岡田武史氏がオーナーのサッカーチームFC今治でも知られているが、日本最大の「海事都市」でもある。海事産業は海運業・造船業・舶用工業の総称で、14事業所がある造船業は建造隻数・建造量ともに日本一を誇る。国内の船舶の20%が今治で建造されている。

 また、「エヒメオーナー」(愛媛船主)といわれる外航船主は、北欧・香港・ピレウス(ギリシャ)と並ぶ世界の4大船主といわれている。日本の外航船の30%が今治市内の船主が保有している。この背景には中世の村上水軍の歴史との関わりも無視できない。

 また、今治は月賦販売発祥の地でもある。伊予商人は今治・桜井を中心にした。桜井が天領(幕府領)であることを活用して、西日本で「春は唐津、秋は紀州」と、佐賀伊万里や唐津陶器を大阪方面に送り、帰りの船で紀州黒江(海南市)の漆器を仕入れ、九州・四国・中国に行商した。明治末期から大正にかけて、先発隊が注文を取り、商品を配達し、集金してまわるという分業方式。この集金は月賦方式で行われ、ここに「月賦販売」が始まったとされている。

 桜井の綱敷天満宮に「月賦販売発祥記念の碑」が建っている。1980年の調査では、全国の月賦百貨店組合566人のうち、90%以上が今治を中心とする伊予商人で占めていた。

今治タオル奇跡の復活ドラマ 東京五輪をめざす今治タオル体操

 今から約90年前、今治は「東洋のマンチェスター」と呼ばれるほど日本の一大織物産地だった。しかし、1980年代後半から輸入品が激増して日本のタオル産業は苦境に立たされる。国内生産の5割以上を占めていた今治タオルも、1991年の50,456トンの生産量をピークに18年連続でマイナス成長となり、生産量は9,381トンと5分の1にまで落ち込んだ。

 タオルができ上がるまでには糸をより、染め、さらし、糊付けした糸で織る。そして糊抜きをしてプリントや刺しゅう、縫製などの加工をする。

 雨が少なく温暖な気候と豊かな水源に恵まれた今治は、古くから染色加工技術が発達してきた。今治平野を流れる蒼社川は高縄山系に源流をもち、その伏流水は硬度が低く良質で染色に適していることから、この地方の織物業を支えてきた。

 かつて日本にはタオル産地が5つあった。大阪の泉州、福岡の久留米、三重の伊勢地区、東京の青梅、そして今治だ。このうち現在も主力産地として残っているのはわずか今治と泉州だけになった。

 東京・六本木の国立新美術館やユニクロのロゴマークをデザインしたクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が2006年、今治タオルのブランディングを引き受けたのを契機に"奇跡の復活"を果たす。「いいモノをつくっているだけでは売れない」を、「いいモノをつくっているから売れる」に変えた。この話題はNHK「クローズアップ現代」など多くのマスコミでも紹介された(写真6)。その後、高品質で差別化を図った今治タオル戦略が功を奏し、2016年には12,036トン、国内シェア58.4%を占めるまで回復した。海外へのタオル輸出も2012年79トンから2016年163トンと倍増した。

写真6:テクスポート今治にある今治タオルショップ本店。カウンター後ろに佐藤可士和デザインの赤と青のロゴマークが見える

 このほどドイツの大手スポーツメーカー「アディダス」の高級スニーカーの内側に今治タオルが使用されることとなった。表地はイタリア製の高級素材を使用、内側は今治タオルの吸水性と快適性から使用されることとなった。アディダスは「日本とイタリアの素材を使って最高級スニーカーをつくりたい」という意向だったという。今治タオルの品質はすでに世界に認められている。

 渡辺会長は、東京オリンピックが開かれた1964年10月生まれとあって、五輪への思いは人一倍強く、「最大の夢は2020年の東京五輪の出場」と語る。「オリンピックの最中に生まれたのですから」。すでに中国語と英語バージョンのDVDも作成。「国際化の時代ですから」とにっこり。

 かつて1964年の東京オリンピックのときに流行った三波春夫の「東京五輪音頭」。2020年の東京オリンピックでは、この歌をアレンジして「新東京五輪音頭」として歌われることとなった。歌唱歌手は加山雄三と石川さゆり。

 渡辺会長は最後に「東京五輪の石川さゆりです」と手を振った。「小百合」さんはいろいろなご縁がある。

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health No.85

Aging&Health(エイジングアンドヘルス)No.85(新しいウィンドウが開きます)

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