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子ども、高齢者、障害のある人もない人も"ごちゃ混ぜ"で暮らせる街(石川県金沢市・白山市(社会福祉法人佛子園))

公開日:2020年8月31日 09時00分
更新日:2020年8月31日 09時00分

写真1:Share金沢の街並みの様子を表す写真。
写真1:Share金沢の街並み

地域の人とつくる多世代共生タウン「Share金沢」

 高齢者も若者も子どもも障害のあるなしにかかわらず"ごちゃ混ぜ"で暮らせる街─「Share(シェア)金沢」は、2014年3月、石川県金沢市郊外にオープンした。運営するのは同県白山市に本部を置く社会福祉法人佛子園(ぶっしえん)。

 約1万1,000坪の敷地の中に、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)、児童入所施設、学生向け住宅を配置。さらに、学童保育、共同売店、天然温泉、レストラン、ライブハウス付きカフェバー、キッチンスタジオ、農園、アルパカ牧場、全天候型(屋根付き)グラウンド、ドッグラン、訪問介護・高齢者デイサービスなど。施設外からも地域の人たちが集う街になっている(写真1、2)。

写真2:Share金沢の全景を表す写真。
写真2:Share金沢の全景

 Share金沢は、国が進めている日本版CCRC(Continuing Care Retirement Community)のモデルとして注目されている。日本版CCRCとは、健康なうちに移住し、介護が必要になっても移転することなく継続的ケアが受けられ、生涯活躍の場で、地域の中で多世代と共生する街づくりのこと。

 Share金沢を運営する社会福祉法人佛子園の始まりは、理事長(雄谷良成(おおやりょうせい)氏)の僧侶であった祖父が、白山市の日蓮宗の行善寺に戦災孤児や障害児を引き取り、寝泊りを共にしたことがきっかけだ。その後、1960年に知的障害児の入所施設として法人の認可を得た。1965年に白山市法人本部の敷地内に知的障害児の施設を建て、お寺の本堂で寝泊まりしていた子どもたちをそこで預かるようになった。それから半世紀を経て建物が老朽化。移転先を探していたところ、Share金沢の土地が見つかったのだという。

 「金沢に移転するに当たり、児童入所施設の障害を持つ子どもだけの場所でなく、地域の人たちも集える場所にしたい。子どもたちの生活を見守り支えてくれる担い手となる人たちに一緒に住んでもらいたいと考えました」と話すのは、Share金沢施設長の奥村俊哉さん。

 「子ども、学生、高齢者がいれば多世代がそろう」と考え、「学生向け住宅」と「サ高住」をつくった。Share金沢の周辺は大学が多く集まる文教地区。学生向け住宅をつくり、施設内での月30時間のボランティアを条件に家賃を相場の半分にした。学生は障害のある子どもたちと一緒に食事をとるなど、自由にボランティアの種類を選択している。

 高齢者の住まいとして取り入れたサ高住。現在、総数32世帯の約半分が県外都市部からの移住者だという。「近隣からの移住を予想していたので、まったくの想定外でした」と奥村さん。

 サ高住の高齢者にはできるだけ元気に活動してもらえるよう、Share金沢や地域でのボランティアをお願いしている。共同売店はサ高住の住民によって運営されている(写真3)。庭作業の得意な人は樹木の管理。ヘルパーの資格を取り、高齢者デイサービスでボランティアをする人もいる。

写真3:サ高住の住民で共同運営する「若松共同売店」で子供が買い物をする様子を表す写真。
写真3:サ高住の住民で共同運営する「若松共同売店」

 敷地にフェンスがなく行動が制限されないため、知的障害のある子どもたちはいろいろな人と関わることができる。それによって子どもたちの"問題行動"が目に見えて少なくなっているという。

 また、地域の人が集まる場として、天然温泉を地域住民に開放した。併設のレストランは大きな窓から街の景色を楽しめる憩いの場所。ライブハウス付きカフェバーではコンサートが開かれ、地域の住民が集う(写真4)。レストランや配食サービスの厨房には、障害者が一緒に働く姿。アルパカ牧場のアルパカの世話も彼らの担当だ。

写真4:share金沢内にあるライブハウス付きカフェバーで開かれたコンサートに地域の住民が集う様子を表す写真。
写真4:ライブハウス付きカフェバー。音楽もお酒も楽しめる

 Share金沢は2017年3月でオープン4年目を迎えた(掲載当時)。「地域の方々が変わってきていると実感します。今年春、保育士の免許を持つ主婦グループが、ここで子どもの一時預かりの託児所を始めました。地域の課題を自らが解決するために、『Share金沢を利用してやってみよう』と考える方が増えたのがありがたい」と奥村さんから笑みがこぼれる。

 さらに、施設内の「ドッグラン」や「屋根付きバス停」などは地域住民の要望を取り入れたもの。Share金沢は障害者や高齢者の福祉施設でありながら、住民自治の場、地域コミュニティ形成の場として定着している。

 奥村さんは今後の課題として「サ高住の高齢者をShare金沢に住みながら看取りまでの医療にしっかりつないでいくこと」を挙げた。サ高住での看取りは、全国でもまだ3割ほどの施設でしか行われていない。医療に関する取り組みは白山市の佛子園本部のプロジェクトで動き始めている。

B's行善寺」を中心に街全体を"ごちゃ混ぜ"に

 Share金沢から車で30分ほどの白山市の佛子園本部。その周辺地域で始まったのが「B'sプロジェクト」。すでにある街の中に、障害者グループホーム、学生向けシェアハウス、サ高住を点在させ、1万人規模の街全体を、いろいろな人が"ごちゃ混ぜ"で暮らせるShare金沢のような街にする。障害のある人もない人も、老若男女、いろいろな人が自然に集まる場所を中心に、人と人との関わりを通して、誰もが居心地のいい街づくりをめざすプロジェクトだ。

 その中心となる施設が、2016年秋に全面オープンした「B's行善寺」。佛子園本部の敷地内にあり、Share金沢に移転した児童入所施設の跡地に建てられている(写真5)。

写真5:「B's行善寺」の園庭を表す写真。
写真5:「B's行善寺」。放課後、園庭は子どもたちでいっぱい

 B's行善寺の1期工事で2015年春に完成した「三草二木(さんそうにもく)行善寺」には、天然温泉、食事処、高齢者デイサービスなど。2期工事で2016年秋に完成した複合施設「B's」には、地域密着型ウェルネス(スポーツジム)、温泉熱利用の屋内プール、小規模保育園、クリニック、花屋などがある。

 B's行善寺にはひと月に約3万人、1日に約1,000人が訪れる。福祉関係の利用者の2倍ほど地域の人の利用がある。施設のオープニングセレモニーの段取りは、町内会長をはじめとした地域の人がすべて担当し、従業員募集の際も町内会の回覧板で情報を流してくれたという。現在、従業員120名うち60名は地域からの雇用だ。「地域の人はB's行善寺を"自分たちの施設"として捉えてくれるのがありがたい」と話すのは、B's行善寺代表の速水健二さん。

 本部周辺には障害者グループホームが12軒ある。10年ほど前にグループホームを計画した際は、反対する住民が少なからずいたという。「自宅の隣に施設が来るのは不安だ」という人に、知的障害者の生活を知ってもらえるよう、説明会を何度も開催した。さらには職員が町内会活動や葬儀の手伝いなどに積極的に参加し、地域との関わりを持った。数年経つと、街の会合に声がかかるようになり、地域の人の力を借りずには実現がむずかしいことも、街の人が積極的に手を貸してくれるようになった。今では街の人が佛子園の大応援団だ。

できるだけ見守り人の主体性や力を引き出す

 1期工事でオープンした「三草二木行善寺」には、住民が集う場として天然温泉を設けた(写真6)。近隣の120世帯は入浴料が無料。「温泉無料地域に家を建てたい」と世帯数も増えてきている。

写真6:行善寺温泉の入り口にある近隣世帯の名前が記載された入湯札の写真。
写真6:行善寺温泉の入り口にある「入湯札」。近隣世帯の名前が記載されている。「いつも来る人がしばらく来ない」と気づくことで見守りにもつながる

 食事処「行善寺やぶそば」には、お風呂上がりにビールを飲む人の姿。大人も子どもも高齢者も障害のある人も"ごちゃ混ぜ"状態。街の居酒屋にはない光景だ(写真7)。お母さんが髪を乾かす間、ここで誰かが子どもをみてくれる。徒歩圏内にあるグループホームから障害のある人も自由に訪れる。ビールで酔ったお父さんの代わりに、障害のある人が子どもたちの面倒をみている光景もあるという。

写真7:食事処「行善寺やぶそば」で大人も子どももごちゃ混ぜ状態で過ごす様子を表す写真。
写真7:「行善寺やぶそば」。大人も子どもも"ごちゃ混ぜ"状態

 「ごちゃ混ぜのいい雰囲気をつくってくれるのが、障害のある方だったりします。彼らの"つなぎ力"はすごいです」(速水さん)

 併設の高齢者デイサービスでは、認知症の高齢者でも仕事がしたい人には仕事をしてもらい、給料を支払っている。たとえば、しめ縄を編める人には仕事として編んでもらう。その給料で介護サービス利用料を払い、残りのお金でお孫さんにプレゼントを買ってあげる人もいるそうだ。

 高齢者デイサービスではプログラムを決めず、運動をしたい人、温泉に入りたい人など、利用者の意向を尊重している。グループホームから障害のある人が来ているときも同じだ。スタッフは無線で連絡し合って見守っているため、利用者は自由に動ける。

 地域の人との関係づくりで心がけているのは、「じっくり待つこと」と速水さん。「温泉にそれぞれ自分のシャンプーを持ってくるので、廊下に滴(しずく)がぽたぽたと落ちてしまいます。それをみなさんに『滴を拭いてください』というのではなく、『滴が落ちるんですよね...』で言葉を止めておきます。そうすると、『子どもたちと一緒に大掃除大会をしよう』と街の人が計画してくれたりします」

 地域の人、高齢者、障害者をできるだけ見守ってその人の主体性や力を引き出していく。地域の中ではそれぞれがみな役割を持っている。佛子園は黒子になってそれを支える。それが佛子園のサポートの手法だ。

健康を生涯にわたって見守る「かかりつけウェルネス」

 2期工事で2016年秋にオープンした地域密着型ウェルネス、「GOTCHA! WELLNESS」(ゴッチャ!ウェルネス)。いわゆるスポーツジムだが、スポーツだけでなく健康全般に及んでサポートする意味で「ウェルネス」とした。

 "ゴッチャ"には2つの意味ある。「I got you」の"みつけた""わかった"の造語。もう1つは"ごちゃ混ぜ"という意味。赤ちゃんから高齢者、障害のある人も、すべての住民がごちゃ混ぜに関わるウェルネス。1人ひとりの健康を生涯にわたって見守る「かかりつけウェルネス」をめざしている。

 月額4,000円でジム、プール、温泉が使用できる。「地域には運動や健康が必要な方がもっといるはず。誰もが通いやすい価格・環境設定を意識しました」と話すのはウェルネス統括マネージャーの野竹厚さん。

 登録会員約600名で、全体の約3割が家族で登録している。1日の利用者数は会員の半数の300名ほどで、家族みんなで使えることが利用率の高さにつながっている。会員の他、施設内の高齢者デイサービス、小規模保育園の子どもたち、近隣のグループホームの障害者も自由に使用できる。

 一般のジムのように、大人だけで黙々と運動に励む雰囲気ではない。子どもの笑い声、会話を楽しみながら体を動かす高齢者、車いすに乗りながら上半身を鍛える人。奥のスタジオでは「姿勢をよくするバレエ教室」が開かれている。インストラクターは地域の人だ(写真8)。

写真8:ジム「ゴッチャ!ウェルネス」内の様子を表す写真。
写真8:「ゴッチャ!ウェルネス」。笑い声と会話が絶えない明るい空間

 この日、障害者グループホームから来ていたK君にスタッフや利用者が親しく声をかけていたのが印象的だった。彼がいると一気に場が和む。これが速水さんの言う"つなぎ力"だろう。

 特徴的なのは、ウェルネスでは縦割りのルールを設けていないこと。たとえば、「危険だからダメ」、「あなたはこのプログラムには参加できない」など、年齢や身体能力で制限することはない。そして大切にしているのは、サービス提供者と受益者の関係をつくらないこと。利用者とスタッフが一緒になり、誰もが過ごしやすいウェルネスをつくっていく姿勢だ。

クリニック開業でサポート体制がさらに広がる

 2017年4月に施設内に「B'sクリニック」が開業した。現在は週1回、金沢大の医師が診察をしている。来年には診察日を増やす予定。地域の保健室として、佛子園の看護師がいつでも健康の相談を受ける。医師と看護師は白衣ではなく私服を着用して、患者との垣根を取り払っている。

 たとえば、患者が高血圧と診断された際には、薬を出す前にまずウェルネスでの運動や温泉、栄養士からの食事指導や地域行事などへの参加で人との関わりや生きがいを見つけることで健康につなげていくというアプローチを行う。

 野竹さんは「ウェルネスでは医療としっかり連携して、医療面からの利用者の評価、トレーナーからみた評価を総合的にかけ合わせて、その人にふさわしい運動支援を確立していきたい」と意欲をみせる。

 今後、B'sクリニックの体制が整えば、Share金沢での医療サポートにクリニックを利用できる。クリニックの開設によってサポートの可能性はさらに広がる。

 "ごちゃ混ぜ"から生まれる効果は無限大だ。Share金沢のように新しい敷地に施設をつくるのがむずかしい場合でも、B's行善寺のように、今ある街の地域全体を"生涯活躍の多世代共生の街"にしていく取り組みは、どの地域でも実践できる可能性がある。佛子園の取り組みは日本版CCRCの先駆的なモデルといえる。

 佛子園は、Share金沢やB's行善寺の他にも、同県輪島市、小松市などでも"地域活性化のごちゃ混ぜの街"プロジェクトを展開している。職員は人材育成事業として、1人1つの新規事業の計画を立てるという。ウェルネス事業もその1つだそうだ。200人の職員がいれば200通りの事業構想が持ち上がり、それらを組み合わせれば、また新たなプロジェクトが生まれる。佛子園のこれからの新しい展開が楽しみだ。

(2017年7月発行エイジングアンドヘルスNo.82より転載)

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