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派遣報告書(大須賀洋祐)

派遣者氏名

大須賀 洋祐(おおすか ようすけ)

所属機関・職名

東京都健康長寿医療センター研究所・研究員

専門分野

老年運動学

参加した国際学会等名称

International Conference on Frailty and Sarcopenia Research 2020

学会主催団体名

International Academy Nutrition and Aging

開催地

フランス トゥールーズ

開催期間

2020年3月11日から2020年3月13日まで(3日間)

発表役割

ポスター発表

発表題目

Effects of exercise and beta-hydroxy-beta-methylbutyrate supplementation on muscle thickness and quality in women with muscle atrophy: Secondary analyses of a randomized, double-blind, placebo-controlled trial

筋萎縮女性における運動実践とbeta-hydroxy-beta-methylbutyrate補充が筋厚と筋質に及ぼす効果:二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験の二次解析

目的

 運動実践とロイシンの代謝産物であるbeta-hydroxy-beta-methylbutyrate(HMB)補充の併用プログラムは、サルコペニアやフレイルの予防・治療策の一つとして期待されているが、筋萎縮がみられる高齢者の筋厚や筋質に及ぼす影響は、十分に検証されていない。本研究は、筋萎縮高齢女性を対象に、運動実践とHMB補充による筋厚と筋質への単独、相加、相乗効果を検証すべく、二次解析をおこない、その結果を報告した。

方法

  • デザインとセッティング
    • 東京都健康長寿医療センター研究所において二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験を実施した。
  • 研究参加者と割付
    • 骨格筋指数が5.7㎏/㎡未満の高齢女性156名を4群(運動+HMB群、運動+プラセボ群、健康教育+HMB群、健康教育+プラセボ群)に無作為に割り付けた。
  • 二次解析項目
    • 二次解析項目は筋厚および筋質の変化量とした。筋厚は、Bモード法(Mysono U6, Samsung Medison)を用いて大腿四頭筋中位の超音波画像を撮影し、電子キャリパーを用いて大腿直筋および中間広筋の厚さを測定した。筋質は筋輝度から評価した。筋輝度は、専用ソフトウェア(Adobe Photoshop CS6 version 13.0; Adobe Systems)を使用して大腿直筋の超音波画像を0(黒)から256(白)までのスケールで示した。
  • 介入
    • 運動は、監視型のレジスタンストレーニングを週に2回、12週間提供した。HMB(1,200㎎)またはプラセボは、毎日摂取するよう求め、摂取状況を記録するよう求めた。健康教育は、振込詐欺防止対策、音楽療法等のプログラムを提供した。

結果

 156名中149名がintention to treat解析に組み入れられた。対応のあるt検定を用いて、介入前後の各測定値を比較した結果、運動+HMB群および運動+プラセボ群のみ、中間広筋が有意に増加していた。一方で、二元配置分散分析の結果、筋厚(大腿直筋、中間広筋)および筋輝度(大腿直筋)の変化量に、有意な交互作用(運動×HMB)と主効果(運動またはHMB)はみられなかった。

考察

 筋萎縮高齢女性では、運動実践とHMB補充による筋厚・筋質への単独、相加、相乗効果はみられなかったため、運動実践やHMB補充の有効性は確認できなかった。今後は、より精度の高い画像撮影技術(CTやMRIなど)を用いて有効性を再検証する必要がある。

派遣先学会等の開催状況、質疑応答内容等

本大会は、旧トゥールーズ大学病院であるHôtel Dieu de Toulouseで開催された。歴史的な建造物の中での発表は、重厚で神秘的な雰囲気に包まれていた。残念ながら、新型コロナウィルスの影響で、参加者は800名中200名程であったが、その分、密なディスカッションに充てる時間を多く確保できたため、有意義な発表となった。特に、HMBの有効性に関する関心度は高く、筋厚や筋輝度以外の評価項目への影響に関する質問を多く受けた。また、筋輝度のデータは、大腿部だけでなく下腿部のデータを収集・解析すると良いというコメントがあり、今後の参考となった。

写真:平成31年度第2期国際学会派遣事業派遣者:大須賀洋祐氏が発表ポスターの脇に立って写した写真

本発表が今後どのように長寿科学に貢献できるか

 本発表は、筋委縮高齢女性における非薬物療法(運動と栄養)によるサルコペニアの予防法として、RCTによるエビデンスを報告したものであり、今後、ガイドライン等に役立てられると考えられる。