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派遣報告書(渡邊一久)

派遣者氏名

渡邊 一久(わたなべ かずひさ)

所属機関・職名

名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学・大学院生

専門分野

老年医学

参加した国際学会等名称

The 11th IAGG Asia Oceania Regional Congress 2019

学会主催団体名

International Association of Gerontology and Geriatrics

開催地

台湾 台北

開催期間

2019年10月23日から2019年10月27日まで(5日間)

発表役割

その他(シンポジウム)

発表題目

Association between dysphagia and unplanned hospitalization in elderly patients receiving home medical care

在宅高齢患者における嚥下機能と予期せぬ入院の関連

目的

 慢性疾患を持つ高齢者の在宅医療は、日本においてますます重要な課題となっている。在宅医療を支援し、日常生活やquality of lifeに悪影響を及ぼす予期せぬ入院を回避する必要がある。本研究では、嚥下機能と在宅医療を受けている高齢患者における予期せぬ入院に関連があるかどうかを検討した。

方法

 今回の研究では、名古屋市で在宅医療サービスを受けている高齢者の健康を調査した「ONEHOME」研究を用いて、名古屋市とその周辺における観察調査で得られたデータを解析した。分析されたデータは、患者の年齢、性別、投薬数、嚥下障害重症度尺度(Dysphagia Severity Scale; DSS)、Charlson Comorbidity Index(CCI)、 Barthel index、Mini-Nutritional Assessment-Short Form、Frailty Indexと認知症自立度である。DSSは嚥下障害のリスクの有無に分類された。初回入院までの嚥下障害と日数との関連は、cox回帰分析によって解析された。

結果

 178人中86人が4年間の研究期間中に入院した。年齢、性別、CCI、Barthel indexおよびMNA-SFで調整を行ったcox回帰分析では、DSSスコアが低いことが予期せぬ入院と有意に関連していることを示した。

考察

 嚥下障害のリスクは、在宅医療を受けている高齢者における初回の予期せぬ入院を予測する。患者の嚥下機能は予後を推定する重要な要因である。

派遣先学会等の開催状況、質疑応答内容等

上記発表をThe 11th IAGG Asia Oceania Regional Congress 2019submitted symposium; Message from home medical care on Japanにて行った。台湾を中心とし、中国、韓国などアジア・アセアニアの医師が参加して活発な議論のもと展開された。質疑応答の内容としては、Modified Water Swallowing Testの詳細、当院での嚥下機能評価ワークショップの内容について質問があがった。

写真1:学会会場の台北国際会議場の外観を写した写真写真1:会場(台北国際会議場)
写真2:学会会場の台北国際会議場のロビーにある学会の看板を写した写真写真2:会場ロビー(台北国際会議場)
写真3:平成31年度第2期国際学会派遣事業派遣者:渡邊一久氏が共演者3名と写した写真写真3:共同演者との集合写真
写真4:平成31年度第2期国際学会派遣事業派遣者:渡邊一久氏が発表会場の大型スクリーンの脇に立って写した写真写真4:発表風景
写真5:平成31年度第2期国際学会派遣事業派遣者:渡邊一久氏が壇上で発表している姿を写した写真写真5:発表風景

本発表が今後どのように長寿科学に貢献できるか

 本邦における老年医学の専門性は,高齢者に多い急性疾患,慢性疾患を高齢者の特性に基づいて専門的に診療できることはもちろんのこと,介護予防からエンドオブライフケアまで,高度先進医療や救急医療を扱う中核病院での診療から,亜急性期,慢性期の病院,施設での診療や在宅診療まで,広範な守備範囲を要求されていることにあると考える。一方でエンドオブライフケアに関しては在宅医療の重要性がますます高まっている。

 従来の臨床研究は、訪問診療がターゲットにしているような超高齢者や多臓器疾患のある患者は対象から除外したうえで、主に生命予後の延長を主要なアウトカムとして実施されてきた。しかしながら、従来型の臨床研究から得られたエビデンスをそのまま採用するのは困難であり、在宅医療のための臨床的なエビデンスの集積が求められている。今回のシンポジウムで我々が蓄積してきたコホート研究のデータの一端を発表し、海外の先生と議論をすることができた。今後も国内外にエビデンスを提示できるよう研鑽を続けたい。

 また私個人としては、各国の先生との議論を通じて、臨床家として,研究者として今後本邦の老年医学の発展に資するため,見識を広げる機会になった。今回が初めての英語での研究発表であったが、参加者の先生方より質問をいただき、さらなる学習の必要性を感じた一方で、アジアの先生方に当教室の研究成果の、その有用性・必要性をお伝えできた充実感を得ることができた。