長寿科学研究に関する情報を提供し、明るく活力ある長寿社会の実現に貢献します。

平成29年度若手研究者表彰事業 長寿科学賞受賞者について

写真:長寿科学振興財団長寿科学賞第18回若手研究者表彰式の写真

 平成29年度若手研究者表彰事業における「長寿科学賞」受賞者が決定しました。平成29年11月15日(水)名古屋マリオットアソシアホテルにおいて、第18回若手研究者表彰式が開催され、受賞者には表彰状、表彰盾、副賞(研究費100万円)が贈呈されました。受賞者とその研究概要は以下のとおりです。

受賞者氏名

田久保 圭誉 氏

所属機関・職名

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター研究所 プロジェクト長

研究課題名

造血幹細胞のエイジングの分子機構の解明とその応用

研究期間

平成15年度~平成28年度

研究内容及び研究成果の概要

 老化の基礎研究においては、線維芽細胞をはじめとする培養細胞の細胞老化の分子機構の解明が進んできており、老化の分子機構の理解に重要な示唆を与えてきた。近年、臓器内に存在して分化細胞を供給する幹細胞が加齢変化を示し(ステムセルエイジング)、その結果臓器機能の低下や加齢関連疾患の発症につながることが明らかになってきている。しかし、培養細胞や分化細胞の細胞老化で得られた知見と、ステムセルエイジングの分子機構や意義の異同は明らかではなかった。これまで受賞者は造血幹細胞をモデルとしてこれらはステムセルエイジングの分子機構の一端を明らかにしてきており、1.骨髄の低酸素微小環境が造血幹細胞において低酸素センターHIF-1αを活性化して細胞周期の過剰な活性化を抑制し、造血幹細胞エイジングを抑制していることを報告し、また2.造血幹細胞のHIF-1α活性化を通じた解糖系優位の代謝特性が造血幹細胞を健全に保つために必須であることを同定した。さらに、3.線維芽細胞に老化を誘導するp38MAPK経路は造血幹細胞ではプリン体代謝を活性化して長期にわたる幹細胞機能の維持に必要であることを同定した(代表論文)。

代表論文

Karigane D, Kobayashi H, Morikawa T, Ootomo Y, Sakai M, Nagamatsu G,Kubota Y, Goda N, Matsumoto M, Nishimura EK, Soga T, Otsu K, Suematsu M, Okamoto S, Suda T, Takubo K. p38α Activates Purine Metabolism to Initiate Hematopoietic Stem/Progenitor Cell Cycling in Response to Stress. Cell Stem Cell. 2016 Aug 4;19(2):192-204.

写真2:長寿科学振興財団長寿科学賞第18回若手研究者表彰式の写真(会長と田久保氏)