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令和7年度若手研究者表彰事業 長寿科学賞受賞者(浜田将太)

浜田将太氏の表彰式の様子を表す写真。

受賞者氏名

浜田 将太 氏

所属機関・職名

一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 担当部長

所属学会

日本老年薬学会

研究課題名

要介護高齢者の薬物治療適正化に向けた薬剤疫学研究

研究期間

令和元年度~令和6年度

研究内容及び研究成果の概要

 高齢者における医療上の課題のひとつとして、薬物有害事象のリスク増大等につながるポリファーマシー(不適切な多剤処方)がある。今後、さらに高齢化が進むことも踏まえると、ポリファーマシーの解消は臨床的に重要なだけではなく、保険財政負担軽減の面からの社会的な要請も高い。そこで、特にハイリスクな集団である要介護高齢者に焦点を当て、ポリファーマシーの実態把握を通して課題の明確化を行ってきた。

 全国規模のレセプトデータベース(NDB)を用いて、在宅療養高齢者のポリファーマシー状況の経年変化について検討し、高齢者に特に慎重な投与を要する薬物(PIMs)の処方が全体的に減少傾向にあることを示した。一方で、認知症者に対する抗精神病薬の処方は依然として課題であること、プロトンポンプ阻害薬の処方増加といった新たな課題も生じてきたこと等を見出した。また、生命予後が限られる場合、症状改善薬の優先度が高くなることから、将来的な疾患の発生予防を目的とした薬剤を終了することで、ポリファーマシーを回避できる可能性を提示した。

 介護老人保健施設(老健)の全国調査に基づき、向精神薬や抗コリン作用を有する薬剤等の処方に改善の余地がありうることを示した他、老健への報酬支払いの仕組みから関心の高い薬剤にかかる費用の状況についても報告した。さらに、介護施設入所者の薬物治療に関する国際共同研究に参画し、国ごとの薬物治療アプローチの違いから薬物治療適正化の糸口を探っている。

 今後は、ポリファーマシーの解消に向けた介入方法の確立や実装といった次のフェーズの研究にも取り組みたい。また、2024年5月に日本老年薬学会から発表された提言にあるように、介護負担を考慮した服薬簡素化(服薬回数の減少)という新たな視点を取り入れた研究も進め、高齢者の医薬品適正使用の推進に貢献していきたい。

代表論文

ケアマネジャーのワーク・エンゲイジメントと関連概念との関係性の検討―仕事における活動水準と仕事に対する認知の2軸から―

受賞者

はまだしょうた氏の写真。
浜田 将太(はまだ しょうた)
一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 担当部長
略歴
2005年:広島大学 医学部 総合薬学科 卒業、2007年:同 大学院医歯薬学総合研究科 博士課程前期 修了、2007~13年:製薬企業 研究開発・薬事職、2010年:京都大学大学院医学研究科 専門職学位課程 修了、2013年:同 博士後期課程 研究指導認定退学、2013~14年:京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学分野 特定助教、2014年:博士(社会健康医学)(京都大学)、2014~16年:英国キングス・カレッジ・ロンドン 客員研究員、2016年:医療経済研究機構 研究部 研究員、2024年より担当部長(現在に至る)、2019年:筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野 客員准教授(現在に至る)、2020~25年:東京大学大学院医学系研究科 在宅医療学講座 特任助教

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