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令和7年度若手研究者表彰事業 長寿科学賞受賞者(豆野智昭)

豆野智昭氏の表彰式の様子を表す写真。

受賞者氏名

豆野 智昭 氏

所属機関・職名

大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座 助教

所属学会

日本老年歯科医学会

研究課題名

加齢に伴う身体的機能の衰弱過程において口腔機能が果たす役割

研究期間

令和6年度~令和7年度

研究内容及び研究成果の概要

 口腔の健康とフレイルとの間には縦断的な関連性が示されており、口腔機能は高齢者のフレイルの修正可能な予測因子として重要視されている。しかし、口腔機能とフレイルとの関連において、そのメカニズムに関するエビデンスは未だ十分に確立されておらず、さらなる研究が求められている。発表者は、70歳および80歳代の地域在住高齢者を対象として行う縦断調査を基に、口腔機能が食事や栄養摂取、身体的・精神的・社会的側面から、フレイルの発症ならびに進行に及ぼす影響を多面的に検証することを目的に研究を行っている。本課題に関する主な研究成果は以下の2点である。

 (1)293名の地域在住高齢者を対象とした9年間の縦断分析の結果、緑黄色野菜と肉類の摂取量は歯数と関連し、さらに、これらの食品摂取量が認知機能と関連していることが明らかとなった。本結果から、歯数を維持することが食事の選択肢を広げ、それを介して認知機能の維持に寄与することが示唆された。

 (2)75歳以上の地域在住高齢者478名を対象とした横断分析では、咬合力や咀嚼能率、舌圧といった口腔機能が精神的健康に及ぼす影響について検討した。その結果、口腔機能は果物・野菜類の摂取および社会的交流を介して、精神的健康に間接的に関連していることが明らかとなった。これは、口腔機能の低下が食事の質の低下を招くだけでなく、社会的交流の機会を制限し、心理的ストレスの増加や抑うつ症状の発現につながる可能性を示している。

 以上の結果から、口腔機能は栄養摂取や社会的交流を通じて、高齢者の健康要因に多面的に関与することが示唆された。本研究では、今後も口腔機能が栄養を介してサルコペニアや身体的フレイルへ及ぼす影響を検討し、フレイル予防のための包括的なアプローチの確立を目指す。

代表論文

  1. Mameno T, Moynihan P, et al. Exploring the association between number of teeth, food intake, and cognitive function: A 9-year longitudinal study. J Dent. 2024;148:105144..
  2. Mameno T, Moynihan P, et al. Mediating role of fruit and vegetable intake and social interaction between oral function and mental health in older adults aged ≥75 years: The SONIC study. J Prosthodont Res. 2025; in press.

受賞者

まめのともあき氏の写真。
豆野 智昭(まめの ともあき)
大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座 助教
略歴
2014年:大阪大学歯学部卒業、2014年:大阪大学歯学部附属病院 咀嚼補綴科 研修医、2015年:大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 入学(2019年修了)、2019年:大阪大学歯学部附属病院 咀嚼補綴科 医員、2019年:大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 助教(2023年より、「有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座」へと講座名変更)、現在に至る

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