長寿科学研究に関する情報を提供し、明るく活力ある長寿社会の実現に貢献します。

令和7年度若手研究者表彰事業 長寿科学賞受賞者(田中友規)

田中友規氏の表彰式の様子を表す写真。

受賞者氏名

田中 友規 氏

所属機関・職名

東京大学 未来ビジョン研究センター・高齢社会総合研究機構 特任講師

所属学会

日本老年医学会

研究課題名

フレイルの多面的予測因子の解明に基づく住民主体・データ駆動型フレイル予防活動の開発と推進に関する研究

研究期間

平成25年度~令和6年度

研究内容及び研究成果の概要

 フレイル予防には、地域全体での啓発と活動推進により予防行動を促し、進行している個人を特定し専門的な介入を行う体制整備が求められる。本研究は、産官学民の連携を通じ、【研究1】フレイルの多面的な予測因子の解明と、【研究2】住民主体・データ駆動型のフレイル予防活動の開発・有用性の検証を行った。

【研究1】では、千葉県柏市のコホート研究(柏スタディ)を活用し、地域在住高齢者のフレイル発症要因を検討した。主な成果として、1.社会性の低下が身体的フレイルを引き起こす構造モデルの構築、2.オーラルフレイルの健康リスクの同定と評価手法の開発、3.ポリファーマシー・不適切処方・抗コリン薬負荷量と身体的フレイル発症との関連を明らかにした。これらの成果は、社会参加、口腔機能維持、処方適正化等の重要性を示唆する。

【研究2】では、住民主体のフレイル予防活動の開発と有用性検証を実施した。特に、【研究1】の成果に加えて、4.サルコペニアの簡易スクリーニング指標(指輪っかテスト、家庭用体組成計)を基盤とし、東京大学高齢社会総合研究機構が開発した「フレイルチェック」を活用した。5.フレイルチェックを用いた自立喪失予測法の開発、6.フレイルチェックの介護予防への有用性検証、7.保健事業と介護予防の一体的実施の応用、8.オーラルフレイルを軸とした地域介入の実践を行った。

 これらの成果は、住民主体の活動とデータ駆動型の手法を組み合わせ、地域全体でのフレイル予防の可能性を大きく広げる革新性を持つ。特に、研究1で見出した多面的な予測因子への対応も含め、地域でも簡便に実践可能な多面的なフレイルの側面を評価する手法や活動と科学的エビデンスに基づく取り組みは、人口高齢化先進国における新たな予防戦略として大きな貢献が期待できる。

代表論文

Tanaka T, et al. Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018 10;73(12): 1661-1667.

受賞者

たなかともき氏の写真
田中 友規(たなか ともき)
東京大学 未来ビジョン研究センター・高齢社会総合研究機構 特任講師
略歴
東京大学 未来ビジョン研究センター・高齢社会総合研究機構 特任講師。東京大学大学院医学系研究科にて博士(医学)、高齢社会総合研究プログラム修了(GLAFS)、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科にて修士(健康マネジメント学)を修了。東京大学高齢社会総合研究機構にて学術支援専門職員(常勤)、日本学術振興会特別研究員、東京大学高齢社会総合研究機構 特任研究員および特任助教を経て現職。 他、千葉県柏市特別職(分析アドバイザー)を兼任

若手表彰事業について

若手研究者表彰事業