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新型コロナウイルス禍と高齢者の栄養

 

公開月:2021年4月

葛谷 雅文(くずや まさふみ)
名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学教授

はじめに

 新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019COVID-19)と栄養の関係は種々の切り口がある。ここでは、重症化と栄養状態の関係、COVID-19発症による栄養状態への影響、微量栄養素、新型コロナウイルス禍における栄養の問題などを取り上げる。

 なおライフステージによりCOVID-19と栄養との関連は異なる可能性があり、今回は成人から高齢者を対象として考えたい。通常では栄養状態の健康への影響は成人と高齢者では大きく異なる状況があり1)COVID-19の流行期においてもその違いが存在する。

COVID-19重症化と栄養との関連

 COVID-19の重症化(ICU使用、肺炎、人工呼吸器の使用、急性呼吸窮迫症候群、死亡)との関連因子をメタ解析(16論文、n=3,994、年齢中央値:41-59.7歳)した結果では、高血圧、糖尿病、心血管病、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病がリスクとして抽出されたが、死亡リスクに限ると糖尿病のみが有意なリスクであった2)

 一方、米国の26医療機関でCOVID-19罹患者の中でBMI≧30kg/m2または肥満と診断されている対象者(n=8,641、平均年齢:49.68歳)のBMI<30kg/m2または肥満の診断がない罹患者(n=31,273、平均年齢:49.87歳)と比較すると、発症30日以内の死亡または人工呼吸器使用に関する相対リスクは1.99(95%CI:1.84-2.15)であった。傾向スコアマッチング法を用いた解析でも、肥満群は非肥満群に比しての相対リスクは1.56(95%CI:1.41-1.73)であった3)。肥満(BMI≧30kg/m2)とCOVID-19の重症化に関する30論文のメタ解析(対象:成人)でも、多変量解析で肥満の存在は入院、ICUの使用、人工呼吸器の使用、死亡のリスクであった4)

 以上より、少なくとも成人ではCOVID-19の重症化と肥満、糖尿病などの過栄養状態との関連があることがわかる。

 一方で、フランスの大学病院の一般床に入院しているCOVID-19患者で、入院時に栄養評価がされていた連続114名(平均年齢:59.9±15.9歳)のうち42.1%が低栄養(the GLIM criteriaで評価)で、そのうち中等度、高度の低栄養はそれぞれ23.7%、18.4%であった5)。2020年1月~2月に中国武漢大学附属病院分院にCOVID-19で入院した435名の中で65歳以上、データ欠損がない182名(男性:65名、68.5±8.8歳)の入院時の栄養評価(Mini-Nutritional Assessment:MNA®)で低栄養、栄養リスクあり、と評価されたのはそれぞれ52.7%、27.5%であった。

 低栄養の関連因子は多変量解析で低下腿周囲長や低血清アルブミンなどが上がっていた6)。通常平均年齢68歳代の高齢者ではMNA®で低栄養と評価される割合はもっと低く、例えば以前われわれが在宅療養中の要介護高齢者(n=1,142、平均年齢81.2歳)を対象とした評価でも低栄養と評価されたのは16.7%であり7)COVID-19で入院した高齢者の身体機能を含む入院前の状態は不明であるが、基本的に栄養不良な対象者がCOVID-19に感染した可能性がある。

 言い換えると、高齢者の場合は栄養不良状態の存在がCOVID-19発症のリスクである可能性がある。COVID-19に伴う炎症による代謝性ストレスがMNA®評価に影響を与えていることは明らかであるが、本研究で低栄養との関連として抽出された下腿周囲長は筋肉量を反映しており、急減な減少は想定しにくく、COVID-19罹患前より栄養不良が存在した可能性が高い。

 イタリアの一病院での65歳以上のCOVID-19患者の連続109例(年齢中央値83歳)の院内死亡(追跡期間8~15日の間に43名が死亡)との関連因子は、単変量解析では年齢、認知機能障害、高い炎症反応、栄養の高度~中等度リスクならびに血清アルブミン値、BMI、PaO2/FiO2比(酸素化指標)の低値であった7)。栄養評価はthe Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI=1.489×serum albumin(g/L)+41.7×現体重/理想体重(kg);リスクなし:GNRI>98、低リスク:GRNI92-98、高度~中等度リスク:GNRI<92)で評価した。多変量解析ではPaO2/FiO2比とGNRI評価で高度~中等度リスクのみが院内死亡と有意な関連死として抽出された8)

 しかし、栄養不良状態と死亡などの重症化との関連の報告はなお乏しく、今後の研究が待たれる。

COVID-19が引き起こす栄養障害

 COVID-19罹患中の体重減少が複数報告されている。総説にある3つの報告ではそれぞれのCOVID-19罹患者年齢は74歳[63-84歳:中央値(四分位範囲)]、59歳(50-68歳)、62±16歳(平均±SD)で、COVID-19罹患期間中、または過去1か月以内の体重減少が5%を超えたそれぞれの割合は52%(85%以上がICUで治療)、29%(一般床)、37%(一般床)であった9)

 原因としては、全身性の炎症による代謝性ストレスの増加、さらには食思不振が原因の摂食量の低下が主な要因と思われる。これらは体重の減少だけではなく、骨格筋量にも当然影響を与え、いわゆる二次性のサルコペニア(カヘキシア)を誘導する(図)。

図:covid-19が引き起こす栄養障害を示す図。罹患した場合とその流行期における栄養を中心に考えた流れをあらわす。
図 高齢者のCOVID-19に罹患した場合とその流行期における栄養を中心に考えた流れ

微量栄養素とCOVID-19

 多くの微量栄養素は免疫反応に重要な役割を果たしていることが知られるが10)COVID-19発症ならびに重症化に関するエビデンスはまだ少ない。血中ビタミンD[25(OH)D]濃度がCOVID-19の罹患ならびに重症化に関連があるとのいくつかの後ろ向きの観察研究による報告がある11)

 例えば、英国の高齢者でCOVID-19様症状のために緊急入院した105名(平均年齢81歳)で、COVID-19陽性者(n=75)、陰性者(n=35)の入院時の25(OH)D濃度は有意に陽性者で低値(27.0nmol/Lvs52.0nmol/L)であり、COVID-19陽性者の中では55.7%が25(OH)Dレベル30nmol/Lで、44.3%は>30nmol/Lであった。そのビタミンD低値群はより重症(D-dimerレベルが高く、ICUを使用し、非侵襲的換気療法使用が多い)であった12)。しかし、死亡に関しては両群で差は認めていない。

 米国で2020年3月中旬から6月中旬までSARS-CoV-2の検査を受け、かつ過去12か月に血中25(OH)D検査のデータが存在する合計191,779人(年齢中央値:54歳、四分位範囲:40.4‒64.7歳、68%女性)の中で、SARS-CoV-2陽性率は9.3%で、季節調整済み平均25(OH)Dは31.7±11.7ng/mL(SD)であった。SARS-CoV-2陽性率は、25(OH)D値が不足している対象者(<20ng/mL)では12.5%、25(OH)D値が適正な対象者(30‒34ng/mL)では陽性率8.1%、および≧55ng/mLでは陽性率は5.9%と、ビタミンD欠乏での陽性率が有意に高値であった。交絡因子で調整後の多変量解析で25(OH)D濃度と陽性率との関係は有意であった13)

 亜鉛に関する報告も複数存在し、日本からの報告で62名のCOVID-19患者の中で血清亜鉛を測定できた29名の多変量解析で、重症症例(挿管を伴う人工呼吸の使用)と血清亜鉛濃度が低値群(<70mg/dL、n=9)とは有意な関連因子として抽出されている14)。亜鉛はさまざまな酵素活性に関連し、免疫反応との関連も知られており、今後のさらなるデータの蓄積が望まれる。

 その他、セレニウム、ビタミンCとの関連を示唆する報告もあるが、ここでは詳細を省く。

COVID-19流行期における高齢者の栄養状態への影響

 成人ではCOVID-19パンデミックにより外出制限により身体活動量が減り、また自宅での間食が増えることにより体重が増加する対象者と、逆に食事摂食量が減少して体重減少を起こす対象者が存在し、二極化する栄養への影響が報告されている15)

 高齢者をターゲットにした報告はなお少ないが、アムステルダムの縦断的老化研究の参加者(n=1,119、62-98歳、女性52.8%)に対してCOVID-19流行時の栄養や身体活動行動に関するアンケート調査の報告がある16)

 パンデミックによる身体活動や運動の減少を約半分(48.3-54.3%)が、栄養過剰の素因となる栄養摂食行動への影響(例:間食の増加)を20.3-32.4%が報告した。対照的に6.9-5.1%は「温かい食事を抜く」などの栄養不良の要因となる行動への影響を報告した。外出自粛をした人(n=123)はより不健康につながる摂食ならびに身体活動行動があった。高齢になるほど摂食量が減少し、体重が減少するリスクが高くなった。ひとり暮らしは、温かい食事を抜く、食事摂取量が少ない、体重の減少、間食が増えるなど多くの項目のリスクが高かった。もともと低体重の人は、通常の体重の人と比較して、摂取量や体重が減少するリスクが高かった。対照的に肥満高齢者ではより体重が増えるリスクが高かった16)

 この結果からはCOVID-19の流行期では、もともと過栄養の高齢者はさらに体重が増加し、低栄養状態の高齢者はさらに栄養状態が悪化するという相反する二極化が顕著となり、その傾向は特にひとり暮らしの高齢者で多いという結果であった(図)。

 介護施設入所高齢者の体重変化の報告がされており、2019年12月から2020年4月までの166名[平均年齢86.9歳(61-102歳)、女性67.5%、認知症有病率60.8%]の観察では、2月から4月までに体重減少を認めたのは67%に及び、特に23%は5%を超す減少を認めた17)。12月から4月までに10%を超す体重減少は11%であった。特にパンデミック後の施設への面会制限ならびに食堂に集合しての食事制限の実施後に著しい体重の減少が認められた。この現象は面会や会話などの交流の減少による抑うつ・不安などが引き起こす精神心理的な影響により、食思不振、食事摂取量などが減少した可能性がある(図)。

栄養介入

 COVID-19におけるエビデンスとなるような栄養介入の報告はなく、現在のところ重症感染症における栄養介入の手段を取ることが勧められる。ESPEN(ヨーロッパ臨床栄養代謝学会)が2020年6月に専門家によるSARS-CoV-2栄養管理指針を報告している18)

 そこには栄養状態の評価、事前ならびに感染早期の適切な栄養不良への介入、十分なエネルギー投与、適切なたんぱく質などの重要な栄養素の投与、ならびに微量栄養素(ビタミンA、B、C、D、オメガ3系多価不飽和脂肪酸、セレン、亜鉛、鉄など)の欠乏の評価ならびに適切な投与、必要に応じた経口補助栄養の使用、その他、ICUにおける栄養管理などの提言がある。ただ、実際にCOVID-19流行期におけるデータはなく、これに関しても今後の介入研究が待たれる。

 地域または施設入所中の高齢者においては、平時から栄養状態の悪化をまずは予防することが重要である。これには定期的な栄養評価が必須で、体重減少が起こったらできるだけ早く栄養介入を進めることが大変重要である。また、かかりつけ医においては体重の変動を中心とした栄養評価のみならず、定期的な血中微量栄養素のモニタリングも重要である。

さいごに

 以上のように、新型コロナウイルス禍では高齢者の栄養状態を大きく変動するさまざまな要因が存在する。高齢者の低栄養状態またはリスクのある場合はCOVID-19のリスクを増加させるのみならず、フレイルにつながり健康寿命の延伸を阻害している可能性があり、平時からまたは早期の栄養介入が重要である。

文献

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  3. Singh S, Bilal M, Pakhchanian H, et al.: Impact of Obesity on Outcomes of Patients With Coronavirus Disease 2019 in the United States: A Multicenter Electronic Health Records Network Study. Gastroenterology. 2020; 159(6): 2221-2225.
  4. Huang Y, Lu Y, Huang YM, et al.: Obesity in patients with COVID-19: a systematic review and meta-analysis. Metabolism. 2020; 113: 154378.
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筆者

写真:著者の葛谷雅文先生の写真。
葛谷 雅文(くずや まさふみ)
名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学教授
略歴
1989年:名古屋大学大学院医学研究科修了(医学博士)、1991年:米国国立老化研究所 研究員、1996年:名古屋大学医学部附属病院(老年科)助手、1999年:同講師、2003年:名古屋大学医学部(老年科学)助教授、2007年:名古屋大学大学院医学系研究科老年科学分野准教授、2011年より現職
専門分野
老年医学

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公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2021年 第30巻第1号(PDF:5.6MB)(新しいウィンドウが開きます)

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