長寿科学研究に関する情報を提供し、明るく活力ある長寿社会の実現に貢献します。

第4回 まちづくりとの連携

 

公開月:2026年1月

鎌田 実
東京大学名誉教授、一般財団法人日本自動車研究所所長


 最近のモビリティの状況をこれまで3回にわたって記してきた。モビリティは生活の上で重要であることは間違いないが、あくまで何らかの目的を達成するための手段であって、それだけが整っていても、外出したくなるような目的がないと人は動いてくれず、せっかくの手段がうまく使ってもらえないことにもなる。そう考えると、移動の目的と手段がセットで用意されることが大事である。

 公共交通計画を考える際に、必要最小限の外出として、通院や買い物など、週1回のお出かけを達成することを念頭に置くことが多いとされるが、それだと、それ以外は家に閉じこもりがちになってしまい、フレイルの進行を助長してしまうかもしれない。必須の用務だけでなく、余暇的な活動も含めて、外出したくなるような用務先と、それを達成するための手段が整うことが望ましい。

 ある町のデマンド交通の実績値と行先ベスト30がホームページで公開されていた。そこは年間4万3,000人規模の輸送を実現していることもすごいが、行先の中にパチンコ店やカラオケ店が入っていて、生活に溶け込んでいる移動手段だと嬉しく思った。手段と目的があれば、多くの人が外出したいのである。そういうことから、まちづくりの観点から総合的にモビリティも考えるべきと思うようになった。

 内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期の事業で、移動の目的と手段の両方がセットされることで人の行動が変わり、人が集うような場所があることで賑わいの創出につながり、人々のウェルビーイングが達成できるだろうと考え、兵庫県養父市と高知県仁淀川町をフィールドとして諸々取り組んでいる。前者では関宮地区の小さな拠点の整備と公共交通再編を実施して効果を検証するもの、後者ではフレイル予防活動からまちづくりへ発展させ交通網の再編もあわせて地域の持続性のあるまちづくりを目指すものである。いずれも、人が動けて、動くことにより集う場所が賑わい、それによりまちの経済効果や人々が健康にいきいきと暮らせることの効果を見ていきたいと思っている。

 人口減少を急激にストップさせることは困難であるが、ある程度減ったところで持ちこたえられるような魅力あるまちづくりを実践すれば、そこに人は集まり、また帰ってくることにもなると期待している。そういった事例を丁寧につくりこみ、それをモデルとして横展開できるといいと考えている。

著者

鎌田 実(かまた みのる)
 1987年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東京大学工学部講師、助教授を経て、2002年東京大学大学院工学系研究科教授、2009年東京大学高齢社会総合研究機構機構長・教授、2013年東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。2020年より一般財団法人日本自動車研究所所長。専門は車両工学、人間工学、ジェロントロジー。

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2026年 第34巻第4号(PDF:9.1MB)(新しいウィンドウが開きます)

WEB版機関誌「Aging&Health」アンケート

WEB版機関誌「Aging&Health」のよりよい誌面作りのため、ご意見・ご感想・ご要望をお聞かせください。

お手数ではございますが、是非ともご協力いただきますようお願いいたします。

WEB版機関誌「Aging&Health」アンケートGoogleフォーム(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)