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多世代がゆるやかにつながる地域の居場所(東京都文京区本駒込NPO法人居場所コム 「こまじいのうち」)

 

公開月:2026年4月

「こまじいのうち」ってどんな場所?

 東京都文京区本駒込にある「こまじいのうち」は、年齢を問わず誰もが集える「地域の居場所」だ。運営するのはNPO法人居場所コム。「秋元」という表札の玄関を開けると、大人数の靴が収まる下駄箱、台所の奥には、和室二室分の広い空間が現れる。ここが「こまじいのうち」の居間である。

 取材に訪れた日には、「布ぞうりをつくろう教室」が開催されていて、シニアの女性たちが和気藹々と作業に取り組んでいた。講師を務めるのも利用者の一人だ。このほかにも「脳トレ健康麻雀」「みんなで体操」など多くのプログラムがある。火曜から金曜の10時~15時は、誰でも自由に立ち寄り、お茶とおしゃべりを楽しめるカフェスペース「カフェこま」が開かれている。利用者の女性は、「ここに来ると、気持ちが若返る」と笑顔で語ってくれた。

「布ぞうりをつくろう教室」の皆さんの写真。
「布ぞうりをつくろう教室」の皆さん

 「こまじいのうち」は2013年のオープン以来、赤ちゃんから学生、子育て世代、高齢者まで、多世代がゆるやかにつながる交流の場を実践してきた。今でこそ全国各地に「地域の居場所」が生まれているが、当時はまだ珍しい取り組みだった。

 「こまじいのうち」がどのように地域に根づき、展開してきたのか。NPO法人居場所コム理事長の船崎俊子さん、事務局長の三繩毅さん、会計係の山上良一さん、生津朝子さん、白椛京子さんのコアスタッフの皆さんに話を伺った。皆さんは開設当初からのメンバーだ。取材中、室内に飾られた初代理事長の故・秋元康雄さんの写真が居間をやさしく見守っているのが印象的だった。

NPO法人居場所コム事務局長のみなわたけしさん、会計係のやまがみりょういちさん、理事長のふなさきとしこさん、しらかばきょうこさん、なまづあさこさんの写真。
右から、NPO法人居場所コム事務局長の三繩毅さん、会計係の山上良一さん、理事長の船崎俊子さん、白椛京子さん、生津朝子さん

住民の声から「居場所づくり」が始まる

 「こまじいのうち」はもともと秋元さんの叔母の家で、後に相続した一軒家だ。2013年3月、駒込地区12町会で「地域の居場所をつくろう」という話が持ち上がり、当時、町会副会長だった秋元さんがこの家を提供することを決断した。折しも前年、文京区社会福祉協議会(社協)から第一号となる地域福祉コーディネーター(地域の支え合い推進役)が配置されていた。秋元さん、駒込地域活動センターの所長、地域福祉コーディネーターの三者がタッグを組んだことで、「地域の居場所」構想は具体化へと動き出した。この地域活動センター所長こそ、現NPO法人事務局長の三繩さんだ。

 地域福祉コーディネーターが、地域団体や住民にきめ細やかに声をかけ、居場所づくりの協力体制が築かれていった。同年5月には実行委員会が発足。立ち上げには、社協、地域活動センター(行政)、駒込地区12町会、そして多くの住民ボランティアが関わり、構想から約半年後の2013年10月「こまじいのうち」はオープンを迎えた。

NPO法人、社協、町会、行政、住民ボランティアが重層的に連携

 オープン直後は人が集まらない日々が続いた。バザーを企画したり、町会の掲示板にチラシを掲示したりして、活動は徐々に地域に浸透し、1年を過ぎた頃には安定した運営ができるようになった。

 開設3年後の2016年には、継続的な運営を目的に、NPO法人居場所コムを設立。月1回開催の運営会議には、コアスタッフに加え、社協の地域福祉コーディネーターも参加し、情報共有をしている。現在、コアスタッフ7名が事務局を担い、ボランティアスタッフ12~13名が交代で運営サポートに加わる。ボランティアの多くは利用者から関わりを広げた人たちだ。

 船崎さんはこう語る。「社協とは協力関係にあります。ここは住民主体で運営しているため、課題を抱えた利用者が来られた際、住民だけでは対応しきれないこともあります。そうした場合は地域福祉コーディネーターに連絡し、専門機関や行政につないでもらいます」

 続けて三縄さんは、「町会長にもNPOメンバーとして参画してもらい、町会の強力なバックアップのもと運営しています」と話す。さらに、地域活動センターや民生委員も協力メンバーとして加わる。NPO法人、社協、町会、行政、住民ボランティアが重層的に連携し、「こまじいのうち」の活動を支えている。

多彩なプログラムでカレンダーはぎっしり

 開設当初から取り組みの中心に据えているのが、利用料100円で、多世代が気軽に立ち寄れる「カフェこま」だ。年間約3,500人が利用している。「脳トレ健康麻雀」や「囲碁教室」は初期から続く人気のプログラム。ほかにも、フレイルサポーターによる「みんなで体操」、保健師を迎えた「まちの保健室」、学生ボランティアによる「スマホ教室」、傾聴ボランティア「象の耳」が担当する「おしゃべりカフェ」、「ぬり絵教室」など、カレンダーは予定でぎっしり。

「みんなで体操」の様子を表す写真。
椅子に座って「みんなで体操」(NPO法人居場所コム提供)

 2016年からは、個食などの事情を抱える子どもを支援するため、月1回「子ども食堂」を開始した。以前は「どなたでもどうぞ」というオープン形式だったが、コロナ禍以降は、経済的支援が必要な家庭に絞り、社協と連携して弁当を配る形にした。「お弁当をお渡しする際に保護者と話をし、困り事がないか伺うようにしています」と船崎さん。ここでも、地域の見守りとつなぎ役を担っている。

和気藹々の子ども食堂の厨房の様子を表す写真。
和気藹々の子ども食堂の厨房(NPO法人居場所コム提供)

 2023年からは都の助成を受け、月1回のシニア食堂を開始。一人暮らしの高齢者を対象にしていて、社協の紹介で利用する人もいる。調理は、子ども食堂・シニア食堂ともにボランティアスタッフが担当し、栄養バランスに配慮した手作りの食事を提供している。特にシニアには魚料理が好評で、魚は認定NPO法人街ing本郷の「フードシェアリングサービス文京」から提供を受けている。

「こまじいのうち」と「こまぴよのおうち」を行ったり来たり

 2017年、「こまじいのうち」の隣に開設したのが、「こまぴよのおうち」だ。0〜3歳未満の子どもと保護者が通う子育て広場で、文京区の「地域子育て支援拠点事業」をNPO法人が受託して運営している。もともと休館日の月曜に、子育て世代に集いの場を開放していたこともきっかけとなり、子育て広場の開設へつながった。現在、「こまじいのうち」には子どもを含めたプログラムはないが、親子が気軽に2つの居場所を行ったり来たりすることで、自然な多世代交流が生まれている。

多世代が賑やかに集う様子を表す写真。
多世代が集う賑やかな居場所(NPO法人居場所コム提供)

高齢者が働く時代─地域活動の質が変わってきた

 「こまじいのうち」は14年目を迎え、今後の課題として三縄さんは「運営人材と運営資金の確保」を挙げる。開設当初に60代で活動に加わったコアスタッフの多くが後期高齢者となり、次に運営を担う60代の"若い高齢者"が不足しているという。「今は70代で働く人も珍しくありません。シルバー人材センターでも80代後半まで働けます。高齢者が働き続ける社会になると、そのぶん地域活動の担い手が少なくなり、無償ボランティアに手を挙げる人も減ってきているのが現状です」

 「こまじいのうち」の運営資金は、都の「地域の底力発展事業助成金」(100万円)、12町会からの協賛金(年12万円)、プログラム利用料(100〜300円)、行政から支給される家賃補助などが柱だ。「『ワンコインを支払うから有償ボランティアとして来てほしい』と言える体制でなければ、継続はなかなか難しい。行政として地域コミュニティを大切に考えるのであれば、有償ボランティアの経費に充てられる、もう一歩踏み込んだ助成が必要だと考えます」と三縄さんは指摘する。

若い夫婦と子ども、シニアが集う何気ない日常

子連れの若い夫婦訪問の一場面の写真。
子どもとハイタッチ!子連れの若い夫婦訪問の一場面

 取材の帰りぎわ、「こまぴよのおうち」の利用者の子育て世代の夫婦と、幼い子どもが「こまじいのうち」に立ち寄る場面に遭遇した。その瞬間、これまでシニアを中心に賑わっていた居間に新しい風が吹き込んだ。プレイルームで遊ぶ子どもをスタッフが見守るあいだ、若い夫婦とスタッフ、そして利用者が世間話を交わす。リラックスムードの穏やかな時間が流れていた。

 訪れる利用者も、迎えるスタッフも、みな地域の人だ。世代を超えて人が集い、自然につながっていく。それこそが、地域密着型の居場所「こまじいのうち」の魅力である。


公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health 2026年 第35巻第1号(PDF:5.4MB)(新しいウィンドウが開きます)

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