地域で暮らす認知症高齢者の外出場所の特徴
公開月:2026年7月
小松 亜弥音(こまつ あやね)
大阪公立大学大学院生活科学研究科・生活科学部人間福祉学科講師
国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部外来研究員
はじめに
2024年施行の「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」1)において認知症の人の社会参加が強調され、わが国における認知症の人の社会参加への関心は高まっている。社会参加の中でも外出は、高齢者のウェルビーイングにとって重要であることが知られている。例えば、外出により、セルフケア、他者との交流、仕事・教育、スポーツ、余暇など、有意義な活動への関与を高めることができる2)。しかし、認知機能が低下し日常生活に支障が出始めると、外出した際様々な困難に直面する3)。認知機能が低下してもできる限り外出し続けられる地域・社会の整備が求められる。
一方で、認知症の人の外出「場所」に焦点を当てた研究は乏しく、認知症の人が「どこに」出かけているのかについては十分明らかでない。認知症の人が外出しやすい場所、あるいは反対に外出しにくい場所を知ることは、認知症の人にとっての特定の場所の重要性や、認知症の人が特定の場所に行く際の課題を把握する上で有用であり、認知症の人が希望する場所への継続的な外出を支援するような介入方法の開発にも資する4),5)。つまり、認知症の人の外出場所の特徴を知ることは、認知症にやさしいまちを具体的に検討し進めるために役立つと考えられる。
本稿では、NCGG-UniCoプロジェクトの一環として行われた、地域で生活する高齢者を対象とした外出行動調査の結果6),7)の一部を紹介する。
調査の概要
2023年に2つの郵送による自記式質問紙調査を実施した。1つは、無作為に抽出されたX県A市在住で要介護認定を受けていない高齢者(以下、自立高齢者)1,000名を対象とした調査で、428名から回答を得た(有効回答率42.8%)。もう1つは、A市を含む4市町在住で要支援1から要介護1の認定を新規に受けた高齢者全数を対象とした調査で、認知症のない軽度要介護高齢者416名(以下、非認知症要介護者)および認知症を有する軽度要介護高齢者(以下、認知症要介護者)198名の合計614名から回答を得た(有効回答率41.5%)※。これらの調査で得られたデータを用いて、自立高齢者群、非認知症要介護者群、認知症要介護者群の外出行動を記述し、比較的軽度な認知症高齢者の外出場所の特徴把握を試みた。
※ この調査では地域を研究フィールドとしており、すべての回答者が認知症の検査や診断を受けているわけではない。そのため、介護保険制度の認定調査において用いられる指標である「認知症高齢者の日常生活自立度」8)においてⅡa以上のランクの場合「認知症」、そうでない場合「非認知症」とみなしている。
外出場所
認知症高齢者の外出場所を測定する項目は、ACT-OUT調査票9)を参考に作成した。ACT-OUT調査票は、認知症の人の社会参加に関する研究プロジェクトの一環で開発され、スウェーデンを含む複数の国でこの調査票を用いた調査が行われている10)。ACT-OUT調査票では、外出場所は4つの領域で構成され、各領域に具体的な場所(例:スーパー、病院)が包含されている。今回の調査では、日本の実情に合わせて場所の追加あるいは統合などを行い、最終的に4領域34か所の場所を設定した。1つ目の領域は「消費活動・行政手続き・セルフケアの場」で、スーパーや役所、美容院など9か所が含まれる。2つ目は「医療・ヘルスケアの場」で、総合病院や介護・予防サービスなど5か所が含まれる。3つ目は「社会的・文化的・宗教的活動の場」で、家族・親族宅やレストラン、公民館、お寺、博物館など12か所が含まれる。4つ目は「身体活動・余暇の場」で、公園や駅・空港などの交通機関、温泉など8か所が含まれる。以上の場所について、(1)直近1年間で訪れたか否かと、(2)直近1年間で訪れた場所のうち今後も行き続けたい場所(最大3か所)を尋ねた。
調査の結果
まず、1年間で34か所のうち何か所訪れているか確認したところ、自立高齢者群では平均21.3か所を訪れており、非認知症要介護者群では16.3か所、認知症要介護者群では14.8か所であった。領域別では、「医療・ヘルスケアの場」を除く3領域で、認知症要介護者群の訪問場所数は自立高齢者群を下回っていた。
次に各領域の個別の場所について、1年間で訪れたことがあると回答した割合を群ごとに異なるマーカーで区別し、群ごとの外出場所の特徴について視覚的に把握を試みた(図)。まず消費活動・行政手続き・セルフケアの場(図左上)をみると、コンビニ、銀行・郵便局など3か所において3群間で10ポイント以上差がみられた。スーパーや美容院は、認知症要介護者群でも8割以上が訪れていた。次に医療・ヘルスケアの場(図右上)では、診療所等はすべての群で9割以上が訪れていた。介護・予防サービスは認知症要介護者群の5割以上が訪れていた。社会的・文化的・宗教的活動の場(図左下)では、友人・知人宅では3群間で10ポイント以上の差がみられた。認知症要介護者群では、レストラン・カフェは7割以上が訪れていたが、訪問率2割以下の場が図書館など7か所あった。最後に身体活動・余暇の場(図右下)をみると、認知症要介護者群では近隣・近所と公園を除き2~4割程度の訪問率であった。

(出典:小松亜弥音ほか.第13回認知症予防学会学術集会, 20246)を加筆・修正)
1年間に訪れたことのある場所のうち行き続けたい場所を少なくとも1つ回答した割合は、自立高齢者群で約7割、非認知症要介護者群と認知症要介護者群でも5割を超えていた。また、行き続けたい場所として回答した人が多い上位5か所を確認すると、認知症要介護者群では、多い順にレストラン・カフェ等、介護・予防サービス、家族・親族宅、複合施設(ショッピングモール等)、温泉・銭湯であった。
認知症高齢者の外出場所の特徴
今回の結果から、認知症になり介護が必要になると、外出場所の数が減少する可能性が示唆された一方で、それでもなお多様な場に出かけていることもうかがえた。スーパーや美容院、病院など、生活必需の場は認知症の人にとっても行きやすいと考えられた。これらの場所は、比較的家族や従業員のサポートが得やすく、また段差解消などのバリアフリー化が進んでいることが多い。今行きやすいと考えられる場所を、認知機能がさらに低下した場合でも行き続けられるようにしていくことも、認知症にもやさしいまちづくりには必要な要素であると考える。
一方で、コンビニや銀行、そして友人・知人宅は、認知症の人にとって行きにくい可能性が考えられた。例えば銀行やコンビニでは、認知機能の低下により支払いや手続きで困難に直面することがある3)。また、友人・知人宅については、認知症の人側の迷惑をかけるかもしれないという遠慮や、認知症スティグマの影響で足が遠のく可能性がある。今回の調査では、各場所の具体的な行きやすさ・行きにくさの要因までは検討できておらず、前述の内容はあくまで可能性に留まる。今後は、個別の場所のどこにどのような工夫が必要かを特定し、認知機能低下にも対応した介入方策を検討・開発していく必要がある。そのためには、実際に個別の場所で、認知症の人の声を聞き、認知症の人に行動してもらい、つぶさに観察するような研究が求められるであろう。
また、実際には訪れにくくなるが、行きたいというニーズが高い外出場所の存在が、特に社会的・文化的・宗教的領域や身体活動・余暇の領域で示唆された。地域によっては、高齢になり車の運転をやめると外出行動に制限が生じやすい。現状、公共交通機関等や家族や友人等による送迎がその制限を緩和しうるものの、完全な代替にはなれない可能性が示唆されている11)。生活必需であってもなくても、ウェルビーイングに重要な場へ認知症の人が外出し続けられるためには、既存の公共交通機関よりも簡便かつ柔軟に使いやすい移動手段を創出することや、周囲の協力が得やすいよう啓発していくことなども必要であると考えられる。
おわりに
認知症の人は、多様な場所に外出し続けている一方で、外出場所の数は認知症になる前よりは減り、特に消費生活・社会生活に関わる場所で行きづらさが生じている可能性がある。認知症の人の持つ意欲や力を活かしながら社会参加が継続できるようにすることを目指し、ニーズの高い場所を中心として認知症の人のウェルビーイングに重要な意味を持つ場所を、認知機能が低下しても行き続けられる場所にする介入方策の検討・開発が、今後認知症共生社会を構築する上で急務である。
謝辞
本調査は、公益財団法人長寿科学振興財団令和5年度長生きを喜べる長寿社会実現研究支援(課題名:ユニバーサル・フレンドリ・ファシリティが認知症の人と地域住民の社会参加向上とスティグマ軽減、ウェルビーイング向上にもたらす効果検証)(研究代表者:斎藤民)、および三井住友海上福祉財団令和4年度研究助成高齢者福祉分野(課題名:軽度要介護高齢者におけるウェルビーイング)(研究代表者:中川威)を受け実施した。
文献
- :共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和五年法律第六十五号)(2026年6月23日閲覧)
- Maruta M, Tabira T, Shimokihara S, et al.: Changes in satisfaction with meaningful activities and onset of depressive symptoms among community-dwelling Japanese older adults: A population-based study before and during the COVID-19 Pandemic. J Am Med Dir Assoc. 2023; 24(5): 702-709.e3.
- Chaudhury H, Mahal T, Seetharaman K, et al.: Community participation in activities and places among older adults with and without dementia. Dementia. 2021; 20(4): 1213-1233.
- Gaber SN, Thalén L, Malinowsky CW, et al.: Social Citizenship Through Out-of-Home Participation Among Older Adults With and Without Dementia. J Appl Gerontol. 2022; 41(11): 2362-2373.
- Thalén L, Malinowsky C, Margot-Cattin I, et al.: Out-of-home participation among people living with dementia: A study in four countries. Dementia. 2022; 21(5): 1636-1652.
- 小松亜弥音, 中川威, 野口泰司, 金雪瑩, 岡橋さやか, 進藤由美, 斎藤民. 認知症高齢者の外出行動の実態(NCGG-UniCo)(第1報):外出場所の特徴. 第13回認知症予防学会学術集会, 2024.
- 岡橋さやか, 小松亜弥音, 中川威, 野口泰司, 金雪瑩, 進藤由美, 斎藤民. 認知症要介護者の外出行動の実態(NCGG-UniCo)第2報:行き続けたい場所. 第43回認知症学会学術集会, 2024.
- (2026年6月23日閲覧)
- Margot-Cattin I, Kuhne N, Kottorp A, et al.: Development of a questionnaire to evaluate out-of-home participation for people with dementia. Am J Occup Ther 2019; 73: 7301205030p1-7301205030p10.
- Karolinska Institutet: (2026年6月23日閲覧)
- Noguchi T, Komatsu A, Okahashi S, et al.: Association between driving status and visiting places among older adults in a suburban area in Japan: Findings from a cross-sectional survey. Geriatr Nurs. 2025; 66(Pt B): 103626.
筆者

- 小松 亜弥音(こまつ あやね)
- 大阪公立大学大学院生活科学研究科・生活科学部人間福祉学科講師
国立長寿医療研究センター老年社会科学研究部外来研究員 - 略歴
- 【略歴】2018年:大阪市立大学大学院生活科学研究科生活科学専攻後期博士課程修了(博士(学術))、2019年:国立長寿医療研究センター長寿政策科学研究部流動研究員、2020年:同老年社会科学研究部流動研究員、2022年:同特任研究員、2025年より同外来研究員、大阪公立大学大学院生活科学研究科・生活科学部人間福祉学科講師
- 専門分野
- 高齢者福祉学
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