フレイル対策:地域でつながりをデザインするステージへ
公開月:2026年4月
飯島 勝矢(いいじま かつや)
東京大学高齢社会総合研究機構機構長
東京大学未来ビジョン研究センター教授
超高齢社会を迎えた日本において、健康な状態と要介護状態の中間に位置する「フレイル(虚弱)」への対策は、健康寿命を延ばすための最重要課題である。また、これは単なる身体機能の維持向上だけを目指しているものではなく、最終的な真の幸福「ウェルビーイング(生きがいも含む)」につなげるためにも、フレイル対策は必要不可欠である。すなわち、今や人生100年時代を見据えたライフデザインが不可欠な時代へと突入している。その中で、医療技術の進歩や生活環境の改善により、われわれは人類史上かつてない「時間の資産」を手にしたと言っても過言ではない長寿を「恩恵」に変える新戦略も求められる。ウェルビーイングの核心には「他者や社会とのつながり」がある。仕事から引退した後も、社会および地域コミュニティに何らかの形で寄与しているという「社会的役割」を実感できることが、個人の自尊心を維持することになるのだろう。多世代交流や地域活動を通じて、孤立を防ぎ、互いに支え合うネットワークを構築することが、レジリエンス(逆境に負けない力)を高めることにつながる。
筆者が作成に関わった内閣府「高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定)」においても、以下の視点を述べている。高齢社会対策は、高齢者を支えるための取組だけではなく、高齢者の割合が大きくなる中で、全ての世代の人々にとって持続可能な社会を築いていくための取組である。現在、高齢化の問題は全世界的に見ても数多くの国々で取り上げられており、わが国固有の問題ではない。世界各国においても今後直面する大きな課題のひとつであり、全世界から高齢社会のトップランナーである日本の対応に対する注目が集まっている。
現在のフレイル対策は、高齢者個人が頑張るステージから、地域全体で「つながり」をデザインするステージへと移行している。孤独を最大の健康リスクと捉え、多世代が交流する場を増やすことが、結果としてフレイル予防に直結する。100年時代を健やかに生き抜くためには、フレイルを「老いの予兆」として恐れるのではなく、自分らしい生活を再構築するための「サイン」として捉え、早期にアクションを起こすことが求められている。今回の特集「フレイル対策の現在」では、様々な最先端の地域活動をご紹介したい。
筆者

- 飯島 勝矢(いいじま かつや)
- 東京大学高齢社会総合研究機構機構長
東京大学未来ビジョン研究センター教授 - 略歴
- 1990年:東京慈恵会医科大学卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、1997年:東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座助手・同講師、2002年:米国スタンフォード大学医学部研究員、2005年:東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座講師、2011年:東京大学高齢社会総合研究機構准教授、2016年:東京大学高齢社会総合研究機構教授、2020年より現職
- 専門分野
- 老年医学、高齢者医療、総合老年学(ジェロントロジー)
- 過去の掲載記事
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