健康長寿ネット

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高齢者に適したウォーキングとは

公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2022年7月 8日 14時10分

高齢者のウォーキングの実施状況

 令和元年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」1)によると、60代、70代の高齢者が「初めて、もしくは久しぶりに再開した運動」の1位は「ウォーキング」です。他の運動は1割前後の割合に対して、「ウォーキング」は6割前後を占めており、手軽に始められる運動として高齢者に支持されていることがわかります(表1)。

表1:初めて実施したまたは久しぶりに再開した運動・スポーツ(上位10種)1)より作成
年代性別ウォーキング※1トレーニングランニング・マラソン・駅伝体操階段昇降自転車・サイクリングエアロビクス・ヨガ・バレエ・ピラティス水泳ゴルフ(コースでのラウンド)ボウリング
60代男性 61.4 10.3 6.2 8.1 7.8 7.6 1.5 3.2 6.4 2.7
60代女性 59.0 12.0 1.6 12.7 6.9 3.3 11.2 5.7 1.1 1.9
70代男性 63.3 6.3 3.6 10.4 9.2 11.9 1.1 1.8 7.0 2.9
70代女性 60.2 8.5 1.3 16.3 8.4 4.0 8.4 4.2 2.1 1.5

※1 散歩・ぶらぶら歩き・一駅歩きなどを含む

ウォーキングを行う目的

 ウォーキングなどの運動を行う理由としては「健康のため」「体力増進・維持のため」「運動不足を感じるから」「楽しみ、気晴らしとして」の割合が高くなっています。

高齢者におけるウォーキングの効果

 「健康づくりのための身体活動基準2013」によると、65歳以上の高齢者は「毎日40分身体を動かすこと」に加えて、ウォーキングなどの運動習慣を「1回30分以上・週2日以上」持つことで、次のような改善が期待できるとあります2)

  • 全身持久力・筋力の維持・向上
  • ロコモティブシンドロームの改善
  • 軽度認知障害(MCI)の改善

フレイル・サルコペニアへのウォーキングの効果

 加齢によって筋肉量の減少・筋力低下・身体機能低下が起こるサルコペニアはフレイルの大きな要因となります。サルコペニアは活動量や歩数が少ない人で発症が多い3)という報告や、サルコペニア予防には1日女性7,000歩(速歩き15分)、男性8,000歩(速歩き20分)以上が必要4)という報告があります。

 1日の歩数や活動量が少ないと下肢の筋肉を使う機会が減り、サルコペニアに陥りやすくなります。加えて、高齢者は加齢によって下肢筋力が低下すると、すり足歩行になりがちで、下肢の筋肉にかかる負荷は少なくなり、せっかく歩いても筋肉を鍛える効果は乏しくなります。筋肉量の増加や筋力増強には、歩くことにレジスタンストレーニングなどの中強度の運動をプラスすることが必要です。筋肉量の減少と筋力低下の予防を同時に叶える歩き方としては、「1日7,000~8,000歩・そのうち速歩きを15~20分以上」4)のウォーキングが提唱されています。

 歩行速度の低下、活動量の低下は身体的フレイルの基準要素です(リンク1)。中年期以前からウォーキングを継続し、歩行速度や活動量を高齢期になっても維持し続けることが身体的フレイルの予防となります。また、外出機会を持ち、自然の中で季節に触れながら行えるウォーキングは閉じこもりやうつの予防になります。ウォーキングは認知機能低下を予防することも報告されており5)、精神的フレイルの予防にもなります。仲間と一緒にウォーキングを行えば、人とのつながりができ、社会的フレイルも予防できます。

リンク1 フレイルとは(フレイルの基準)

1日のウォーキングの目安とプラスして行う運動の目安

 フレイル予防の研究では、1日の歩行の目安とプラスして行う運動の目安を表2のように示しています。

表2:フレイル予防のための1日のウォーキングとプラスして行う運動の目安3)より作成
運動内容
ウォーキング
  • 週150分以上の散歩やウォーキング
    • 1日あたり20分程度
    • 1日の歩数目標
      • 65歳~74歳:7,000歩以上
      • 75歳以上:5,000歩以上
筋力運動 週2回以上の筋力運動
体操・ストレッチ 週2回以上の体操・ストレッチ

ウォーキングを始める前に

 ウォーキングは誰でも手軽に始めることのできる運動ではありますが、無理をすると体調の崩れや怪我の発生につながります。

 運動を始める前には以下の点をポイントに自分の体調をチェックします(表3)。ひとつでも「はい」があればその日の運動は中止します。すべて「いいえ」の場合でも、「いつもと違う」「体調がおかしい」と感じたら無理はせずに中止し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

表3 運動開始前のセルフチェックリスト6)
チェック項目回答回答
1足腰の痛みが強い はい いいえ
2熱がある はい いいえ
3体がだるい はい いいえ
4吐き気がある、気分が悪い はい いいえ
5頭痛やめまいがする はい いいえ
6耳鳴りがする はい いいえ
7過労気味で体調が悪い はい いいえ
8睡眠不足で体調が悪い はい いいえ
9食欲がない はい いいえ
10二日酔いで体調が悪い はい いいえ
11下痢や便秘をして腹痛がある はい いいえ
12少し動いただけで息切れや動悸がする はい いいえ
13咳やたんが出て、風邪気味である はい いいえ
14胸が痛い はい いいえ
15(夏季)熱中症警報が出ている はい いいえ

ウォーミングアップ

 ウォーキングを開始する前には、怪我や痛みの発生、心血管事故を防ぐために次のようなウォーミングアップを行います。

  • 関節をしっかり動かす、身体を大きく動かす軽い準備体操
  • ふくらはぎ、太ももの裏側・表側、肩、二の腕のストレッチ

 ウォーミングアップを行うことで、身体が温まり、筋肉の柔軟性が促されて関節の可動域が拡大します。運動を行うための身体的な準備が整うとともに、心構えとしても運動に対する意欲が高まります2)

ウォーキングの全身のフォームの基本的なポイント

 ウォーキングを行うときは、背中をまっすぐに保ち、耳・肩・腰・骨盤を結んだラインが横から見て一直線になる姿勢が理想です。上から糸で頭を引っ張られているようなイメージを意識して、視線は15m先をまっすぐ見るようにします。

 良い姿勢が保たれると、踵から地面に足を着き、つま先で蹴り出す歩行が自然に行えます。肘は軽く曲げて後ろへ引くようにしましょう7,8)(図1)。腰や膝が悪い人、脳卒中やパーキンソン病、水頭症などと診断されている方は、このような歩き方が難しい場合もありますので、適切な歩き方についてかかりつけの医師に相談して下さい。

図1:ウォーキングの全身のフォームの基本的なポイントを表す図。
図1:ウォーキングの全身フォーム7,8)より作成

文献

  1. スポーツ庁 令和元年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」について 2020年2月27日発 報道発表 9-10P(2020年11月30日閲覧) (PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」, 12-13P,17P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 東京都健康長寿医療センター研究所, 社会参加と地域保健研究チームフレイル予防応援サイト「三つの柱 運動について」(2020年11月30日閲覧) (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 青栁幸利:あらゆる病気を防ぐ「一日8000歩・速歩き20分」健康法 身体活動系が証明した新健康常識.第1刷, 株式会社草思社,2013年4月30日、76-77,118-121
  5. Nicole L. Spartano, Kendra L. Davis-Plourde, Jayandra J. Himali, et al :Association of Accelerometer-Measured Light-Intensity Physical Activity With Brain Volume The Framingham Heart Study; JAMA Netw Open. 2019;2(4) April 19, 2019(2020年11月30日閲覧)(英語)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  6. 厚生労働省, 健康づくりのための身体活動基準2013「運動開始前のセルフチェックリスト」,参考資料5 56P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  7. 筑波大学体育系健康増進学研究室 新型コロナウイルス感染症対策に係る外出等自粛要請期間中のフレイル化予防運動の手引き(公開日2020年4月20日),15P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  8. スポーツ庁WEB広報マガジン DEPORTARE(デポルターレ), プラス「10」分のウォーキングから始めるストレス対策, (2018年6月27日公開) (2020年11月30日閲覧)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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