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レジスタンス運動の効果と方法

公開日:2016年7月25日 08時00分
更新日:2021年1月28日 21時36分

レジスタンス運動とは

 レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。レジスタンス(Resistance)は和訳で「抵抗」を意味します。運動する人の状態や目的によって自分の体重(自重)やゴム製のチューブ、ダンベルなどで負荷量を調整して行うことができます。

レジスタンス運動の目的

 レジスタンス運動は、筋肉量増加・筋力向上・筋持久力向上を促す筋力トレーニングとして高齢者からアスリートまで広く行われています。

 とくに高齢者は加齢によって、上肢(腕)よりも下肢(足)の筋力低下が起こりやすくなります。下肢筋力の低下により歩行能力も低下するため、階段の昇り降りや買物袋を運ぶなどの日常生活能力が低下したり、社会参加の機会が減少したりして、サルコペニアやフレイルが進行します。

 高齢者に対するレジスタンス運動はこれらのサルコペニアやフレイル、骨粗しょう症、2型糖尿病、肥満などの生活習慣病の予防・改善のために行われ1)、高齢者のQOLの向上2)に繋がります。

レジスタンス運動の効果

 レジスタンス運動の効果として次のことがあげられます。

  • 筋タンパク質の合成が分解を上回り、骨格筋量が増加することによって筋力・筋持久力が向上し、ADL能力の向上につながる3),4)
  • 自己効力感を高め、精神的な健康を保つことが期待できる3)
  • 加齢による骨ミネラル濃度の低下を軽減し、骨粗鬆症予防が期待できる3)
  • 除脂肪体重の維持・増加により、身体組成※1の改善が期待できる3)
  • 身体活動やスポーツによる障害のリスクを軽減する3)
  • 高血圧患者の安静時血圧の低下、心拍数・血圧・二重積(心拍数×収縮期血圧)の減少、血中脂質値の改善、耐糖能の改善・ヘモグロビンA1cの減少により、心臓血管疾患リスクを軽減する3)
※1 身体組成:
身体をつくる筋肉、骨、水分、体脂肪などの組成分

フレイル・サルコペニアへのレジスタンス運動の効果

 レジスタンス運動を行うと筋繊維を支配する神経系が賦活し、より多くの筋繊維が効率的に働くことに加え、筋肥大を認め筋肉量が増加します。研究報告によると平均年齢90歳(86歳~96歳)の高齢者でもレジスタンス運動により筋肉量増加と筋力アップが認められることがわかっています5)

 サルコペニアやフレイルで低下する歩行能力の改善には歩幅の大きさが関係しており、歩幅を大きくするためには、ウォーキングではなく筋肉量を増大するレジスタンス運動が必要であることが示されています。高齢者は週2回のレジスタンス運動を行うことで筋肉量の増加が望めるとされていますっ5)

レジスタンス運動の種類

 立位レベルの運動5種と、座った姿勢や寝た姿勢で行える運動5種を紹介します。各運動はゆっくりと10回ずつ行いましょう。

椅子スクワット

 大腿四頭筋や大臀筋を鍛えることができます。

 足は肩幅に開き、椅子からゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと腰を下ろします。膝の負担を軽くするために股関節を曲げることを意識します。視線は前を見ましょう(図1)。

図1:自重でのスクワット。椅子を利用し立ち座りを繰り返します
図1:椅子スクワット

腕立て伏せ

 主に上腕三頭筋や体幹(前面部)を鍛えることができます。

 肩幅より広めに手を床につき、膝を床につけます。頭から膝まで一直線の状態を保ったまま肘を曲げて上体を下ろし、肘を伸ばして元の姿勢に戻ります(図2)。

図2:腕立て伏せを示すイラスト。手を床に肩幅より広めにつき、膝またはつま先を床につける。肘をまげて状態をおろし、肘を延ばして元に戻る動作を繰り返す
図2:腕立て伏せ

踵上げ

 下腿三頭筋や大臀筋を鍛えることができます。

 足を肩幅に開き、膝は伸ばしたまま踵を上げて5秒静止してから下ろします。立位が不安定な場合は椅子の背などに手を添えて行いましょう(図3)。

図3:踵上げの様子を表す図。足を肩幅に開き、膝は伸ばしたまま踵を上げて5秒静止してから下ろします。
図3:踵上げ

ランジ

 大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリングスなど下半身全体を鍛えることができます。

 立った状態から片足を前に踏み込みます。前に出した足に体重をかけていき、元に戻ります。反対の足も同じように行います(図4)。

図4:ランジの様子を表す図。立った状態から片足を前に踏み込みます。前に出した足に体重をかけていき、元に戻ります。
図4:ランジ

横に足上げ

 中殿筋・外転筋などの股関節周囲の筋肉を鍛えます。

 立った状態で膝を伸ばしたまま片足を横に上げて5秒静止し、下ろします。反対の足も同じように行います。立位が安定しない場合は椅子の背などに手を添えて行いましょう(図5)。

図5:横に足上げの様子を表す図。立った状態で膝を伸ばしたまま片足を横に上げて5秒静止し、下ろします。
図5:横に足上げ

バッグブリッジ

 広背筋、大臀筋、ハムストリングスといった背面筋を鍛える運動です。

 両膝を曲げて仰向けになり、ゆっくりとお尻を上げます。お尻は上げすぎず、腰を反らさないようにして10秒静止しゆっくりと下ろします(図6)。

図6:バッグブリッジの様子を表す図。両膝を曲げて仰向けになり、ゆっくりとお尻を上げます。お尻は上げすぎず、腰を反らさないようにして10秒静止しゆっくりと下ろします。
図6:バッグブリッジ

上体起こし

 腹筋を中心に体の前面の筋を鍛える運動です。

 両膝を曲げて仰向けになり、おへそを見るように、頭から肩甲骨が床から離れるよう持ち上げます。上げた状態で10秒静止し、ゆっくりと元に戻します(図7)。

図7:上体起こしの様子を表す図。両膝を曲げて仰向けになり、おへそを見るように、頭から肩甲骨が床から離れるよう持ち上げます。上げた状態で10秒静止し、ゆっくりと元に戻します。
図7:上体起こし

足上げ(臥位・横)

 中殿筋や外転筋などの股関節周囲の筋肉を鍛えます。

 横向きに寝た状態で上側の足の膝を伸ばしたまま上に上げ、10秒静止し、下ろします。反対側の足も同様に行います(図8)。

図8:足上げ(臥位・横)の様子を表す図。横向きに寝た状態で上側の足の膝を伸ばしたまま上に上げ、10秒静止し、下ろします。
図8:足上げ(臥位・横)

もも上げ

 腹筋や腸腰筋を鍛えます。

 背もたれから背中を離して椅子に座り、お腹に力を入れて片方のももを上に上げます。座面から太ももの裏が離れるように上げてから下ろします。これを左右交互に行います(図9)。

図9:もも上げの様子を表す図。背もたれから背中を離して椅子に座り、お腹に力を入れて片方のももを上に上げます。座面から太ももの裏が離れるように上げてから下ろします。
図9:もも上げ

足上げ(座位・膝伸展)

 大腿四頭筋を鍛えます。

 背もたれから背中を離して椅子に座り、膝を伸ばして10秒静止してから下ろします。膝の上に力が入っていることを確認しましょう。反対の足も同様に行います(図10)。

図10:足上げ(座位・膝伸展)の様子を表す図。背もたれから背中を離して椅子に座り、膝を伸ばして10秒静止してから下ろします。
図10:足上げ(座位・膝伸展)

レジスタンス運動の注意点

 運動を始める前には以下の点をポイントに自分の体調をチェックします(表)6)。ひとつでも「はい」があればその日の運動は中止します。すべて「いいえ」の場合でも、「いつもと違う」「体調がおかしい」と感じたら無理はせずに中止し、必要に応じて、医療機関を受診しましょう。

表 運動開始前のセルフチェックリスト6)
チェック項目回答回答
1足腰の痛みが強い はい いいえ
2熱がある はい いいえ
3体がだるい はい いいえ
4吐き気がある、気分が悪い はい いいえ
5頭痛やめまいがする はい いいえ
6耳鳴りがする はい いいえ
7過労気味で体調が悪い はい いいえ
8睡眠不足で体調が悪い はい いいえ
9食欲がない はい いいえ
10二日酔いで体調が悪い はい いいえ
11下痢や便秘をして腹痛がある はい いいえ
12少し動いただけで息切れや動悸がする はい いいえ
13咳やたんが出て、風邪気味である はい いいえ
14胸が痛い はい いいえ
15(夏季)熱中症警報が出ている はい いいえ

 運動を行うときには息を止めず、息を吐きながら行います。息を止めると身体に過剰な力が入り、血圧が上がりやすくなります。運動前後にストレッチングを行い、筋肉の柔軟性を促すと筋や筋の付着する腱と関節への負荷が軽減し、痛みや筋肉痛の予防になります。

レジスタンス運動はどこでできるか

 レジスタンス運動は特別な器具やマシンなどがなくても家事やテレビを見ながら自宅で取り組める運動もあります。自分のバランス能力や筋力レベルに合わせて安全に行える姿勢、負荷量で行いましょう。トレーニングマシンを使ってレジスタンス運動を指導している地域の体育施設やジム、介護施設などもありますので、可能であれば参加してみましょう。

文献

  1. 葛谷雅文:超高齢社会におけるサルコペニアとフレイル. 日本内科学会雑誌2015;104巻12号:2602~2607,2606P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. American College of Sports Medicine(ACSM:アメリカスポーツ医学会) 運動処方の指針 運動負荷試験と運動プログラム 原書第8版 南江堂2011年7月15日.173P
  3. NSCA JAPAN レジスタンストレーニングの健康に関する側面.1-2P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 小笠原理紀 レジスタンス運動のプロトコルと効果の関係性について.第27回身体運動運動科学公開シンポジウム 新時代における骨格筋とトレーニングの科学(令和元年7月13日開催 主催:東京大学大学院総合文化研究科身体運動科学研究室), 2P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 久野譜也, 村上晴香, 馬場紫乃, 金俊東, 他:高齢者の筋特性と筋力トレーニング.体力科学2003;52:17-30.20-21P,28P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  6. 厚生労働省 健康づくりのための身体活動基準2013, 56P(2020年11月30日閲覧)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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