ショッピングリハビリ®で こころも体も元気に(神奈川県横浜市 株式会社リカバリータイムズ)
公開日:2025年10月27日 14時56分
更新日:2025年10月29日 11時22分
こちらの記事は下記より転載しました。
「買い物」×「歩行」の新しいリハビリ
横浜市港北区にある大型ショッピングモール「」は、株式会社トヨタオートモールクリエイトが運営する首都圏初のオートモール複合施設である。ここの一角に、ショッピングモール歩行特化型デイサービス「リカバリーチョイス」がある。モール内で買い物を楽しみながら歩く「ショッピングリハビリ®」というプログラムを主軸にしている。
リカバリーチョイスを運営するのは、横浜市鶴見区と港北区に10拠点を展開し、リハビリテーション、看護、介護、保育のサービスを提供するである。代表取締役の石田輝樹さんは理学療法士であり、医学博士でもある。リカバリーチョイス開設の経緯について、石田さんはこう語る。
「リハビリ特化型デイサービスを運営する中で、利用者の方から『買い物に行きたい』という声を多く聞きました。実際に買い物ができるほど回復した方もいますが、そのような方が次に通える場がない。『回復した方の次の行き先をつくりたい』という思いが、ショッピングリハビリ®を始めたひとつのきっかけです。もうひとつは、デイサービスに消極的な高齢者が一定数いることです。『買い物ができるなら、デイサービスに行ってみようかな』と外出のきっかけになる。"買い物"というキーワードは非常に大きいです。こうした『フレイル予防』と『回復した方の行き先づくり』という2つのニーズが合致し、ショッピングリハビリ®に特化したデイサービスを2023年に開設しました」
ショッピングリハビリ®で高齢者の健康増進と地域課題解決
ショッピングリハビリ®は、が提供する事業モデルである。高齢者が商業施設で買い物をすることを通じて、「健康増進」「買い物弱者対策」「地域活性化」を目指すものだ。リカバリーチョイスは、この事業モデルのエリアパートナーとして、ショッピングリハビリ®専用の「楽々カート®」の提供を受け、実施している。このカートは、リハビリ用の歩行器と買い物カートを組み合わせて開発されたものである。


神奈川県内でショッピングリハビリ®を実施する事業所は、現在、リカバリーチョイスの1店舗のみ。この企画をトレッサ横浜に提案したところ、「当館としても高齢者のアクティビティを支援したいと考えていた」と賛同が得られ、開業まで進むことができたという。
ショッピングリハビリ®を実施する商業施設の中でも、トレッサ横浜は最大規模を誇る。
「実際にショッピングリハビリ®を始めてみてわかったのは、この広さが利用者の方の好奇心を刺激する点では非常に良いのですが、管理や見守りの面が課題となることです。広いので、あっちこっちに行けてしまうんですね(笑)。皆さんの希望を尊重しつつも、運営上のルールをしっかり決めていく必要があります。一方、広くて良かったのは、『今日は買い物はしなくていい』という方でも、モールウォーキングとして、バリアフリーで快適な環境のもと、広い館内を歩けることです」と石田さんは言う。
1回の利用で2,000~3,000歩の歩行が可能であり、自然と歩行の習慣が身につきやすい。
買い物を楽しみながら自然にリハビリができる
リカバリーチョイスのプログラムは午前・午後の二部制で、要支援者は2時間、要介護者は3時間利用する。利用者を自宅まで迎えに行き、トレッサ横浜3階の施設に到着後、準備体操やグループエクササイズを行い、職員と共に1階のスーパーマーケットへ向かう。買い物は少人数制で行い、一度に出かけるのは多くても利用者5~6名程度、職員は2名ほどが同行する。利用者の身体機能に応じて専用の楽々カート®を使用する。
リカバリーチョイス管理者の松﨑菜摘さんは、「介護度に応じたグループ分けが必要です。常に見守りが必要な方には職員が付き添い、歩行が安定している方には適宜様子を見ながらサポートします。最後はレジ前で集合し、精算時には必ず職員が見守るようにしています」と話す。
会計後は買い物カートのまま3階に戻り、商品の袋詰めを施設内で行う。荷物の上げ下ろしや袋詰めは高齢になると難しくなるが、職員のサポートの下、利用者はゆっくりと作業ができる。プログラム終了後は、購入した商品と共に利用者を自宅まで送り届ける。
実際に買い物を終えた利用者の方に話を伺うと、「買い物が楽しくて、つい買いすぎてしまう」「孫と同じ世代の職員さんと買い物ができて楽しい」など、笑顔で語ってくれた。


「できる」を支えるショッピングリハビリ®
ショッピングリハビリ®がもたらす効果とは?
「自分の目で見て買い物ができることに大きな喜びを感じる利用者の方が多いです。ショッピングモールに来ることで周囲を意識し、身だしなみにも気を配るようになります。歩きながら買い物をする『ダブルタスク』は脳を活性化し、認知症予防にもつながります。筋力や歩行能力の維持・向上にも効果的です。日常の動作の中で自然に力を取り戻し、少しのサポートで、『できない』が『できる』に変わる。その積み重ねが、自信や自己肯定感にもつながると思います」と石田さん。
松﨑さんは続けてこう語る。
「ショッピングリハビリ®を通じて、生活の中で、できなくなっていたことが再びできるようになる─そんな場面によく立ち会います。久しぶりに食材を買って調理したという声や、『これはこう料理すると美味しいのよ』と利用者の方から教わることもあります。他のデイサービスに勤務していた時にも、身体が動くようになったなど嬉しい言葉を聞きましたが、リカバリーチョイスでは利用者の方の暮らしをより間近に感じられる。年を重ねても、少しの支援があれば自立した生活ができると実感します。それがとても嬉しく、自分の支援が役に立ったと感じられる瞬間です」
松﨑さんは、以前は同法人のリハビリ特化型デイサービスに勤務しており、リカバリーチョイスの開設に伴い管理者となった。こうした実感こそが、リカバリーチョイスならではの視点だろう。

暮らしを支える地域インフラづくり
株式会社リカバリータイムズのパンフレットには、「住み慣れた街で安心して生活し続けられる『あなたの街のリハビリステーション』として、横浜市鶴見区・港北区で地域づくりをしています」とある。この「地域づくり」に込めた思いを石田さんはこう話す。
「私たちが目指すのは、安心して暮らし続けられる"アクティブな街"づくりです。そのために、ショッピングリハビリ®をはじめ、デイサービス、保育園、訪問看護など多様なサービスを展開し、生活を支える『地域インフラ』をつくっています。横浜の方は地元愛がとても強いです。少しの支援があれば、誰もが自分らしく横浜に住み続けられる。そうした環境をひとつずつ形にしていくことこそ、私たちの目指す地域づくりであり、すべては"地域インフラづくり"に尽きます」
「リカバリーチョイス」という名には、「あなたらしく商品を選んでほしい。生きがいを選んでほしい。どんな状態になっても、選び、つかみとり、住み慣れた街で過ごしてほしい」という願いが込められている。たとえ体が弱っても、地域インフラが整っていれば、本人がやりたいことを選び、それを支えることできる。それが、リカバリータイムズが目指す地域づくりである。
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