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高血圧管理と認知症予防

生活習慣病の一つ「高血圧」が引き起こす「病気」

 高血圧は数ある病気の中でも、特に患者数の多い病気の一つです。 平成26年度の厚生労働省の調査によると、高血圧と診断されている方は全国で1010万800人で、女性の割合がやや多い、という結果になっています。

 高血圧は生活習慣に密接に関係していることから、「生活習慣病」の一つとされていますが、高血圧が原因で引き起こされる病気の一つに「認知症」があることが、研究や統計から明らかになってきています。

高血圧と認知症の関係

 認知症には、大きくわけて二つの分類があります。

 それは、脳の中の血管に障害が出ることで発症する「脳血管障害による認知症」と、神経細胞が徐々に減り、脳が委縮することで発症する「神経変性による認知症」です。

 二つの認知症のうち、特に高血圧と関係が深いとされているのが「脳血管障害による認知症」です。1988~2005年の「久山町調査」によると、中年期および老年期の高血圧は、血管性認知症発症について、有意な危険因子だったという研究結果が出ています。

 調査の中では、血圧の数値に応じて次のように分類しています。

  • 「正常」は拡張期血圧が120mmHg以下かつ収縮期血圧が80mmHg以下。
  • 「高血圧前症」は拡張期血圧が120~139mmHgまたは収縮期血圧が80~89mmHg。
  • 「ステージ1」は拡張期血圧が140~159mmHgまたは収縮期血圧が90~99mmHg。
  • 「ステージ2」は拡張期血圧が160mmHg以上または収縮期血圧が100mmHg以上。

 この血圧の分類において、血圧が正常な方が血管性認知症を発症する確率を1.0とすると、高血圧前症は中年期で2.4倍、老年期は3.0倍、ステージ1の中年期は4.5倍、老年期は6.0倍、ステージ2は中年期は5.6倍、老年期は10.1倍と血圧が高ければ高いほど、血管性認知症を発症しやすいという結果が出ています。

 このように、脳血管性認知症については有意な危険因子だという調査結果が出た一方で、アルツハイマー型認知症と血圧についてはほとんど差がみられなかったため、高血圧において脳血管性認知症についてのみ発症しやすいという研究結果となりました。

認知症予防の観点からの高血圧管理

 高血圧が脳血管性認知症の危険因子の一つである、ということは他の研究でも明らかにされていますが、一方で「高血圧に対しての降圧剤を用いた治療によって認知症を有意に予防できるのか」「降圧剤の種類によって認知症予防に差があるのか」「どのくらいの血圧に保てば認知症を予防できるのか」というデータについてはまだ出ていないため、現在も研究および議論が続けられています。

 近年、「降圧剤によって認知症を発症した」という一部報道もありますが、明確に降圧剤を内服したことで認知症を発症した、という明確なデータが提示されていないため、現時点での信ぴょう性は低くなっています。

 血圧は急激にコントロールしてしまうと、血流が弱くなることでふらつきや立ちくらみなどの症状が起こるため、現在は定期的に更新されている「高血圧治療ガイドライン」などに従って、進めていくことが奨励されています。

 特に高齢者の場合高血圧以外にも様々な基礎疾患を抱えていることも多いため、血圧をコントロールすることは認知症を予防するという観点以外に、他の病気と血圧の関係を注意深く観察した上で、より慎重な薬によるコントロールおよび経過観察が重要となります。

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